映画『下妻物語』ネタバレ感想 初老だってロリータを着てみたい?

お菓子の雨 シネマ手帖・邦画
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キラキラ・スイートを詰め込んだ、松花堂弁当のような映画です。

初老が見たって楽しめます。

というわけで、この映画の感想を語ってみたいと思います。

すでに見た方はもちろん、興味はあるけど、なんとなく見ていなかったという方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m

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『下妻物語』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。

茨城県下妻市在住・竜ヶ崎桃子。17歳。ロリータ・ファッションを愛し、自分がよければそれでいい、ロココに身を捧げた女子高生。同じく下妻市在住・白百合イチゴ。17歳。バイクはもう一人の自分という硬派なヤンキー女子高生。見た目は間逆、中身も間逆の二人が、いつしか相手を思いやり、本当の友達へと変わっていく物語。

初老だってロリータを着てみたい?

あらすじ、超・超・簡単に書いてみましたが、こう書くと、青春映画の王道って感じがします。

王道といえば王道かも。

でも初見では、なかなか、そう思えないかも(笑)

現実と妄想の入り交じった映像や、カワイイで縁取られた映像に、最初は目が眩(くら)みます。

そしてロリータ・ファッションを愛する桃子は性根が腐っており、青春映画の主人公とは、ちょっと言いがたい。

でも、よくよく思い出してみますと。

運動部で爽やかな汗を流していたスポーツ少女・少年がいる一方で、中二病に冒されたままの高校生も数多くおりました。

桃子は、スポーツを全力で楽しんでいる女子や、イチゴの熱いヤンキー論なんて、かっこ悪いと言います。

そんなことを言う同級生、いませんでした?

友達なんていらない、人間はしょせん一人なの。こんなことを言う同級生、いましたよね?

そして言葉通り、桃子さんはお昼休みも一人で、お菓子ばかりのお弁当を食べていたりで、かなり筋の通った中二病ですが、これも青春時代の一つの形かな~と思うのです。

友達のいない桃子は想像します。

(私はずっと1人で、80歳のある日、ベイビー(ロリータ服のショップ名)のお洋服を着たまま天に召され、アパートの管理人ロボットに発見される)

ですって。

いやはや。桃子は、まだ、本当の孤独を知らないんですよね。

もしかすると、その孤独が、天に召されるよりつらいかもしれないなんて、想像もできない。

でも、それこそが、若さの特権ですよ。

思ったことを、な~んにも考えず口にできる、怖いもの知らず。

「好き」が一生続くと思っていられるのも、若さですよね。

80歳でもベイビーのお洋服を着ていると想像する桃子ですが、でも、これ、本当に貫いてくれたら嬉しいな。

安アパートにフリフリのロリータ・ファッションの老婆、傍らには管理人ロボット。

そんなラストの映画があったら、ぜひ見てみたいです。

あ、私はロリータ好きですけど、着たいとは思わないです。

空を飛ぶ感覚をもう一度

空に風船

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桃子は、子供の頃から、空に吸い込まれそうになると感じることがありました。

映画の中でも、桃子が空に浮かんで行くシーンがあります。

私も十代の頃、似たような感覚に陥(おちい)ることがありました。

桃子はどこまでも飛んでいく感覚ですけど、私は宙づりになっている感じでしたね。

それは十代の後半のことで、漠然とした不安感から来ていたのかなと、今になってみれば思います。

では、桃子の飛ぶ感覚はどこから来ていたのでしょうね?

現実逃避?

もちろん、ある。

将来への希望?

それだ!

なんの根拠もない、なんだか知らないけど、未来には明るい何かが待っている的な、そんな感覚に覚えがある!

そうですよ。私も、宙づりになっている感覚、嫌いじゃなかったです。

自分が何者でもないという不安もあったけど、たぶん、未来に対する期待もあったのでしょう。

それが、なんとなく、宙に浮いているような気分にさせたのでしょうね。

盲目的な期待を持てていたあの頃、懐かしいなあ。

ちょっと戻ってみたい、なんて思いますね。

誰がなんて言おうと青春映画

さて、そんな我が道を行く桃子ちゃんですが、高校生らしく、人生で初の壁にぶち当たります。

桃子が愛してやまないロリータ・ファッションのブランド、BABY, THE STARS SHINE BRIGHT(ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト)の社長様から、新作のワンピースに刺繍をしてほしいと、直々に依頼があります。

なんだかんだで、その依頼を引き受けるのですが、ベイビーの服は大好きだし、ベイビーのデザイナーでもある社長・磯部様を神と崇める桃子です。

わかりやすくプレッシャーに押しつぶされそうになります。

なんだ~、普通の女の子じゃ~ん。と、桃子がかわいくなります。

桃子が小学一年生のとき、彼女のお母さんに向かって、

「人間は大きな幸せを前にすると急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいる」

そう言います。

離婚して、玉の輿に乗った母が弱気になったときに言った言葉なんですが、これを17歳の自分自身が突き付けられたわけです。

怖いよね。

大好きなベイビーのお洋服です。もし失敗したら?

神である磯部様に、「ぜんっぜんダメ!あんたのセンスってこんなもの!?」なんて罵倒されたら?

たぶん、立ち直れないんじゃないかな?

そんな、恐怖の前で身が竦(すく)んだとき、人はどうするのかというと、友達に慰めを求めるのです。

なんと、あれだけ友達なんていらないと言っていた桃子ちゃんが、イチゴに助けを求めます。

はい、イチゴちゃん、ちゃんと駆けつけてくれて、桃子を励ましてくれます。

いいなあ。友情だなあ。

イチゴちゃんのピンチにも、桃子は磯部さんとの約束を破ってまで、助けに行きます。

どうですか。青春でしょ?

この先の未来、桃子にもイチゴにも、もっと怖い思いをしたり、孤独に叩きのめされたりする日が来るのだと思います。

そのときは、友達を裏切るようなこともあるかもしれない。

でもそれは、まだずっと先の話で、17歳の二人は、心のままに行動できて、心のままに友達を助けます。

この映画は普通に青春映画だし、青春映画は、やっぱりこうでなくっちゃと思える映画なのです。

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映画情報

製作年/2004年
製作国/日本
監 督/中島哲也
出 演/深田恭子/土屋アンナ

原作は、乙女のカリスマと言われた嶽本野ばらさん。

映画に出てくる、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTは、実在するブランドです。

全然知りませんでした(汗)

ブランドだけでなく、社長・磯部様も実在する方です。

映画の中の磯部様、私は大好きなのですが、本物の磯部様はどう思っていらっしゃるのか、ぜひお聞きしたいところです。

 

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