ネタバレ・あらすじを含む感想です。
かつて『プリシラ』を見た方と、感想を語り合えたら嬉しいです。
まだ見ていない方も、よかったら、お付き合いください。
ただしネタバレを含みますので、お嫌な方はここまでお願い致しますm(._.)m
『プリシラ』ネタバレ感想
ドラァグクイーン映画の金字塔?
この映画で「ドラァグクイーン」という言葉を知った人も多いのではないでしょうか?
私もそうだったかもしれません。
それ以前は、翻訳にしても、「女装のおかま」なんて書かれていた記憶があります。
『プリシラ』は、3人のドラァグクイーンが主人公です。
「これがドラァグクイーンよ!」と見せつけてくれたミッチ、ベルナデット、フェリシアですが、人としての生き方も見せてくれました。
普段はシドニーでショーガールをしている3人が、ショーの依頼を受け、砂漠の中の町、アリススプリングスへ借りてきたバスで向かいます。
バスで砂漠を横断するのですが、やはり砂漠は過酷なのですね。おんぼろバスのプリシラ号はしょっちゅう故障します。
考えてみると、旅と人生って、ちょっと似ています。そういう意図で、この脚本は書かれたのかな~と、今更ながらに思う初老です。
砂漠のスリーシスターズ、バスで行く
一口にドラァグクイーンと言っても、状況はそれぞれ。
最年長のベルナデットは性転換をしています。身も心も女性ですね。
ミッチとフェリシアは性転換はしていませんし、するつもりもなさそう。
そして、旅の途中で分かるのですが、ミッチはゲイでなく、バイでした。
ただバイというだけでなく、結婚していて、いまだ結婚は継続中です。
実はショーの依頼をしてきたのは、ミッチの妻だったのです。
いろいろと黙っていたことを、ミッチは他の2人から責められます。
この部分、私は少し違和感を覚えます。
『友達だと思っていたのに、大切なことを黙っていた』から怒るというのは理解できますが、バイだったことも怒られているようで、そこは怒るポイントではないんじゃないのかなと。
時代的に、ゲイの結束が固かったのですかね?
裏切り者って感じなのかな?
そうなると、ベルナデットの性転換と、少し若い2人が性転換まで考えいないのも、時代的背景が含まれていたりするのでしょうかね?
ベルナデットの頃は、女であるというなら、とことん女になることを突き詰めなければならない空気があったとか。
ミッチの頃になると、心は女だけど、体は男に生まれてきちゃったし、それはそれで楽しめばよくない? という考えも許容されるようになったとか。
もし、考え方も変わってきたということなら、もっと、どんどん変わっていって、性のあり方なんて人それぞれよね~、で、片づけられるようになったらいいのですけどね。
三人三様 ミッチの場合
で、さらに後になって分かるのですが、ミッチには子供がいました。
8歳になるベンジーです。
ミッチは息子に、自分がドラァグクイーンで、ゲイ(バイ?)であることを隠そうと必死でした。
でもベンジーはすべて知っていたし、どうやら現実を受け入れているようです。
このへん、母であるマリオンが上手に話していたのだろうなと思います。
ベンジーの本心は分かりませんし、8歳にして、大人にならざるを得なかったのはかわいそうだと思いますが、誰だって自分の人生と折り合いをつけるしかありませんからね。
その点、ベンジーはうまく対処していると思います。
そんな息子を見て、ミッチも覚悟を決めたようです。仲間になんて言えば…なんて、まだまだ揺らいでいますけどね。
すっぱりと切り替えるのは難しいでしょう。
仲間たちも、最初は罵るでしょう。
でも、結局、理解して、手助けしてくれるのではないでしょうかね。
仲間って、そういうものですからね。
三人三様 フェリシアの場合
最年少のフェリシアは、昔の言い方なら「新人類」、今どきなら「ゆとり世代」って感じです。
そのへんは、まあ、いいとしても、フェリシアの問題点は、少々破滅的なところだと思います。
彼女は、わざと人を怒らせるようなことをします。
ベルナデットが嫌がっていることを知りながら、彼女の本名を口にして、ボッコボコにされても懲りません。
荒くれ男の多い町で、わざと男たちを挑発して、あやうく大怪我をしそうにもなりました。
フェリシアは「人を怒らせるのが好き」と言いますが、そのせいで、自分が窮地に立たされることもあるわけです。
自分が痛い思いをするのに、やめることができない。
もう一種の病気か、もしくは、子供の頃の体験が、そうさせているんじゃないのかな。
実の父親か、母親の恋人だか分からない男から、フェリシアは性的いたずらをされますが、きっちりやり返します。
実害はなかったのですが、でも、やっぱり、そんな環境が子供にいいわけないですよね。
やり返した話をミッチにして、ミッチとともに大爆笑するフェリシアですが、深いところで傷になっているのでは?
