映画『かもめ食堂』ネタバレ感想 フィンランドでマサコさんが拾ったもの

カモメですけど? シネマ手帖・邦画
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前回見た『トイレット』がよくて、同じく荻上直子(おぎがみなおこ)監督の『かもめ食堂』を見てみました。

とても良い映画でした。

しかも前回に続き、もたいまさこさんがとても良かったです。

それはたぶん、もたいさん演じるマサコさんと年が近くなった(というか追い越した?)せいもあると思います。

この映画では3人の女性が主人公で、みなさん、それぞれに面白いのですが、私は最年長のマサコさんをクローズアップしてみたいと思います。

フィンランドに着いたとき、まさに「からっぽ」という様子だったマサコさん。

その彼女がどう変化していくのか、ちょっと興味があるなと思われた方、ぜひ最後までお付き合いください。

ただしネタバレを含みます。お嫌な方は、ここまででお願いします。

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『かもめ食堂』あらすじ

フィンランドの首都ヘルシンキで、『かもめ食堂』という店がオープンした。

店主は日本人女性のサチエ。メインメニューはおにぎり。

当然のように客のない日が続くが、ようやく一人、日本かぶれの客が訪れる。

その客にガッチャマンの歌詞を尋ねられたことから、サチエは日本人観光客のミドリと知り合い、ミドリはサチエの家に同居、店も手伝うこととなる。

ミドリは食堂を流行らせるため、サチエにいくつかの提案をするが、それらは却下される。

しかし、ミドリに触発されたのか、サチエはフィンランド人が好きなシナモンロールを店で焼いてみる。

それから少しずつ、地元の人たちも、かもめ食堂へやってくるようになった。

新たにマサコという日本人女性も加わって、小さな事件もありながら、かもめ食堂は地元の人が普通にやってくる、普通ににぎわう食堂となっていく。

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『かもめ食堂』ネタバレ感想

フィンランドでマサコさんが拾ったものは何だったのだろう?

夢のキノコ

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かもめ食堂に初めてやってきた時のマサコさんは、少々やばかったです。

本当に「からっぽ」という感じでした。

聞けば、フィンランドの空港に着いて早々荷物が消え、もう3日も経っているそう。

「滞在はいつでまで?」「観光ですか?」というサチエの問い掛けにも、「決めていない」「観光かもしれないし、そうでないかもしれない」という返事。

身も心も「からっぽ」状態のマサコさんです。

その後も荷物は見つからず、観光じゃないかもしれないマサコさんは、何度もかもめ食堂にやってきます。

サチエから、「荷物の中には大事なものも入っていたでしょう?」と心配されて、独り言のように「大事なもの、入っていたかしら?」というマサコさんは、まるで不条理劇の登場人物のようです。

でも、マサコさんが「からっぽ」状態なら、そうなるのも理解できます。

「からっぽ」なんだから、自分にとって何が大切かなんて分かるわけがないのです。

自分の感情を押し殺して長い年月を過ごすと、人って、そうなることもあるようですよ。

マサコさんは長い間、ご両親の介護をしてきました。

ご両親が亡くなって、20年来の足枷がなくなったとマサコさんは言いました。

そして、テレビで見ただけの国、フィンランドにやってきた。

でも、何をしていいか分からないんですよね、マサコさん。

サチエから、ぼーっと過ごしたらいいと言われますが、ぼーっとするのって難しいと答えます。

分かります、すごく分かります!

家でぼーっとするのは簡単ですけど、旅先でぼーっとするの、難しいです。

行きたかった場所へ行ってみると、それで満足というか、目的を達成してしまって、その場で、さてどうしようと途方に暮れてしまうことが私もあります。

ただ、マサコさんには助け船が入ります。

かもめ食堂の常連、フィンランド人のトンミくんが、森へ行くことを勧めてくれます。

そしてマサコさんのとても良いところは、アドバイスをもらったら、すぐに実行するところです。

森に行ったマサコさんは、なぜか、一生懸命、黄色いキノコを拾っています(笑)

キノコ狩りは楽しかったようですが、マサコさんはこのキノコを失くしてしまいます。

持って帰る途中に落したのか、消えてしまったそうです。不思議ですね。

ですが、この辺りから、マサコさんも元気になっていきます。

ミドリ同様、マサコさんも食堂を手伝い始め、店も、店主のサチエが望んだ通り、地元の人がふらりと入れる食堂となりつつありました。

そんな日々の中、マサコさんの鞄が見つかります。

そろそろ帰るべき時期なのかなとマサコさんは思います。

しかし、自分の鞄を受け取り、開けてみると、そこには、いつか失くした黄色いキノコが敷き詰められていました。

これ、どんな意味があるのでしょうね。

フィンランドに来た直後のマサコさんは確かにからっぽでしたが、鞄の中には、日本から持ってきた荷物が詰め込まれていたはずです。

それらが消え、代わりに、フィンランドの森で拾ったキノコが入っている。

マサコさんは、鞄を見つけてくれた人に電話をします。

航空会社のカスタマーサービスの方かな?

その人に、「私の荷物、違うみたいなんですけど」と語りかけます。

「確かに私の荷物に違いないんですけど、ちょっと違うような……」

そんなことを言われて、電話の向こう側の人は、どんな顔をしているのでしょうか(笑)

でも、そう言うマサコさんのほうは、どこか、なにか、嬉しそうな表情に見えます。

そして、通りすがりのおじさんから猫まで押しつけられ、マサコさんは日本に帰るのをやめました。

いつまでいるのか、永久に帰るのをやめたのか、それは分かりません。マサコさん自身、分からないと思います。

でも、もし、マサコさんが日本に帰る日が来たなら、その時のマサコさんは、何かで一杯になって帰るのだと思います。

その「何か」は間違いなく黄色いキノコなのですが、それを他の言葉であらわすなら何でしょう?

自分、自信、感情、やる気、気力、将来への展望、愛、心の余裕、希望、欲望。

どれでもいいのですが、マサコさんが「大事」と思える何かが、彼女を満たしているはずなのです。

映画情報

製作年/2006年
製作国/日本・フィンランド
監 督/荻上直子
出 演/小林聡美・片桐はいり・もたいまさこ

原作は群ようこさんの『かもめ食堂』です。
小説『かもめ食堂』は、映画のための書き下ろしということです。

そのことを今回初めて知りました。

映画が先なのか、小説が先なのかよく分かりませんが、映画は荻上色、小説は群色で、どちらも良しです。

 

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