映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』ネタバレ感想 オシャレでキュートでダークな仕事人たちのファンタジー

ミルクシェイク シネマ手帖・洋画
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仕事人とは、某小説が基になったテレビドラマの主人公たちで、お金をもらってではありますが、世の中の弱い立場の人々の恨みを晴らしてくれます。

つまり、悪い奴らを、陰であの世へお送りしてくれるのですね。

となると、仕事人とは元々ダークな存在なのですが、この映画の主人公である仕事人たちは悪の組織側なので、さらにダークなのです。

でも、主人公のサムも、その仲間たちも実にキュート、エレガント、そしてタフ。彼女たちの活躍に夢中にならないわけがない。

というわけで、『ガンパウダー・ミルクシェイク』について、感想を語ってみたいと思います。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(_._)m

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『ガンパウダー・ミルクシェイク』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

サム(サマンサ)の母親は“ファーム”と呼ばれる組織に雇われた殺し屋だった。しかし、あるミスから組織を追われ、12歳のサムの前から姿を消した。その後、母と同じく“ファーム”の殺し屋となったサムだが、ミスを立て続けに犯してしまい、“ファーム”と、さらには“ファーム”とは別の組織からも追われる身となった。

オシャレでキュートでダークな仕事人たちのファンタジー

ワタクシ、最初からダークだダークだと連呼しておりますが、映画は始まりから、初老の私からすると、懐かしいファンシーさであふれております。

サムたちが待ち合わせに使うのは“カフェ”でなく“ダイナー”で、そこの看板はネオン管です。

ダイナーのウェイトレスさんの制服はレトロ可愛いです。

この可愛い制服をきているお姉さんもレトロなお年頃で、田舎あるあるって感じです。

また、映画の最初から最後までスマホは出てこず、すべての携帯電話はガラケー。

とくによく使われるガラケーが、8歳9ヶ月になる女の子のもので、パンダの形なのも、なんというか、とにかく可愛い。

「レトロ可愛い」だったり「ダサ可愛い」だったり、「マジ可愛い」だったりと、あちこちに可愛いが散りばめられた映像ですが、8歳9ヶ月の女の子・エミリー以外、登場人物はダークサイドの人間ばかりなんですね。

主人公のサムは若い女性ながら、やり手の殺し屋です。

そもそも母親が殺し屋で、その母親がまだ12歳のサムの前から姿を消してしまいます。

なので残されたサムに、例えば、普通の会社員になるなんて選択肢はなかったのですよ。

母からも“ファーム”の幹部であるネイサンの下へ行けと言われていましたし。

そして立派な殺し屋に育ったサムが、いつものように仕事をしていると、もらっていた情報と違い、大勢の男たちを“やる”羽目になってしまいます。

しかし、そのやってしまった男たちの中に、まずい相手がいたのです。

その相手は“ファーム”とは別の闇組織の、ボスの息子でした。

それが分かるのはもう少し後のことで、人使いの荒いネイサンは、さらにサムへ仕事を依頼します。

大胆にも“ファーム”の金を持ち逃げした会計士がいて、金を取り戻してほしいという依頼でした。

悪の組織から大金を持ち逃げする会計士なんて、肝が据わってるわ~なんて思ったら大間違い。

会計士は娘を誘拐され、犯人たちから要求された身代金のため、組織の金に手を着けたのでした。

もちろん、そんな事情を知らないサムですが、お金さえ取り戻せれば、会計士に危害を加えるつもりはありませんでした。

ですが娘の命がかかっている会計士は、サムの制止を無視し、結局撃たれてしまいます。

直後に、サムは誘拐の事実を知り、自分と会計士の娘・エミリーの境遇を重ねてしまい、お金を持ってエミリーを助けに向かいます。

結果は最悪で、エミリーを助けることはできましたが、お金は吹っ飛び回収不能。エミリーの父も亡くなってしまいました。

その最中に、サムが大物の息子をヤッてしまっていたことが分かり、サムは“ファーム”からも、別の組織のボス・マカレスターからも追われることになったのです。

自分だけなら何とかなるのかもしれませんが、サムはエミリーを連れたままで、どうにもなりません。

そんなときに現れたのが、15年前に姿を消したサムの母親・スカーレットでした。

実のところ、彼女はずっとサムを見守り続けていたのです。

とはいえ、多勢に無勢。

スカーレット1人が加わっただけではどうにもならず、それでも彼女のおかげで、袋小路から逃げ出すことができました。

そして、スカーレットとサム、エミリーは、かつてのスカーレットの仲間のいる図書館へと逃げ込んだのです。

で、この図書館がですね、実に秀逸!実に良いのです!

