映画『ティム・バートンのコープスブライド』ネタバレ感想 人形たちの可愛らしさと不気味さと

招かねざる花嫁 シネマ手帖・洋画
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みんな大好き、ティム・バートン監督のストップモーション・アニメです。

映画にしては少し短めの時間でコンパクトにまとめ、人形たちによるミュージカル仕立ての不気味かわいい出来ばえとなっております。

題名から分かるとおり“コープスブライド=死体の花嫁”という、おどろおどろしい題名ですが、“死者の世界”は私たちの“生者の世界”より楽しげです。

というわけで、映画『ティム・バートンのコープスブライド』の感想を語ってみたいと思います。

ただしネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m

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『ティム・バートンのコープスブライド』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

魚屋ながら成金のバン・ドート家の息子・ビクター。由緒ある貴族でありながら破産したエバーグロット家の娘・ビクトリア。会ったこともない2人は両家の思惑により結婚のはこびとなる。まだ見ぬ相手に不安を感じていた2人だったが、会った瞬間から通じるものがあった。しかし緊張のためビクターが誓いの言葉を覚えられず、結婚式は延期となる。ビクターは深夜に森の中で誓いの言葉を練習し、地面から突き出た枝に結婚指輪をはめた。しかしそれは枝ではなく、コープスブライドの指だった。

人形たちの可愛らしさと不気味さと

人形を使ったティム・バートンによる『死体の花嫁』という映画、面白くないわけがないし、怖くないわけもありません。

映画は最初から、色彩のない陰鬱な世界を現しています。

これからバン・ドート家とエバーグロット家の結婚式リハーサルが行われるというのにです。

バン・ドート夫妻、特に妻のほうは、結婚に前向きなのですが、肝心の新郎となる息子・ビクターは実に後ろ向きです。

自分なんかが貴族の娘さんと結婚なんておこがましいし、気が重いといったところです。

バン・ドート夫妻、特に妻のほうは、「こっちにはお金があるのよ!」と強気です。

はい、バン・ドート氏ももちろん貴族の一員に名を連ねることに前向きですが、奥様はその倍くらい前向きなのですね。

しかしビクターは貴族の肩書には興味がなく、それ以前に、自分に自信がなさすぎるように見えます。

それは押しの強すぎる母親のせいもあるようです。

ビクターが「ビクトリアに一度も会ったことがないのに」と言うと、バン・ドート夫人は「会ってたら断られるでしょ!」と返していることから、ビクターは日常的に貶されているのだろうと思います。

もともと優しい性格のビクターは、母親からの心ない発言の連続により、自分に自信の持てない人間になってしまったのではないでしょうか。

そんなビクターには、貴族の娘さんとの結婚なんて、確かに気が重くもなりますね。

ですが、ビクトリアに会ったビクターは、控えめで穏やかな彼女に惹かれます。

憂鬱だった結婚話が、ビクトリアを知って、俄然待ち遠しいものになりました。

しかし、ここで、自信のない人間の悪循環が発揮されます。

今日が結婚式のリハーサルで、明日は結婚式だというのに、ビクターはどうしても誓いの言葉がまともに言えません。

失敗が失敗を呼ぶというか、失敗を挽回しようと空回りしてしまうのですね。

横には、ビクター同様、結婚を望んでくれているビクトリアがいて、すでにビクターをしっかりフォローしてくれているというのに、それさえビクターの目には見えていないのです。

怒った牧師や両家の両親に睨まれ、いたたまれなくなったビクターはエバーグロット家の屋敷から逃げ出します。

逃げ込んだ先は森の中で、落ち込んだビクターはどんどん森の奥へと入り込んで行くのです。

誓いの言葉をぶつぶつと練習するビクター。気持ちを立てなおすと、なんとか言えるようになりました。やっぱり気持ちって大切です。

そこですぐ引き返せばよかったのに、調子に乗って、地面から突き出た枝に指輪をはめてしまったのが運のつきでした。

その枝が、コープスブライドであるエミリーの指だったのですね。

プロポーズされたと勘違いしたエミリーは、「お受けします」と答えるのでした。

そして、生きたまま死者の世界へと連れてこられたビクター。

なんとか誤解を解こうとしますが、エミリーは思い込みの激しいタイプみたいです。しかし反面、なかなかに魅力的でかわいい女性なのです。

片方の目がしょっちゅう落っこちるし、頰も一部、肉が落ちて奥歯が見えていたり、片手片足は白骨化してますが、感情豊かでスタイルがよくて生前は美人だったろうなと思われます。

