映画『リトル・ダンサー』ネタバレ感想 心が空っぽになるほど夢中になれる

初めてのバレエシューズ シネマ手帖・洋画
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ネタバレ・あらすじを含む感想です。

「昔見たなあ」という方と、感想を共有できたら嬉しいです。

また、「残念ながら見逃してます」という方に、この映画の魅力をお伝えできたらなと思います。

ネタバレを含みますので、お嫌な方はここまででお願い致しますm(._.)m

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『リトル・ダンサー』ネタバレ感想

心がからっぽになるほど夢中になれる

ビリーは、ボクシングを習わされています。

習っている、ではありません。させられているのです。

ビリーの父、また、父の父も、ボクシングをやっていたのですね。

ビリーが着けているのは、父のグローブであり、祖父のグローブです。

時代は1984年のイギリス、まだまだ男は男らしく、女は女らしくと言われていた頃ですね。

炭鉱夫であるビリーの父と兄も、その価値観を疑ったことはないでしょう。

ビリーも、ボクシングは好きでなくても、男だからボクシングと無意識に思っているようです。

でも、ある日、炭鉱ストの皺寄せで、ボクシングの練習場所を、バレエ教室と共同で使うことに。

バレエ教室の様子が気になって仕方のないビリーは、嫌よ嫌よと言いながら、いつしかバレエにのめり込んでいきます。

もうね~、「なんと懐かしい感覚か!」と思いました。

ビリーくん、ボクシングをやっているときは、コーチの言葉に凹んだりしていましたけど、バレエをやっているときは、眉間に皺を寄せながらも必死なんですよ。

「そうじゃない!」「もっと前を見て!」なんて言われながら、夢中で食らいついていく。

夢中なときって、落ち込んだり、凹んだりしている暇はないんですよね。

ただただ、踊りたい! もっとうまくなりたい! もっともっと! と、頭じゃないどこかで感じている。

この先、ずっとバレエを続けていくビリーですが、こんなふうに、夢中で踊っていられる時間は、どのくらいあるのでしょうか。

プロになって、どこかの時点で、バレエに夢中だった頃の自分を懐かしむ日が来るんだろうなぁと、初老としては、このへん、かなりの萌えポイントでした。

逃れようのない現実の中で家族は

田舎町

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ビリーが住んでいるところは、男がバレエをするなんて思いつきもしない土地柄です。

実際、息子がバレエを習っていると知った時の父は、なんていうか、あり得ないものを見るような顔をしていました。

理屈じゃないんですよね。

男がバレエなんて! 俺をバカにしているのか! おまえはゲイかなんかか!

という感じです~。

ビリーの兄の反応も似たようなものでした。

それでも、最後には、父も兄も、ビリーの才能を伸ばしてやりたいと思います。

父はビリーに、ロイヤル・バレエ学校を受験させようと決めます。

でも現実は冷たく厳しく、びくともしない。

とにかくお金がないんです。

もともと裕福な家じゃありません。

お父さんは生まれ育った町から出たこともなく、たぶん、お兄さんも同じじゃないかな。

そして、二人とも、この町の男ならそうするものだと、疑問に思うこともなく、炭鉱夫になったのではないでしょうか。

もし世の中が変わらなければ、それでもよかったんです。

でも、石炭産業は斜陽となり、今はストライキの真っ最中です。仕事がないんです。

もちろん父も兄もストライキに参加していますし、兄はストライキのリーダー格です。

喉から手が出るほどお金がほしいのに、仕事がない。

そこで、父は、禁断のスト破りをしてしまいます。

昨日までは、スト破りの男たちを蔑んで罵っていたのに、父は炭鉱へ行くバスに乗ってしまいました。

兄に止められて、父は言いました。

俺たちはおしまいだが、ビリーはまだ子供だ。未来がある。夢をかなえてやりたいんだ。

そして、父と兄は、抱き合って泣きます。

そう、ビリーは11歳の子供で、大人がどうにか、道筋をつけてやるしかないわけですが。

でも、子供って強い存在だなって思います。

自分の子供でなくても、未来のある存在がそこにいるというだけで、こちらまで心強くいられる気がします。

だからこそ、手助けできることがあるなら、なにかしてやりたい。

ビリーのご近所さんたちも、同じように感じたんじゃないでしょうか?

みんなが、ビリーのために協力してくれます。

でも、みんな同じ境遇なので、やっぱりお金は集まりません。

結局、父は、母の形見の貴金属を質に入れて、ロンドンへ行くお金を工面します。

ビリーはみごとバレエ学校に合格、一人ロンドンへ旅立ちます。

嬉しい旅立ちでもあり、11歳のビリーが家を出ていってしまうという、家族にとってはつらい別れでもあります。

単純に別れとはつらいものですが、とくにお父さんとお兄さんには、捨てられていくような寂しさがあったんじゃないだろうかと思います。

ビリーの合格が分かった日、ストライキは鉱夫たちの敗北という形で終わりを告げました。

父も兄も炭鉱にもどりますが、死んだ魚のような目をしています。

しかし、ビリーの学費を稼ぐために、家族が生きていくために、炭鉱で働くしかないのです。

ビリーの家族を貧乏人と笑う人がいるかもしれない。

でも、ビリーにとっては、間違いなく、尊敬し愛すべき家族なんだなと思います。

ロンドンを見渡し、噛みしめるように歩く父

白鳥の湖

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時は流れ、ロンドンに、ビリーの父と兄の姿があります。

ビリーの舞台を見に行くためです。

時間がなくて兄は焦っているのですが、父は、なんだかぼんやりして、まったく急ぐ気配がありません。

兄が悲鳴に近い声で「父さん!」って呼んでます(笑)

このときのお父さんの気持ちを想像すると、私は、感無量って感じになってしまいます。

今、ロンドンの舞台に、主役として立とうという息子、その息子を支えきった自分もまた、今、ロンドンの地に立っている。

どこか、信じられないような気持ちでもあるのでしょうか。

父は、地下鉄の風景から、街の空気まで、噛みしめるようにして歩くのです。

苦しいことの多い人生だったとは思いますが、お一人様の初老からすると、羨ましい人生でもあるなあと思うのです。

そして、最後の、数分の舞台シーンですが、もう見入ってしまいますよ。

舞台袖の中で息を詰めている人たちや、ビリーを見つめる若手たちの視線とか、緊迫感がたまりません。

たぶん、これから先も、たまーに見返してしまう映画だと思います。

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映画情報

製作年/2000年
製作国/イギリス
監 督/スティーブン・ダルドリー
出 演/ ジェイミー・ベル

日本での初公開年は2001年です。

1984~1985年の炭鉱ストライキは、たまに映画の題材にされていますよね。

『パレードへようこそ』という映画を前に見ましたが、これも背景に炭鉱ストがありました。

この映画もいつか取り上げてみたいものです。

 

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