ちょっと話が逸れますが、私は子供の頃、図書室が大好きで、たいして本好きでもないのに図書室に入り浸っていた頃がありました。

その頃、子供の向けの『クローディアの秘密』という本を読み、その中では子供たちが美術館に勝手に住みついてしまうのですが、それがとても羨ましくて、私も図書室に住んでみたいと憧れたものです。

スカーレットの仲間は、あの頃の私の夢そのままに、適度に歴史のありそうな美しい図書館を隠れ家にしていたのです。

ただまあ、本の中には銃やナイフが仕込まれていて、普通の図書館ではありませんが。

スカーレットのかつての仲間とは、優しいマデリン、沈着冷静なフローレンス、ザ・タフという感じのアナ・メイで、最初、アナ・メイはサムたちを拒絶します。

スカーレットとアナ・メイの間には、大きな溝ができていたんですね。

しかし大勢の男たちがやってきて、最初は冷たい対応だったアナ・メイも、スカーレットとサムを援護することに決めました。

まるで一つの小さな別世界のような図書館の中で、司書たちと悪の組織のバトルが始まります。

すごいですよね、司書VS悪の組織の壮絶な争いという構図。これはアクション映画であり、実はファンタジー映画でもあると思うのです。

8歳9ヶ月に聴かせるならどんな曲?

砕けたハート

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さて、この壮絶な争いの間、8歳9ヶ月のエミリーには現場を見せることはもちろん、争う声も聞かせたくありません。

なので、優しいマデリンは脱出用の車にエミリーを乗せ、ヘッドホンをつけさせます。

ヘッドホンの先はウォークマンに繋がっていて、ちょっとの間これを聞いていてほしいと伝えました。

ウォークマンじゃないかしれないけど、カセットテープですよ。もう嬉しいったら。

で、私はマデリンがエミリーにヘッドホンを付ける前から、一体どんな音楽を聴かせるつもりだろうと考えていたのです。

クラシック?クラシック音楽をバックに、抗争めいた戦闘の映像なのかな?

ありきたりといえば、ありきたり。

もしや、読み聞かせテープ?

おとぎ話をバックに戦闘の……まあ、悪くないかもなあ。

なんて思っていたら、流れ出てきたのはジャニス・ジョプリンの『心のカケラ』でした!

なんでか分かりませんが、「やられたー!」と思ってしまいました。

ジャニスの歌声が流れる中、エミリーに空の薬莢が降り注ぎます。

エミリーが頭上を仰ぎ見ると、開いたサンルーフからガトリング砲を撃ちまくっているマデリンの姿。

優しく気品さえ感じさせるマデリンが、ガトリング砲です。これ機関銃を束ねたようなもので、もはや兵器です。

このシーン、胸にドンッときました。

私だったらなんの曲にするかって…もうジャニス以外あり得なくなって、だったら『クライ・ベイビー』や『リトル・ガール・ブルー』もいいよなとか、そんなことしか考えられませんでした。

でも残念なことに、本当に残念なことに、マデリンは戦いに負けて命を落とし、エミリーはマカレスターの手下に連れ去られてしまうのでした。

マカレスターのもとに単身で乗り込むサム。

もちろんママたちも黙っておらず、平和には終わりません。

ヤバすぎる抗争を縁取る音楽は、またもナイスな選曲ですが、私はすでにマデリンと彼女の選曲にやられてしまっていたのでした。

ラストにラジオから流れる曲も、知らなかったけど、懐かしい感じの曲で良きです。

調べたら1998年の曲で、「なんだ、けっこう新しい曲じゃん」と思ったのですけど、よくよく考えると、すでに25年経過……

初老あるあるで感想を締めることになるとは……

若い人にも面白いでしょうが、初老にこそ楽しんでほしい映画です。

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映画情報

製作年/2021年
製作国/アメリカ
監 督/ナヴォット・パプシャド
出 演/カレン・ギラン/レナ・ヘディ

日本での公開は2022年です。

この映画を見ていて『キル・ビル』を思い出したのですが、ウィキペディアによるとタランティーノ監督もこの映画を絶賛した模様です。

『キル・ビル』を思い出したとはいえ、内容はほとんど覚えてないんですけどね……

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