映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ネタバレ感想 インブリンの作り出すループは子供たちの桃源郷

ハヤブサ シネマ手帖・洋画
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ティム・バートン監督らしい毒の効いたファンタジーです。

バートン監督といえば、私的にはストップモーションアニメのイメージですが、こちらは普通に人物が演じています。

基本実写ではありますが、美しくも不気味、もしくは壮大なCGてんこ盛りで、思う存分ファンタジーを楽しめる映画となっております。

というわけで、映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』の感想を語ってみたいと思います。

「思いっきり夢を見させてくれるファンタジー映画が好き!」という方も、「そこにダークさがあれば尚良し!」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m

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『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

冴えない高校生のジェイクには幼い頃から祖父に聞かされ続けていた話があった。祖父が子供の頃にいた児童保護施設の所長・ミス・ペレグリンのこと。その施設で親友となった不思議な力を持つ子供達のこと。ジェイクは祖父の話を信じたが、学校の友達や、祖父の息子であるジェイクの父親さえ、その話を信じはしなかった。しかし、ある日、祖父が怪物に襲われ、ジェイクは祖父がかつて暮らした施設へ行く決意をする。

インブリンの作り出すループは子供たちの桃源郷

インブリンとは、ループとは、なんぞ?

映画を見ていない方は、まず、そう思われますよね?

簡単に言いますと、インブリンとはミス・ペレグリンのことです。

もう少々詳しく言いますと、ミス・ペレグリンはインブリンと呼ばれる種族なのです。

インブリンの人達は鳥に変身することと、時間を操ることができます。

変身する鳥の姿はインブリンそれぞれで、ミス・ペレグリンはハヤブサに変身できます。そもそも“ペレグリン”がハヤブサという意味だそうですよ。

そして、ループとは、インブリンが時間を操作して作った、ループする時空間のことです。

具体的に言いますと、できるだけ平和な日を選び、その平和な日を半永久的にループさせるのです。

ジェイクが初めてミス・ペレグリンと会ったとき、彼女は1943年9月3日を延々とループさせていました。

なぜそんなことをするのかといえば、ミス・ペレグリンには守るべき子供達がいたからです。

ミス・ペレグリンの児童保護施設に暮らす子供達は、1943年9月3日のループの中で、心穏やかに日々を過ごしていました。“日々”とはいえ、すべては同じ1943年9月3日の連続なのですけどね。

さて、ここまできてなんですが、この映画の主人公はミス・ペレグリンではありません。

2016年現在に生きる冴えない高校生・ジェイクが、この映画の真の?主人公です。

彼には友達がおらず、学友達からは、どうも見下されているようです。

その理由に、彼の祖父であるエイブが関係しています。

エイブはジェイクが幼い頃から自分の昔話を聞かせていました。

どんな話かといえば、ミス・ペレグリンが所長をしている児童保護施設にいたことや、そこで知り合った友達の名前や特徴などです。

友達の特徴とは、例えば、エマという女の子は空気より体が軽く、ブロンウィンは怪力の持ち主、ミラードは透明な男の子、といった感じです。

ミス・ペレグリンの施設にいたのは、異能者と呼ばれ、不思議な能力を持つ子供達ばかりでした。

当然、幼かったジェイクは祖父の話を信じていましたし、信じる以上に、祖父の不思議な友人達に、まるで自分の友人であるかのような愛着を感じていました。

でも、数年後、ジェイクは学校で祖父の過去を話してしまいます。これがいけなかった。

誰もジェイクの話を信じませんでしたし、彼を笑い物にさえしました。

たぶんですが、そこからずっと、ジェイクは友達を作れなくなったのではないかと思います。

そんなジェイクが、なぜミス・ペレグリンと関わることになったのかといえば、それはもちろんエイブのせいです。

ところで、なぜミス・ペレグリンはループを作ってまで子供達を守る必要があったのでしょうか?

そもそも、何から子供達を守っていたのか?

