映画『レッド・ドラゴン』ネタバレ感想 映画は小説を超えることができるのか?

赤き龍 シネマ手帖・洋画
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ジョディ・フォスター主演の『羊たちの沈黙』、これの前作にあたる映画です。

小説としては前作になるのですが、映画は『羊たちの沈黙』より後に作られました。

今回、この『レッド・ドラゴン』を見ていて、ずっと思っていたのです。

小説を超える映画ってありえるの?

というわけで、映画『レッド・ドラゴン』の感想を語ってみたいと思います。

「いや、原作超える映画とかないでしょ~」という方も、「いやいや、映画が原作を超えることもあるよね~」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただしネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m

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『レッド・ドラゴン』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

元FBI捜査官であるウィル・グレアムは静かな海辺で妻子とともに暮らしていた。そんなグレアムのもとに、かつての上司であるジャック・クロフォードが来訪、連続殺人事件解決への協力を依頼してきた。グレアムはかつて天才的な頭脳を持つ連続殺人犯、ハンニバル・レクターを逮捕した実績があった。レクターから心身ともに大きく傷つけられたグレアムだったが、被害者たちのため現場へ戻る決意をする。

映画は小説を超えることができるのか?

小説の映画化って、よくありますよね。

話題の小説を、「待望の映画化!」とかしちゃうやつです。

それはいいのですが、小説を超える出来の映画って存在すると思います?

さっそくですが、私は小説を超える映画はないと思っています。

だって情報量が違うのだから、比べること自体、無理がありますよ。

小説より面白い映画を作ろうとするなら、小説とはまったく違うアプローチが必要なのではなかろうかと思うのです。

しかし、そうすると小説ファンから、「そんなやり方、違うんじゃない?(怒)」と反論も出るでしょうし、難しいですねぇ。

ただですね、小説を超える映画はなくとも、「この役者さん、小説に出てくる人物とイメージばっちり合ってる!」と思えることはあるのです。

この映画の登場人物、ハンニバル・レクターを演じるアンソニー・ホプキンスがまさにそれ。

彼は、なんとレクター役にぴったりなことか。

冒頭で触れましたが、この映画は『羊たちの沈黙』という映画の前作に当たります。

小説は『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』『ハンニバル』と続くのですが、この三作を通してレクターは登場します。三作目なんて、もろ彼の名前ですしね。

ハンニバル・レクターという登場人物は、私みたいな凡人からしたら悪魔か神かというくらい頭が良く、その代償なのか、普通の感覚というか感情が欠落しています。

たぶん、彼の中に罪悪感という言葉はありません。

愛はあると思いますが、その表現の仕方は凡人とは違っています。

近づくのも怖い人ですが、どこかエレガトントだったりもします。それもそのはず、彼はどこかの貴族の末裔です。

このあたりが詳しく知りたい方は『ハンニバル』の次に書かれた『ハンニバル・ライジング』をお読みください。

『ハンニバル・ライジング』も映画化されていますが、レクターの若い頃のお話なので、アンソニー・ホプキンスが主役ではございません。

また、「子供が悲惨な目にあうシーンが無理!」という方は、読んだり見たりしないほうが無難とお伝えしておきます。

で、『レッド・ドラゴン』のアンソニー・ホプキンスですが、個人的には、どこか子供じみた可愛さも感じたりします。

実際、小説の中でも、レクター博士の子供染みた部分が出てくるところがあります。

人を驚かせたりして、純粋な喜びを感じたりね。

その部分は映像のほうが伝わりやすかったです。

それもこれも、アンソニー・ホプキンスという役者のビジュアルと力量のおかげです。

もし、小説『レッド・ドラゴン』と映画『レッド・ドラゴン』に優劣をつけろと言われたら、小説に軍配を上げるところです。

でも、レクターという人物に関してだけは「引き分け!」と答えます。

ちなみに、この『レッド・ドラゴン』が映画化されるのは2度目で、1度目は『刑事グラハム/凍りついた欲望』という題名で映画化されています。

『レッド・ドラゴン』を見たあとに1度目の作品があることを知り、見てみたいと思いましたが、レクター役が別の役者さんだったので、結局見ることはありませんでした。

それだけ、私の中ではアンソニー・ホプキンスがハマり役になっていたのですね。

これでもかと繰り出されるどんでん返し

海とドラゴン

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小説では、犯人であるフランシス・ダラハイドの生い立ちや心情を詳しく描いていますし、ダラハイドを追いかける側であるグレアムのほうも、またしかりです。

