映画『ゾンビランド』ネタバレ感想 終末世界で幸せを掴んだ引きこもりの話

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引きこもりの大学生が、ゾンビあふれる終末世界で幸せを掴み、見ているこっちまで胸キュンするお話です。

笑えるゾンビ映画が好きな方には、「ぜひぜひ!」とおすすめできる映画となっております。

というわけで、映画『ゾンビランド』の感想を語ってみたいと思います。

「笑えるゾンビ映画? 大好きなの~!」という方も、「のろのろ歩くゾンビより、高速で襲ってくるゾンビが好き!」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m

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『ゾンビランド』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

アメリカはいまやゾンビランドだ。これはテキサス州ガーランドに暮らす大学生青年の感想である。ガーランドがゾンビだらけとなり、青年は故郷のコロンバスへ帰ることにした。コロンバスには両親がいる。仲のよくない両親でも、知っている顔が見られるのは悪くない。そう思い、徒歩で故郷に向かう途中、幸運にも車が通りかかり、彼はヒッチハイクに成功した。

終末世界で幸せを掴んだ引きこもりの話

テキサス州ガーランド。そこにはもう、彼以外に生き残りはいない。

と書いてみますと、なんだかハードボイルド風味で格好良いですね。

ですが、彼はハードボイルドではなく、格好良いとも言い難い青年なのですよ。

とりあえず事態は深刻です。あるとき世界で謎のウイルスが蔓延し、人々はあっという間にゾンビとなっていきました。

青年が「ここはもうアメリカ合衆国じゃない。ゾンビランド合衆国だ」と言うほどに、人々は感染し、襲われ、あっという間にゾンビ化していったのです。

大学生の彼が生き残った秘訣は、ルールを厳守したことです。

この大学生の彼、名前が分かりません。後々に会う男から「コロンバス」と命名されるので、ここでは最初からコロンバス君でいきます。

コロンバスは自分のことを神経質と言っていますが、今回はそれがいい方向に作用しました。

生き残るためのルールを細かに設定し、それを実践することで彼は生き残ったのです。

例えば準備体操です。ゾンビに遭遇しそうな予感がしたとき、ゾンビが出てきたときに備えて、準備体操を行うルールにしています。

それを見て、コロンバスの名付け親であるタラハシーは大いに呆れていましたが、腸が弱くて、ひょろ体型のコロンバスにはコロンバスのやり方があるわけです。タフガイのタラハシーとは違うのですよ。

タラハシーに呆れられても、どこ吹く風のコロンバスは良い意味でズレています。

初めてタラハシーに会ったときにも、「能天気だな」と言われていました。

タラハシーという男は、生き残ったのも当然と思える強い男なのですが、この人はこの人で変わっていて、ある意味、神経質です。

コロンバスが故郷に向かって歩いているとき、タラハシーが通りかかり、ヒッチハイクするコロンバスを同乗させてくれました。

変なウイルスが蔓延している世界で、見ず知らずのコロンバスを乗せてくれただけでもタラハシーが良い人なのは分かりますが、コロンバスが名前を訊ねると、名乗り合うことを拒否します。距離感がおかしくなるからだそうです。

そんなわけで、それぞれの目的地である地名で、お互いを呼ぶようになったのです。

いや、名前ぐらいいいじゃん。と思うのですが、タラハシーはタラハシーで、自分のことを気難しいと言っていて、まさにその通りの面倒くさい性格をしています。

でも、そんなタラハシーとも、コロンバスはけっこううまくやっていくのです。

それどころか、タラハシーといると安心できると思っています。確かにタラハシーはゾンビに臆することがないですけどね。

そんな2人が、道中たわいない話をしている姿は、実に普通です。

気難しいタラハシーとうまく付き合えるコロンバスは、ズレているけれど、それはやはり、「良い意味で」なんだよな~と思います。

コロンバスがコミュ障というのは、ただの思い込みじゃない?と思うのですけど、ゾンビランドになる以前から、嫌いなものや怖いものが多すぎて外に出られなくなり、「人生終わってる」と彼自身が感じていました。

皮肉ですよね~。

ゾンビランドになったことで、彼は外に出ざるを得なくなり、生き生きと、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、部屋の外で気楽に生きているように見えます。

