男性同士の優しい優しい恋愛映画です。
人気の漫画が原作ですが、漫画を読んでいない私でも独立した映画として楽しめました。
元・漫画好き女子だった私としては、原作は「こうなんだろうな~」と想像しながら見るのも楽しかったです。
というわけで、劇場版『きのう何食べた?』の感想を語ってみたいと思います。
私と同じく、かつては漫画少女だった諸姉も、漫画に興味はないけれど映画は見たいかなという諸姉も、よろしかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m
劇場版『きのう何食べた?』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
透明なボールの中でもがいている優しい世界
映画は夜、2人が同棲する部屋で、シロさんがケンジを京都旅行に誘っているところから始まります。
ケンジの態度から推測するに、シロさんは外で恋人っぽいことをするのが嫌な人みたいです。
そんなシロさんが、京都でケンジに(おかしい。シロさん、ゲイバレするの嫌な人なのに……)と思わせるほどに、恋人らしく振る舞うわけです。
それで、「え、なに!? 別れ話されるの!? それともシロさん、○んじゃうの~!?」となるわけです。
少々、乙女の入っているケンジです。
ですがケンジの予想は外れて、別れ話もなければ、シロさんが○ぬこともありませんでした。
それは良かったのですが、京都旅行に誘ってくれた本当の理由というのも、なかなかにキツかった。
この旅行、ケンジへの誕生日プレゼントというだけでなく、お詫びのための旅行でもあったのです。
実は、次の正月、シロさんはケンジをつれて実家に帰る予定でした。
その予定が白紙になった……というか、シロさんの両親から、ケンジをつれて来ないでくれと申し渡されたのでした。
これがキツい話だと思うのは、最初っからの拒絶ならまだしも、ケンジは一度、シロさんにつれられて、彼の実家に行っているのですよ。
前回の正月に一緒に帰省していて、シロさんの母から、またいらっしゃいと言われていたのです。
たぶんね、お母さんは本心でそう言ったのだと思います。その時は。
でも息子たちが帰った後、お母さんは寝込んでしまったのですって。
なのでシロさん父が、シロさんに、ケンジを連れてこないように伝えたのでした。
もちろん、お父さんもお母さんも、申し訳なく思ってくれていました。
それでも、体調を崩すほどの拒否反応が母に出ているわけですから、来ないでほしいということになっても仕方ないかなと思います。
あるいは、もっといい方法があったのですかね?
お母さんが我慢して我慢して、寝込んだことも内緒にして、付き合いを続ける?
それも違うよなぁ……。
嫌がる理由がケンジの性格や態度なら、話し合いのしようもあります。
しかし、ただただ同性であることへの生理的嫌悪感となると話し合いにもならないし、いずれ時間が解決してくれるとも言い難い。
となると、やっぱり「来ないで」になりますよね。
で、この話を伝えなければいけなくなったシロさんもキツいけど、これを聞かされるケンジは、もっとキツい。
なのに、シロさんを失うことの恐怖から、ケンジは「いいよ、いいよ。気にしないよ」としか言えない。
本当は、ドロドロした怒りを、心の底に溜めているように見えますけどね。
それには本人であるケンジはもちろん、シロさんだって気付いたのでは?
しかし、ドロドロした思いは深く深く閉じ込めて、二人の日常は変わりなく進んでいきます。
公式サイトのストーリー紹介には、「二人の間に波瀾がおきる。二人は平穏な日常を取り戻せるか?」的なことが書かれていますが、私にはすべてが平穏な日常に見えました。
シロさんもケンジも優しくて、相手を失いたくないとか利己的な部分もありますが、人間にはそんな部分もあって当然です。
ぜんぜん黒くありません。
それどころが、自分の抱えるドロドロした感情を相手にぶつけることもせず、1人でジタバタしている姿は、透明なボールの中であがいているようで、それは好きな相手を傷つけないためでもあり、「ああ、若いな~」と羨ましく、微笑ましくさえ思えるのでした。
誰も悪くないけど、つらいことってあるよね
今回、この『きのう何食べた?』を見ていて、心の底から「つらいな~」と思ったのは、外でイチャイチャするのを制限されているケンジを見ていたときでした。
これね、「外でイチャイチャなんてしたくないよ!」という人はいいのです。
でも、「したくない」と「したくてもできない」の間には、天と地ほどの差がありますよね。
たいした問題じゃないという意見もあると思いますが、普段、自分にとって何気ない行動を制限されるって、つらくないですか?
出そうなくしゃみを我慢しろって言われているような、いや、「お○らを我慢」のほうが近い?
ちょっと違うか?(汗)
でも、つらい。
なにげにつらい。
ただ、男性のケンジが、男性のシロさんを好きになっただけなのにね。
シロさんと付き合う前のケンジって、原作のほうには出てくるのでしょうか?
私の想像では、ケンジは人目を気にせず、したいことをしていたのではないかと思います。
「見たけりゃ見れば?」的な。
対してシロさんは絶対そんなタイプじゃない。かなり人目を気にするタイプ。
だからケンジは、恋人であるシロさんの嫌がることをしないのです。
あ~、つらい。
切ないのは好きだけど、つらいのはキツいわ~。
しかしです、ゲイバレを恐れるシロさんも変わっていきました。
京都旅行ではあまり人目を気にしていなかったし、正月は実家に帰らないという選択もしてくれました。
ただ、ここでもケンジはモヤモヤします。
モヤモヤの内容は、自分がシロさんから家族を取り上げたことにならないか、相手の家族から恨まれることにならないかってところじゃないでしょうか?
まあ、自分たちのことを「世間一般じゃ、普通じゃないし」と言えるケンジですから、諸々考えてしまうのでしょう。
そんなケンジにシロさんは、「二人だけでいいじゃないか」と言ってくれたのです。
二人でいるだけで、俺たち(俺たちの人生?)十分だろって。
愛されてますね~!
本当、もう、それだけでいいじゃないですか!
こう書いてて気付きましたが、これって、嫁姑の間に立たされた亭主の模範解答でもありますね。
なんだ、これは普遍的な問題だったのか。
というわけで、多少波風はあるものの、愛ある二人の日常を描いた素敵な映画なのでした。
映画情報
製作国/日本
監 督/中江和仁
出 演/西島秀俊/内野聖陽/梶芽衣子
同名の漫画が原作で、作者はよしながふみさんです。
この方の別の漫画をちらっと読んだことがありますが、きれいな絵で、でも時に、しっかり毒も出すという印象でした。
だから、せっかく映画だし、ドラマじゃないし、もっと毒を出してくれてもよかったよな~と思ったのでした。
いやいや、そもそも漫画『きのう何食べた?』に毒要素があるのかも知りませんから、原作読んでみないとですね。
というか、読んでみたいと思いました。
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