ですが、映画では、小説の通りやっていたら時間がいくらあっても足りません。

なので、グレアムの事情なんて、完全に無視されている部分もあります。

彼には妻と息子がいますが、妻は再婚で、息子は前夫の子供です。

血のつながりはなくても、親子3人平穏に暮らしていたのに、クロフォードがやってきたおかげで、3人の関係はぎくしゃくしていきますし、最終的に、この親子はダラハイドに襲撃されます。

結果、ダラハイドはあの世行きとなりますが、事件が解決しても親子3人が元通りになることはありませんでした。

小説ではそうなのですが、映画ではここの部分、かなりソフトになっています。

まず親子関係が明確にされていませんし、事件解決後には親子3人が仲良く船に乗っているシーンがあり、表面的なことだとしても、一応、平穏を取り戻したように見えます。

同じように、ダラハイドの背景は詳しく描かれません。ですが彼の異常さは伝わります。

やっぱりプロってすごいですね。

複雑な背景を省いたり匂わせたりする程度で、上下巻ある小説を2時間にまとめてしまうのは「さすが」ってかんじです。

というわけで、映画はダラハイドがどのように追い詰められていくかに絞られます。

ダラハイドにはちゃんとした理由があって、犠牲となる家族を選んでいるのですが、彼の生い立ちを知らない普通の人々にとっては、まったくもって理解の糸口すら掴めません。

そこにグレアムがやってくるのです。

彼は異常なほどの、他者への共感力があります。

「なんだ、そんなこと」と思われるかもしれませんが、レクターやダラハイドのような異常者にさえ、彼は寄り添うことができるのですよ。

だから、指紋を残していないと思われたダラハイドが、実は手袋を外す瞬間があって、彼の指紋が被害者の眼球に残っているかもしれないと推測できました。

ダラハイドからの手紙を、レクターがなぜ一部とはいえ残していたのかも、当然のようにグレアムには分かるのです。

そんなグレアムだから、とっくに引退していたのに、元上司のクロフォードが放っておかなかったわけですね。

クロフォードの期待通り、グレアムは徐々にダラハイドを追い詰めていきました。

しかし、ダラハイドとレクターもまた、グレアムを追い詰めていくのです。

グレアムは自分自身が狙われるよう仕向けますが、残念なことに新聞記者がターゲットにされました。

また、ダラハイドをあと一歩というところまで追い詰めたと思ったら、彼は愛する女性を道連れにするつもりで、家に火を放ちました。

幸いなことに女性は無事でしたし、焼け跡からは遺体が発見され、事件は終わったかと思われました。

しかし、海辺の家に帰ったグレアムを、予想外の出来事が襲うのでした。って、ダラハイドが襲撃してくるって、先に書いちゃってましたね、私。

小説のように細かな心理描写はありませんが、このスピーディーさにはハラハラ・ドキドキが楽しめます。

そして、ラストはレクター博士のセリフで、次のお話、『羊たちの沈黙』につながっていくことを匂わせ、締められるのです。

とことんエンターテイメントですね。

小説と映画、どちらが好きかなんて好みの問題ですが、まだ小説を読んでいないなら、ぜひ映画を先に見ることをおすすめ致します。

先に小説を読んでしまうと、どうしても物足りなさを感じてしまいますからね。

純粋に映画を楽しむためにも、まずは映画からご覧ください。

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映画情報

製作年/2002年
製作国/アメリカ
監 督/ブレット・ラトナー
出 演/アンソニー・ホプキンス/エドワード・ノートン

日本での公開は2003年です。

原作は同名の小説『レッド・ドラゴン』で、作者はアメリカの作家、トマス・ハリスです。

トマス・ハリスの著書は少ないですが、出された本のほとんどがベスト・セラーではないでしょうか?

ただ悪趣味というか……。

『ハンニバル』を読み終わった後、おもしろかった!と思いつつ、そう思ってもよいものか悩んでしまいました。

小説も癖がありますけど、作者本人もなかなかに癖のある方のようです。

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