映画『サンドラの週末』ネタバレ感想 いつか来た道? 切なくも清々しい月曜日

トンネルを抜けて シネマ手帖・洋画
イメージ画像

初老にとっては、いつか来た道だなあ…と思われる映画です。

映画が始まってすぐに私の思ったことは、

「なるほど。最初は弱々しいサンドラが、試練を経て成長していく映画ね」

なのでした。

どうです? 初老諸姉なら、いつか来た道でしょ?

さらには、「その手の映画だって、もう沢山見てきたわ~」と言われるかもしれません。

しかしです! そんな海千山千の初老諸姉にも、ラストできっちり、清々しく感じていただける映画です。

といわけで、『サンドラの週末』の感想を語ってみたいと思います。

ただしネタバレ・あらすじを含みますので、お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m

スポンサーリンク

映画『サンドラの週末』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

体調不良から仕事を休んでいたサンドラは、ようやく仕事に復帰できるまでになった。しかし職場では、ボーナスを選ぶか、サンドラの復帰を選ぶかの投票が、同僚たちの間で行われ、結果はボーナスが選ばれた。それを知った金曜日、サンドラは同僚のジュリエットと社長に直談判、月曜日に再選挙を約束させた。その週末、サンドラは自分への投票をお願いするため、同僚たちの家を訪ねて回る。

初老にはいつか来た道? 人生の中のトンネル期間

この映画、なかなかにパンチの効いた設定です。

細かい設定は語られないのですが、セリフの端々から状況が見てとれます。

サンドラは工場勤めのブルーワーカーです。

夫と子供が2人いて、夫の稼ぎだけでは家賃も出ないそうですよ。

なのでサンドラが働くことは必須なのですが、彼女の働く職場では人が余った状態です。

というか、サンドラが休職したことで、彼女の抜けた16人という人数で作業が回ってしまうことが判明します。

そうなると、経営者としてはサンドラがいらないわけです。

だから「サンドラに辞めてくれ」と言うならわかりますが、なぜか、サンドラの同僚たちに投票させるという方法を取るのです。

これ、すごくないですか?

これまでサンドラと一緒に働いてきた人たちに、サンドラを取るか、ボーナスを取るかと選択を迫るのですよ。

しかも、上司である現場主任が、投票する同僚たちに、サンドラが復帰したとしても、誰か1人を辞めさせると脅したのです。

16人で仕事が回ると分かった以上、17人もいらないというのは理解できます。

しかし、自分たちのボーナスと、同僚のクビを天秤にかけさせるなんて、極悪非道にもほどがある。

そんなこと現実にあるのでしょうか?

でも、見ているこちらがとまどっているうちに、月曜の投票に向け、サンドラと夫のマニュは、同僚たちの家へと車を走らせるのです。

どうですか? 地味なようで、なかなかのパンチ力でしょ?

こんな状況ですが、サンドラは最初、自分からは社長に何も言えず、同僚のジュリエットが一人で社長に掛け合ってくれたのです。

サンドラは精神的に問題を抱えているように見えます。

体調を崩していたというのも、精神的なものだったのじゃないかと推測されます。

いまだに、しょっちゅう精神安定剤らしき薬を飲んでいます。

そのせいもあって、同僚たちの態度に、サンドラの精神状態は大きく揺さぶられます。

でもね、考えてもみてください。

たとえ普通の精神状態だったとしても、「私が失業しないために、あなたのボーナスを諦めてほしい」と同僚に言って歩かないといけないのですよ。

私なら考えただけで冷や汗ものです。

サンドラも生活がかかっていますが、それは同僚みんなにも言えることです。

中には、光熱費を滞納して、こっそり副業をしている人もいます。

妻は失業、しかし子供の学費は待ったなしという人も。

ほんと、誰もが、いろいろな事情を抱えて生活しているのですよ。

サンドラだって、夫に「公営住宅に戻ればいい」と言いますが、夫は拒絶します。

夫ーーーーー!!

自分の稼ぎで家賃も払えないなら、とりあえず、身の丈にあった場所に住みましょうよ!!