もちろん怖い思いもしましたし、途中で出会った姉妹の姉・ウィチタから、コロンバスに生存者は皆無的なことを辛辣な口調で言われ、悲しい思いもしました。

ただ、幸か不幸か、生き続けていくためには、長く悲しんでいる余裕はありませんでした。

いつゾンビに遭遇するか分からないですし、ウィチタとリトル・ロック姉妹には2回も騙されてしまいました。

ウィチタ達は、ゾンビランド以前から2人で詐欺を働きながら生きていたほどで、簡単には人を信用しません。境遇的に用心深くなってしまったのですね。

それでも2回も騙すとか、ちょっと~、どうかと~。特に2回目は、4人がかなり打ち解けていた後でしたから、かたくなすぎ……と思ってしまった。

ところで、コロンバスには夢があって、それは「女の子と親密になって、その子を両親に紹介する」というものです。

もうね、彼が愛しくて涙が出そうになります。

その夢を聞けば、ゾンビランド以前の彼の人生がどんなものだったか、容易に想像がつきます。

でもね、ゾンビランドとなり、外へ出ざるを得なくなると、彼はけっこうやっていけてるのです。

タラハシーに出会い、タラハシーから得た「ささやかなものを楽しめ」という“ルール32”で前向きになれたことも大きいですから、ゾンビランド以前では、うまくいかなかったかも、というご意見もあるかもしれません。

それはその通りかもしれないし、あるいは別の誰かと出会って、また別の刺激をもらうことで、コミュ障から脱却できたかもしれません。

だってコロンバス自身が、やればできる子なんですからね。

ただ、ゾンビランドになっていなければ、引きこもりのまま腐っていた可能性は大いにあったと思います。

では話を戻します。

これまで、両親に紹介できる女の子が1人もいなかったコロンバス。そもそも“女の子”以前に人嫌いなコロンバスです。

そんなコロンバスが、2度も裏切ってくれたウィチタを救いに行きます。

これはすごい。

本当にコロンバスは変わりました。

彼のルール17に「ヒーローになるな」とあります。分かる。分かります。現実でヒーローになったとて、得することなんて、ほぼありません。

ほんの一瞬いい気分になれますが、ヒーローになった直後に痛い目をみる可能性大です。

ですが、それでも、やっぱり。ウィチタのためにルールを破るコロンバス。

愛ですね、愛。

ゾンビ映画のゾンビには、動作がゆっくり系のものと高速系のものがありますが、こちらのゾンビたちは高速系です。

ウィチタとリトル・ロックがコロンバスとタラハシーを置き去りにして、姉妹の目的地である遊園地に行くと、大量の高速系ゾンビが襲ってきました。

その遊園地にはゾンビがいないという噂でしたが、そんなことがあるわけもなく、しかも夜に遊園地を稼働させたので、「ここにいま~す!」と回りのゾンビ達に大声で宣伝しているようなものでした。

このシーンでは少々絶望感を味わってしまいましたが、タラハシーが大量のゾンビを駆逐してくれます。

たった1人で怒濤のごとくゾンビを蹴散らしていくタラハシー。めちゃくちゃ格好良かったです。

もちろんコロンバスも頑張って、ウィチタとリトル・ロックを救出しましたよ。そして、ウィチタの愛情を勝ち取りました。

やった~。ついにやった~。

そしてコロンバスは気付くのですよ。自分が家族を手に入れたことを。

実はコロンバスの夢には続きがあります。コロンバスの両親も人嫌いな人達なので、もし彼女ができて結婚することにでもなれば、普通であろう彼女の家族の一員になりたいと思っていました。“普通”の暖かい家族に憧れていたのですね。

タラハシーも、ウィチタとリトル・ロック姉妹も、ゾンビランドとなった世の中も、あまり普通とは言い難いですが、ウィチタ達に家族愛を感じていることを自覚し、自分は夢見たものを手に入れたのだと理解したコロンバス。

彼は、世界がゾンビランドになることによって幸せになれた、希有な存在となったのでした。

 

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臆病者or楽天家は勝ち組?

