映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』ネタバレ感想 クリスマスとはモンスターまで魅了する不思議…という映画

ハロウィンタウン シネマ手帖・洋画
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ヘンリー・セリックとティム・バートンがタッグを組んだ、大人のための絵本的クリスマス映画です。

「え? でもアニメーションでしょ? 子供と一緒に見られるよね?」

と思われた方、やめておいたほうがよろしいかと。

ワタクシ、昔々、親戚の子にティム・バートンの映画を見せて怖がられ、後年、お前のせいでトラウマ化したとまで言われましたので、皆様はお気をつけて。

ただ、大人が見て、大いに楽しめる映画であることは保証します。

というわけで、映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の感想を語ってみたいと思います。

「ティム・バートンとヘンリー・セリックの映画なんて贅沢~」という方も、「ストップモーション・アニメって懐かしみ深いよね~」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m

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『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

祝日の国のひとつ、“ハロウィン・タウン”。名前の通りハロウィンの国であり、住人たちは驚かすことばかりを考え、驚かされることも大好きである。そんな“ハロウィン・タウン”の英雄であるジャックは名声や賛辞、悲鳴に飽き飽きしていた。むなしさを持て余し、森の中をさまよい歩くうちに“クリスマス・タウン”へ迷い込んでしまい、知らない世界に衝撃を受ける。

クリスマスとはモンスターまで魅了する不思議…という映画

今や円熟味を醸し出しているバートン、セリックのご両人ですが、この『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』をひっっっさしぶりに鑑賞いたしますと、初々しさを感じます。

不気味さも引っくるめて可愛らしく、しかし30年たった今も楽しめる。すごい。

映画の始まりは絵本的で、どこにあるのか分からない森の奥深くに、それぞれの祝日の国への扉があることを教えてくれます。

それを見て、ついつい、日本だといくつの扉が必要なんだろうな~と笑ってしまった。

まあ、これは日本国以外のお話なので、扉の数は小さな円陣を組めるくらいです。

そして、物語は扉の中の一つを開けて始まっていきます。

開けられたのはジャック・オー・ランタンが描かれた扉です。つまりハロウィンの国への扉ですね。

いや~、不気味な世界ですよ、そこは。

この映画はストップモーション・アニメなのですが、実際の人間が演じるのと違い、人形の醸し出す不気味さというものがあります。

しかも、この映画の人形たちは、不気味でありながら、ちょっと可愛いのがいいのです。

そんなブキミ可愛い“ハロウィン・タウン”の住人は、吸血鬼や魔女やゾンビ、その他、なんという名前なのか分からないモンスターだらけです。

ハロウィンは1年で1日だけですが、他の364日も、彼らはひたすら次のハロウィンに向けて生活しています。

住人はみんな、驚いたり驚かせたりするのが大好きで、誰よりも人を驚かせるのがうまいジャックは“ハロウィン・タウン”の英雄です。

ジャックはその才能を誰からも讃えられ、誰からも好かれています。

でもね、同じことの繰り返しに、ジャックは虚しさを感じていたのです。

そして、虚しさは消えるどころか、だんだんと蓄積されていたのでした。

あらま~、オバケなのか幽霊なのかカボチャの王様なのか分からないジャックですが、人間と同じような悩みを抱えていたのですね~。

この悩みが子供に分かってたまるかってなもんです。

ちなみにジャックは自分のことを「カボチャの王」とか「もとはシニン」と言っていますが、一言で表すなら化け物ですよね。

元々は人間だとしても、人間だった頃の記憶はないようです。

で、大人にしか分からない鬱々とした気持ちを抱えながら森をさまよっているうちに、祝日の国の扉の前まで来ていました。

扉には、それぞれの祝日を象徴する絵が描かれていますが、ジャックには意味が分かりません。

分からないながらも、クリスマスツリーの絵に惹かれ、ツリーの絵が描かれた扉を開けてしまいます。

扉の先には、クリスマス一色の“クリスマス・タウン”の光景があり、ジャックは一目でその光景に夢中になります。

ああ、分かります、分かります。

なんでクリスマスって、あんなにワクワクするのでしょうね。特に何かをするわけでなくとも、ツリーや電飾を目にするだけで、ワクワク・ソワソワしてしまうのです。

「でも不幸のどん底にいるときは逆に~」なんて意見は、今はいいです。

とにかく、「なにか見知らぬものに会いたい!」というジャックにとって、初めて目にする美しい色の洪水と、楽しげな人々と幸せな空気は衝撃だったのです。

そして、彼は「これが欲しい!」と強く願います。

“ハロウィン・タウン”の住人であるジャックには、不気味なことが日常です。

だから“クリスマス・タウン”の雰囲気を嫌悪してもおかしくないのに、理解できないことを受け入れるジャックは、天才肌のアーティストみたいですね。

理解できないものは人に恐怖を与えるのに、逆に興味をもってワクワクするジャック。好き~。

しかしです、ハロウィンの王様であるジャックには、やはりクリスマスの本質が理解できない。

前のめりになってクリスマスを研究するのですが、なぜか最終的に、ジャックはクリスマスを乗っ取ってしまうのです。

なぜ、そうなる?

