映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』ネタバレ感想 本棚の隅にずっとある昔好きだった本

奇跡のバラ シネマ手帖・洋画
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バラ作りの才能があり、バラに生涯を捧げる女性のお話です。

と書くと、どんな素敵な女性かと思いますが、他人所有のバラを無断で拝借して、バラと法律なら「バラを選んで罪悪感なし!」という、ちょっと難ありな女性です。

この難あり女性・エヴは経営の才もなく、父親から引き継いだバラ園は倒産寸前。

金策に奔走したり、倒産を受け入れる姿は、初老の身ともなれば我が事のように胸が痛みもしますが、よくある話とも思います。

よくある話…なのですが、なんとな~く印象に残る映画なのですよ。

というわけで、『ローズメイカー 奇跡のバラ』について感想を語ってみたいと思います。

主演の“難あり女性”を演じるのはカトリーヌ・フロです。

「『大統領の料理人』好きだったのよね」という方も、「奇跡のバラってどういう意味なの?」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m

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『ローズメイカー 奇跡のバラ』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

小さなバラ園の経営主であるエヴは数々の新種のバラを開発してきた。しかし経営は思わしくなく、大企業のラマルゼル社から買収を迫られている。新たな新種の開発で一発逆転を狙いたいエヴだが、季節労働者を雇うこともできず、エヴの助手であるヴェラが職業訓練所へ依頼し、フレッド・サミール・ナデージュを雇い入れた。しかし園芸のことなどまったく知らない3人は役に立つどころか、200鉢ものバラを枯らしてしまったのだった。

本棚の隅にずっとある昔好きだった本

「昔好きだった本」と書いたのは、この映画はまるで、普段は本棚の隅で忘れられている、昔々大好きで、心の支えになってくれた本のようだという意味です。

しかも、今は色褪せてしまったけれど、装丁までも美しく、それも含めて大好きだった本というところですね。

この映画の舞台はパリ郊外のバラ園です。

見るべきものはバラしかなく、視界を遮る建物もありません。バラ園の向こうに広がる緑の大地に点々と見えるのは羊のようです。

観光地とはなりませんが、毎朝、起きたらこの光景が目に入る日常って羨ましいなと思います。

映像から伝わる乾いた空気感も良きです。

反面、主人公であるエヴの日常は、美しさとか穏やかさとは程遠いものがあります。

とにかくお金・お金・お金です。バラ園は破産寸前なのです。

園芸に関しては父親譲りで才能あるエヴですが、経営の方も父親譲りなのか、からっきしのダメダメです。

そんなエヴの窮状を見て、ライバル社の社長は彼女を自分の会社に引き抜こうとしています。

もちろん彼女の開発した数々のバラも狙いです。

ただ、エヴは頑固者でした。これも父親譲りの性格でしょう。

変わった性格の父親だったみたいですが、エヴは父を愛していて、父の農園は絶対に売らないと決めています。

しかし現実に農園の経営は破綻寸前ですし、名を売るチャンスのバラ・コンクールではブースさえ借りられません。

当然、人を雇うお金もなく、献身的な助手であるヴェラが格安で雇える人たちを連れてきたのですが、これがまあ、なんとも……

園芸ド素人であることは仕方ないとしても、フレッドは前科者、屁理屈ばかりで仕事の続かないサミール、気が弱すぎるナデージュときては、うまくいかないのは当然です。

そもそもエヴにしたって、バラを育てることに関してはエキスパートですが、部下を育てることに関しては向いていないとしか言えません。

バラの育て方なんて考えたこともない人たちに、「ほんと無知ね」なんて平気で言っちゃう。

で、案の定、ナデージュとサミールが200鉢のバラを枯らしてしまいます。

その間フレッドは、「俺は筋トレをしていたから無罪」だと主張します。

いや、仕事しろよって話ですよね(笑)

もうどうにも後のないエヴですが、ここで勝負に出ます。

彼女が考えていた新種の開発には、ライバルのラマルゼル社が保有しているバラが必要で、なんと前科持ちのフレッドに「借りてくる」よう依頼します。

いやいやいやいや。もう、どっちが悪い人なの?って感じですよ。

フレッドは断りますが、結局のところ、エヴはもちろん、サミールとナデージュも巻き込んで、ラマルゼル社所有のバラを(勝手に)借り出してくるのでした。

「美のない人生は虚しい」

勿忘草

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さて、目的のバラを手に入れたエヴですが、戦いはこれからが本番です。

まずは借りてきたバラとエヴの所有するバラを掛け合わせ、種の収穫をしなくてはいけません。

無事に種ができたとしても、種を撒き、花が咲くまで時間が必要です。

コンクールは1年後なので、奇跡のバラが誕生するかどうかはともかく、時間的には間に合います。

そこで優勝できれば農園を続けられる可能性大です!