というか……。
ちょっ!? ミッチ、爆笑するとこ!? と思いましたね。
フェリシアの人を怒らせたいという思いは、8歳のベンジーにも向けられます。
ミッチが自分の性的志向をひた隠しにしていることを知りながら、ベンジーに、父がゲイ(バイ?)であることをバラします。
ただ、ベンジーは、だからなに?的に受け流してしまい、逆にフェリシアのほうが、やり込められた感があります。
その後、フェリシアは、いつもベンジーと一緒にいるようになります。まるで友達のようです。
もしかすると、ベンジーといることで、フェリシアは子供時代のやり直しをしているのかもしれないですね。
この後、ベンジーは父親と一緒に、シドニーに戻ることになります。
ということは、フェリシアとも付き合いが続くわけで、将来、ベンジーが結婚でもすることになれば、父親のミッチより、フェリシアのほうが大騒ぎしそうだな~と想像されるのです。
三人三様 ベルナデットの場合
初老の私としては、この人に希望を感じます(笑)
三人の中で最年長で、何歳かは分かりませんが、老年期に突入しているだろうことは分かります。
ですが、ミッチに誘われて旅に出る前は、25歳の男性とお付き合いしていました。
不幸なことに25歳は亡くなってしまい、傷心を癒やすため、ミッチに誘われるまま旅に出るわけですが、旅の途中に同年代のボブと知り合います。
訳あって、ボブもアリススプリングスへ行くこととなり、最終的にベルナデットとボブは、アリススプリングスへ残ることにします。
ミッチに「大丈夫なの?」と訊かれて、「不安だけど…」とベルナデットは答えます。
そうですよね。不安ですよね。うまくいく想像のほうがしにくいですもん。
それでも、ボブに賭けてみようと思えるベルナデットは、心が若いのだと思います。
いつも背筋を伸ばして、どんなときも身綺麗にしていて、フェリシアから本名を呼ばれたときは、容赦なくボコります。なんて素敵。
あ、それに、若手2人がタフになりきれないときは、優しく慰めたりもします。
普段は厳しく、本当に弱っている人には優しい、こんな老人に私もなりたい。
マイノリティの目覚め…かな?
この映画を見たのは20年以上前ですが、当時とてもハマりました。
なぜか私は、ドラァグクイーンが主役の映画に、ハマりやすい傾向があります。
なんでだろうな~と思うに、女でお一人様もマイノリティ寄りだからかな~、なんて、つらつら考えていました。
ベルナデットのセリフに、ゲイはののしられて強くなるというのがあります。
ドラァグクイーンにも、女のお一人様にも、世間は優しい目を向けてくれません。
心ないことを言われて落ち込んでも、一人で立ち直るしかないのです。
だったら、さっさと立ち上がったほうが楽だな~。
と、マイノリティの生き方を教えてくれたのが『プリシラ』であり、ドラァグクイーンです。
なんて教訓めいたことを言っていますが、ただただ好きで、つい見てしまう映画なのです。
映画情報
製作国/オーストラリア
監 督/ステファン・エリオット
出 演/ テレンス・スタンプ/ヒューゴ・ウィーヴィング/ガイ・ピアース
日本での初公開年は1995年です。
ウィキペディアによると、ベルナデット役のテレンス・スタンプは、当初、経験したことのない役柄に難色を示したそうです。
でも、彼のベルナデットはとても素敵でした。
ヒューゴ・ウィーヴィングとガイ・ピアースも、普通の格好で、ただ歩くだけで、ちゃんと女性に見えました。
役者さんって本当にすごいですね。
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