まあ、夫には夫の考えがあるのでしょう。たぶん。きっと。

そんな、それぞれの事情を抱える中で、究極の選択を迫り・迫られるわけです。

なんという絶望。お先真っ暗で、トンネルの中にいるみたい。

出口は見えず、そもそも出口があるのだろうかという恐怖。

人生には、そんなトンネルのような時期が時々あるものですが、サンドラもまた、トンネルの中でもがいているのでした。

切なくも清々しいサンドラの月曜日

快晴

イメージ画像

土曜・日曜と、サンドラはトンネルの中で、何度も挫折しかけました。

同僚と一口に言っても、仲の良い人からそうでない人、明るい人からそうでない人(笑)、様々です。

「そうでない人」に対しては、最初から心構えがあるからいいとして、いや、よくもないですが、仲がいいと思っていた人からの門前払いは堪えます。

仲がいいからこそ、顔を合わせて断ることができなかったのかもしれませんね。

でもサンドラは傷つきます。

かと思えば、サンドラに謝罪して、「きみに投票する」と言ってくれる人もいました。

サンドラの顔に笑みが浮かびます。

このときのサンドラは、雲の上を歩いている気分だったでしょう。

しかし、別のところでは、サンドラが訪問したことで親子喧嘩が勃発します。

父も息子も、サンドラの同僚です。

そして息子のほうはサンドラの頼みに激怒し、彼女に殴り掛かろうとします。

息子は、咄嗟に止めに入った父を殴りつけ、そのまま逃亡。

父はサンドラへの投票を約束してくれましたが、サンドラの気分は最悪のぐちゃぐちゃです。

まあね、自分のせいで親子が殴り合いになったのですからね。

しかし、あの息子、なんと度量の小さいことか。彼の度量はお猪口並みですな(怒)

サンドラはそれでも生活のためと思い、夫にも鼓舞され(この夫…)、お願い行脚を続けます。

しかし今度は、アンヌという同僚が夫婦喧嘩を始めます。サンドラも、アンヌの夫から厳しい口調で罵られました。

これで、サンドラの中で何かが切れてしまい、彼女はおもむろに、一箱分の薬を飲んでしまうのです。

その直後、アンヌがやってきて告げます。

「あなたに投票する」

私、不謹慎ながら笑ってしまいました。

いや~、現実って、悲惨であればあるほど、滑稽だったりしますよね。

でも、ご安心ください。サンドラは無事でした。しかも逆に、闘志がわいてきたようです。

ただアンヌは、今回の夫婦喧嘩で離婚を決めてしまいました。

なんてこと!?

……まあ、でも、今回のことはキッカケにすぎなかったのでしょうから、本当に離婚するにしても、遅かれ早かれ、ということだったのかな?

そういうことにしておこう……。

この時点で日曜の夜ですが、闘志のわいたサンドラは行脚に復帰。

そして迎えた月曜日。

ネタバレになりますが、結果は…ダメでした。

サンドラは涙ながらに、支持してくれた同僚たちとハグします。

と思いきや、社長に呼び出されました。

意外にも社長はサンドラを褒めたたえます。

残念な結果にはなりましたが、半数がサンドラを支持し、投票したのです。

つまり、お金より、同僚との絆を取ったってわけです。

社長は感心したのか、あるいは、いつか、この女使えると思ったのか、サンドラを残留させてボーナスも出すと言いました。

ただし、2ヶ月待てと。2ヶ月後に臨時雇いしたヤツらの契約が切れるから、そうなったら戻ってきてくれと言いました。

自分の代わりに誰かがクビになるなら、お断りだ。それがサンドラの返事でした。

金曜日はただグズグズ泣いて、ジュリエットの背に隠れていただけのサンドラは、月曜の朝に社長と対峙し、はっきりと自分の考えを口にしたのです。

工場を出たサンドラは、夫に電話します。

仕事を探さないとと話すサンドラの顔は、うっすらほころび、外は晴れて、サンドラの足元には長い影ができていました。

これで映画は終わります。

サンドラは結局失業してしまいました。

しかし再投票の意味はありました。

最初に思ったとおり、試練を乗りこえ、サンドラは成長したのです。

初老の私は「やっぱりな~」と思いながらも、月曜日のサンドラに清々しさを感じて、よい気分になったのでした。

スポンサーリンク

映画情報

製作年/2014年
製作国/ベルギー・フランス・イタリア
監 督/ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
出 演/マリオン・コティヤール/ファブリツィオ・ロンジォーネ

日本での公開は2015年です。

これはベルギーが舞台らしいですが、本当にこんな、同僚の間で投票…なんてあるのでしょうか?

もしサンドラが実在の人物で、この選挙が実際にあったとしたら、選挙後の職場では別のドラマが起きそうじゃないですか?

サンドラがいなくなっても、サンドラの影は職場に残りそうな気がします。

人の心は複雑ですからね。

こわ~……。

コメント

タイトルとURLをコピーしました