が、しかし、人間は飲まず食わずではいられません。コンクールまでの1年間、エヴ達は食べていかないといけないし、農場の運営費もかかります。

こんなときですらエヴはからっきし役立たずで、サミール達に破産寸前だと伝えたのもヴェラですし、知恵を出し合うフレッド・サミール・ナデージュ・ヴェラに問題を丸投げします。

ほんとエヴって人は、バラを育てること以外ポンコツすぎです。

でもですよ、ここから、内気すぎて仕事が続かなかったであろうナデージュも自分の意見を口にし、屁理屈ばかりのサミールもまず行動し、フレッドも、ちょっとばかり昔の癖の抜けない発言をしてしまいますが、バーでバラを売るという奇策で売上に貢献します。

前科のあるフレッドですが、この時点でダークサイドに戻らなかったのは偉い。

さらに、エヴがフレッドの隠れた才能を発見し、彼に新しい道を開いてやります。

フレッドは嗅覚が優れていて、エヴでさえ嗅ぎ取れない匂いを嗅ぎ分けることができました。

エヴは知り合いの調香師を紹介します。

だけどフレッドは、その生い立ちから不安を感じます。親に捨てられ、犯罪で身を立ててきた人です。

自分にまともな仕事ができるわけないと思ったでしょうし、とてつもなく不安だったでしょうね。

でもエヴの励ましや、農園でやり遂げたことが、フレッドを前へと向かせたのだと思います。

コンクールまでには、さらに思わぬ天災で被害が出たり、その穴埋めにエヴは家を担保にしたり、売れるものはすべて売りに出します。

ついには、ヴェラの貯金まで当然のように貸りてしまいます。

あのときのヴェラの表情、感動ものです。あの表情だけで、彼女に助演女優賞をあげたいくらい。

そこまでして新種のバラにかけたエヴたち。

ですが、新種の開発は失敗してしました。

万策つきて、エヴは農園を閉めようとしたのですが、あれだけ嫌っていたラマルゼル社に農園を売ることに決めました。

もちろん、従業員たちの生活を考えてです。サミールたちは正社員として農園に残れることとなりました。

バラのこと以外興味のなかったエヴですが、実は、従業員たちと一緒に、彼女も変化していたのですね。

ただ、エヴは農園を売るところまでは譲歩しましたが、金儲けのみのためにバラを作るということだけは受け入れられませんでした。

エヴがバラ園を去ると知り、フレッドとナデージュはエヴがいなければ意味がないと怒り出します。

でも、エヴとしても、これが最大限の譲歩だったのです。

結局、農場はライバル社に買収され、従業員は仕事を保証され、エヴは農場を去ると決まりました。

ところが、この映画はハッピー・エンドで終わるのですよ。

エヴの新種開発は失敗しましたが、なんとナデージュたちが自然交配で作ったバラが素晴らしい出来だったのです。

おかげでエヴのバラ園は間一髪のところで救われました。

まるでおとぎ話です。誰もが夢みるハッピー・エンドです。

今、私たちの生きている現実社会はスピード重視で、ついてこられない人たちはどんどん捨てていかれます。

国は違えど、ナデージュとサミールも、そんな現状から落ちこぼれた人たちなのでしょう。

でも、現状にそぐわないだけで、落ちこぼれとみなされた人たちだって、与えられた環境や状況によっては成果を出すことができる。

当然っちゃ当然の話ですけど、今の日本は(フランスも?)、時間とお金と労力をかけて人を育てようとするところは少なくなりましたよね。

だからこそ、この映画はよくある普通の、でも美しいおとぎ話なのです。

そして、もう一つ。

お金に振り回され続けたエヴが、最後に、不安だらけで旅立つフレッドに、「美のない人生は虚しい」と言うのです。

エヴって本当に天然だな~と思います。

金策で頭がいっぱいのとき、私には美を感じる余裕なんてありません。

とてもエヴのようにはいかないけれど、電車の窓から見える夕空を綺麗だと感じられたとき、私はまだ大丈夫だと思ったことはあります。

お腹を満たしてくれないものが力になることもあると、この映画は思い出されてくれます。

若き日々、心の支えになってくれて、今も本棚の隅にある本のように、これは、普段忘れている大切なことを思い出させてくれる映画なのです。

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映画情報

製作年/2020年
製作国/フランス
監 督/ピエール・ピノー
出 演/カトリーヌ・フロ/メラン・オメルタ

日本での公開は2021年です。

『大統領の料理人』もよかったですが、私は断然、こちらのフロさんのほうが好きですね~。

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