昔に見たときは何の疑問も覚えなかったのに、今回は「はて~?」と思いつつ見てしまいました。

このへんは「考えるな! 感じろ!」の精神で見たほうが楽しいです。

とりあえずジャックに悪気はなく、サンタクロースを捕まえて監禁してしまいます。監禁する意図はなかったのですが、結果的にそうなります。

そして、自分がサンタの代わりにプレゼントを配るため、人間界に出発します。

いまさらですが、ジャックの容姿ってガイコツなのですよ。ガイコツがサンタの扮装をして、プレゼントを配って回るのです。

ソリを引くトナカイ達も、もちろんガイコツ。

ソリを先導するのは、可愛いですが、犬の幽霊です。

配るプレゼントは“ハロウィン・タウン”の住人が作ったハロウィン仕様のもの。

見ているこちら側は大爆笑ですが、これをやられた子供たちは、たまったもんじゃないですよね。

当然、人間界は大混乱になってしまったのです。

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やっぱり最後は愛なのね

さて、人間界の大混乱を治めたのは誰かといえば、やはりクリスマスの大立て者であるサンタクロースです。

ジャックも認めるクリスマス界の黒幕・大ボス・“サンディ・クローズ”です。

“サンディ・クローズ”とは“鋭い爪を持つ男”という意味らしいです。

もちろんジャックの勘違いなのですが、ジャックがサンタをそう呼ぶシーンを見たあと、画面を巻き戻して、ジャックがサンタの影を垣間見たシーンを見直してみました。

確かに、サンタの影はちょっと不気味で、指の先が長く見えました。

というか、この映画に描かれる“クリスマス・タウン”は可愛いながら、ほんの少し、不気味さも感じてしまうのは私だけでしょうかね?

そして、基本的な考え方が恐怖中心であるジャック、サンタの影を見て、すんごい爪を持つ「俺様と同等の実力を持っている奴」と思ったのでしょう。

それは正解っちゃ正解です。ジャックがハロウィンの王様なら、サンタはクリスマスの王様ですよ。

ただ、才能の種類が違うのです。それがジャックには理解できなかった。

失敗したことで、ようやく、自分はクリスマスの王ではなくハロウィンの王であること、自分の喜びは驚かすことにあると再認識できたのですね。

そうなると、とたんにサンディ(サンタ)に申し訳ない気持ちがわき上がり、ジャックは“ハロウィン・タウン”のサンタクロースのもとに駆けつけます。

その頃、サンタは“ハロウィン・タウン”の嫌われ者・ブギーにコロされかけており、サンタを助けようとしたサリーも巻き添えにされていました。

サリーも“ハロウィン・タウン”の住人で、ジャックに片思い中の女性です。彼女はジャックの苦悩を知っていて、ずっと心配もしていました。

ブギーをやっつけ、サンタを解放すると、すべてはサンタが丸く収めてくれました。

子供たちには正統なクリスマスを取り戻し、”ハロウィン・タウン”のモンスター達には雪のプレゼントというサプライズ付きです。

ジャックは楽しそうに、「メリークリスマス!」とサンタに叫びます。

そしてそして、サリーとジャックは、美しい満月と雪景色を背景にして、固く抱き合うのでした。

サリーという愛すべき人を手に入れたジャックは、この先、自分を見失って迷うことも、虚しさを募らせることも、もう決してないのでしょう。

サリーはシ体から作られたお人形という設定ですし、ジャックはガイコツという、言葉にしても映像を見ても不気味な映画ですが、このラストシーンの本当の美しさが分かるのは、やはり大人になってからよね~と思うのでした。

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映画情報

製作年/1993年
製作国/アメリカ
監 督/ヘンリー・セリック
原案・製作/ティム・バートン
出演(声)/クリス・サランドン/キャサリン・オハラ

日本での公開は1994年です。

この映画が好きな人にしてみれば、「もう聞き飽きた」という話だとは思いますが、私、長い間、この映画の監督はティム・バートンだと勘違いしていました。

セリック氏には大変申し訳ない。

しかし、ストップモーション・アニメの中ではセリック氏の『コララインとボタンの魔女』が一番好きなので、ぜひ勘弁していただきたい所存です。

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