主人公であり、語り部であるコロンバス君は臆病者です。

ゾンビランド以前から、彼に怖いものがたくさんあったことは前述しました。

例として彼が挙げたものに、「離岸流」「デパートのサンタ」「赤ん坊と2人きり」、そしてゾンビより怖いという「ピエロ」です。

うん、まあ、分からなくもありません。離岸流は私も怖い。海中で、ふと「あれ? 私、今、離岸流の中にいる?」と理解した瞬間を想像すると、想像だけで体中の血液が冷たいまま沸騰するのを感じます。

サンタや赤ん坊は、う~ん、まあ、そんな人もいるよねえ……と。

つまり、コロンバスはそれだけ怖いものがあるので、用心深く暮らすことになれていて、生き残ることができたのですね。

じゃあ、楽天家とは誰でしょう? そして楽天家の強みとは?

ここに登場する楽天家は、俳優のビル・マーレイです。この映画、ビル・マーレイが本人役で出演しています。

コロンバス御一行は、途中から4人でロサンゼルスの遊園地へ向かっていました。これはウィチタとリトル・ロック姉妹の目的地です。

で、せっかくロサンゼルスまできたので、ビバリーヒルズの豪邸で寝ようぜ!ってことで、やってきたのがビル・マーレイの豪邸です。

タラハシーがビル・マーレイの大ファンで、なんとウィチタもビルのファン。というか、ウィチタの笑いのツボがビルらしいです。

ビル・マーレイって本国ではお笑い系の印象なのでしょうか? ちょっと変わった立ち位置の俳優さんということは分かります。

で、このマーレイ氏が超絶楽天家です。実に飄々としています。

誰もいないと思われた豪華なマーレイ邸で、ゾンビとなって現れたマーレイ氏。

ですが、このゾンビ・マーレイ、メイクをしているだけの、生きたマーレイ氏だったのですよ。

ゾンビの格好をしている理由は、「ゾンビは共食いしないだろ?」だそうです。

ゾンビのメイクで「ゴルフに行ってきたよ~」ですと。

ゴルフしてたら、生きた人間ってバレないもんだろうか?

というか、マーレイ氏と同じ「ゾンビの格好してたら襲われないんじゃね?」と考えつく人はけっこういると思うのですよ。

でも「実行する勇気ないわ~」とだいたいの人は踏み止まると、これまた思うのですよ。

ゾンビのメイクなんてしたところで、ビクビクして、汗ダラダラ流れちゃって、すぐ見つかる自信があります。

でも、楽天家のマーレイ氏は平気なのですよね。彼は生き残っただけでなく、けっこうゾンビランドを楽しんでいました。

やはり楽天家という名の天然は強い。

ゾンビランドという乱世で、タラハシーやウィチタのようなタフな人間が生き残るのは当然ですが、神経質なコロンバスや、楽天的なマーレイ氏も、案外うまくやっていけるらしいです。

ただ、やっぱりズレているコロンバス、マーレイ氏がゾンビの姿で現れると、問答無用でズドンといっちゃいます。

ああ、なんたることか……。

まあ、マーレイ氏本人も、自分はジョークが下手だと言っていたことですし、洒落にならないことをやってしまったマーレイ氏に落ち度があったということで……。

楽天家も勝者ではありましたが、ツメが甘かった。

真の勝者は、やはりキング・オブ・臆病者、コロンバスでした。

しかしコロンバスのズレっぷりは面白いです。最後に、遊園地で大量のゾンビを片付け(タラハシーが)、ウィチタとリトル・ロックを救出したコロンバス。

彼は映画の語り部でもあるのですが、最後の締めの語りがラジオDJ風です。

個人的にはこれが大好きなのですが、初老に好きと言われる大学生って、やっぱりどこかズレているな~と思うのでした。

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映画情報

製作年/2009年
製作国/アメリカ
監 督/ルーベン・フライシャー
出 演/ジェシー・アイゼンバーグ/ウディ・ハレルソン

日本での公開は2010年です。

こちらの映画には続編がございます。

続編は日米ともに2019年公開の『ゾンビランド:ダブルタップ』です。

ダブルタップのほうがエンターテイメント率高めです。

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