おまけに死者の世界も、地上の生者の世界より明るく楽しいという皮肉。

それでも、やはりビクターは地上に帰りたいのです。愛するビクトリアがいるのは地上なのですから。

そこでビクターは一計を案じ、エミリーに「親に会ってもらいたい」と頼み込み、地上へ戻ることに成功します。

このエミリー、生前は結婚詐欺男に騙されて命を絶たれたというのに、やはり男の言葉を簡単に信じてしまうのですね。

可愛らしく素直?な女性なのです。

さて、ここまでエミリーも他の死者たちも、ビクターに対してかなり親切です。

この映画自体ミュージカル仕立てで、もちろん死者たちも歌い踊り、実に陽気な死者たちですが、いつ豹変するか分からないゾクゾク感があります。

死者は死者ですから、別世界の人間?には変わりなく、どこか恐怖を感じるのは致し方ないところです。

と考えると、人形とホラーって最強の組み合わせではないでしょうか。

私は物心つく頃から、人形とか人物画にそこはかとない恐怖感がありました。

幼少期にぬいぐるみをねだった記憶はありますが、人形はリカちゃん以外ほしいと言った記憶がありません。

この映画の怖さは、登場人物が人形だからこそ際立つのではないかな~と思うのです。

蝶になって飛んで行ったのは愛ゆえか?

月と蝶

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さてさて、エミリーを騙して地上へ戻ることに成功したビクターですが、真っ先に向かったのはビクトリアのもとでした。

ビクトリアに思いを伝えると同時に、自分の置かれている状況を説明するビクターですが、ビクターの足跡を辿ってきたエミリーに見つかってしまいます。

騙されたと分かったエミリーの顔の怖いこと。

ビクターは呪文とともに、あっという間に死者の世界へ連れ戻されてしまうのでした。

ビクターを取り戻そうとするビクトリアですが、牧師にも両親にも取り合ってもらえず、それどころか、結婚式リハーサルからエバーグロット家に入り込んでいた偽貴族のバーキスと結婚させられるはめになります。

このバーキスという男こそ、エミリーを騙して、彼女を手にかけた結婚詐欺男だったのです。

エバーグロット家の財産を狙ってビクトリアとの結婚に成功したバーキスは、死者たちが地上にあらわれたことで、慌てて持参金を持って逃げようとします。が、当然、破産したエバーグロット家に持参金などありません。

エバーグロット夫妻だってお金目当てにビクター、ビクターがいなくなった後は資産家であることを匂わせるバーキスと娘を結婚させ、お家復興を企てていたのです。

当てが外れて呆然するバーキスを置き去りにし、ビクトリアは死者たちが行く方向へと歩いていきます。

その先は教会で、ビクターとエミリーの結婚式が行われるところでした。

生者であるビクターがエミリーと真に結婚するには死者にならなければならず、誓いの言葉の後、ビクターは毒入りのワインを飲むことになっています。

ビクターはビクトリアが別の男と結婚すると知ってしまい、死者の世界の住人になることにしたのです。

しかしビクターがワインを飲もうとするのを、なぜかエミリーが止めます。

エミリーの視界にはウエディングドレス姿のビクトリアがいました。

結婚を夢見ていたエミリーは、同じ夢を見ているビクトリアから、愛する男性を奪おうとしていることにようやく気づいたのです。

ビクトリアにビクターを返すエミリーでしたが、そこに乱入するバーキス。

結果、エミリーはバーキスに剣を突き付け、出て行くよう言い渡しました。黙って出て行けばいいものを、バーキスはエミリーを酷い言葉で侮辱した後、毒のワインを飲み干してしまうのです。

さあ、死者の皆様が本領発揮とばかりにバーキスを死者の世界へと連れていきます。

で、ついに自由になったエミリーは、美しい満月を見上げ、たくさんの蝶となって空へと飛んでいくのでした。

え?え?え?

と、ここでちょっと混乱してしまいました。

エミリーは成仏したってこと?

じゃあ、死者の世界ってなに?

あの楽しい死者の世界の住人たちは成仏できない悲しい魂ってこと?

そして蝶ってなに?なんで蝶?

ここで映画の冒頭に戻るのですが、ビクターは蝶が好きらしく、蝶のスケッチをして、スケッチした絵を壁に貼ったりしておりました。

エミリーが蝶となり昇華していったのは、もしかしてビクターへの愛ゆえなのか、それともエミリーにも愛情を寄せたビクターの目に、昇華していくエミリーの魂が蝶として映ったのか、どちらなのだろう……なんて思ったのです。

少々不気味テイストな映画ではあり、最後の解釈は個人にゆだねられるのでしょうが、ラストのエミリーは実に美しく、綺麗にまとまった映画なのでした。

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映画情報

製作年/2005年
製作国/アメリカ
監 督/ティム・バートン
出演(声)/ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター

日本での公開も2005年です。

この映画、ずっとクレイ・アニメだと思っていましたが、素材はクレイ(=粘土)ではないようです。

調べても素材がなにか分かりませんでしたが、メイキングを見ているとゴム素材?なのかなと思いました。

それにしても思った以上に人形が小さくて、細かい作業に気が遠くなる……

気になる方はメイキングもごらんあれ。

↓ティム・バートン監督映画

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