ジェイクがミス・ペレグリンと初めて会ったとき、彼女は「迫害から」と説明しましたが、それだけではなく、差し迫った敵はホローという怪物でした。

実のところ、祖父・エイブの命と目玉を奪っていったのも、このホローです。

エイブは亡くなる直前、ジェイクにループへ行くよう言い残しました。

ただエイブは、「島へ行け」「ループへ行け」「1943年9月3日」などという切れぎれの言葉しか残せませんでした。

このときのジェイクの理解度は、私と同じ程度です。

なぜなら、ジェイクはミス・ペレグリンや子供達の話は聞いていましたが、彼女の正体や、ループする時間のことなどはまったく聞かされていなかったからです。

もちろん、これには訳があって、エイブは孫が18歳になってから真実を話すつもりでいました。

しかし、その前にホローにやられてしまったわけです。

そして、このときジェイクは気づいていませんでしたが、ホローの親玉であるバロンは、エイブの次に、すでにジェイクを狙っていました。

そんなことに気づけるわけもなく、ジェイクはミス・ペレグリンに会うため、まずは、かつて祖父のいた施設があるケルン島へ行ってみました。

ですが当然、2016年のケルン島にミス・ペレグリンはいません。

しかも2016年に見る彼女の施設は廃墟となっていて、聞けば、1943年9月3日にドイツ軍の爆撃を受けたというのです。

いや~、ループなんて知る由もないジェイクですからね~。

しかし紆余曲折あり、結局はミス・ペレグリンのループにたどり着くことができました。

ループの中は、まだ爆撃を受ける直前の1943年9月3日で、施設は廃墟どころか建物も庭も美しく、空は晴れて気持ちのよい日でした。

ミス・ペレグリンは笑顔でジェイクを迎え入れ、子供達を紹介してくれます。

施設の子供達とジェイクは初めて会ったわけですが、雰囲気としては、“初対面”より“再会”に近い気がしました。

そして私は、その“再会”の雰囲気に胸がきゅっとしたのです。

友達のいないジェイクが、まだ紹介もされていないミラードという男の子に、「ミラード、きみか!?」と声をかけるシーンとか、他の子供達に歓迎されているシーンとか、ちょっと、うるってきたのですよ。

子供達がジェイクを歓迎してくれる裏側には、家族と離れ、大人になる未来も諦めた悲しみがあると感じてしまい、それでも明るい子供達に涙腺が……。

そんな子供達を全力で守るミス・ペレグリン。彼女の作るループの中は、まるで子供達の桃源郷だなあと思うのでした。

 

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奇妙だけれどスカッとする冒険活劇

さて、祖父の話が事実だったと分かったジェイク。

よかった、よかった。

しかし、本当の話はここからです。

祖父エイブの命を奪ったホローは、ただエイブを狙っただけではありません。

彼らの狙いは異能者すべてであり、中でも特に子供が目的なのです。そして邪魔になるなら、普通の人間だろうと動物だろうと、すべては攻撃対象です。

なんと邪悪な存在でしょう。

見た目も本当に気持ち悪いやつらなのですよ。

でも、こっそり打ち明けるなら、この邪悪な存在であるホローのビジュアルが妖怪好きな私のハートにヒットしまして、ホローが見たいがために、この映画を見始めたというね。

特に1943年9月3日ループのさなかに、海から1体のホローがやってくるシーン、このシーンが大好きなのです。

ミス・ペレグリンの施設は島にあるため、やってきたホローの背後には輝く海が広がっています。

頭上には澄み渡った青空があり、足元には海風に揺れる青々とした緑。

この世のものとは思えない醜悪なホローと、美しい島の風景。なんと胸ときめく景色であることか。

ですが、映画を見ていない方には、またしても「ホローとはなんぞ?」ですよね。

ホローとは、ホローガストと呼ばれる怪物です。どんな怪物かといえば、凶暴で残虐で、見た目も大変恐ろしいのですが、人の目で見ることはできません。

ホローを見ることができるのは、エイブとジェイクだけです。そう、実は2人とも異能者だったのです。

そして、ホロー達もまた異能者でした。

彼らはループで暮らすことに飽き、しかしループの外でも永遠に生きたいと考えました。

そんな彼らの親玉であるバロンという男が、インブリンの能力を利用することで、不死身の体を作る実験をします。結果、失敗。ホローと化してしまったわけです。

数年後、バロンは元の姿に戻る方法を発見します。その方法とは、異能者の目玉、中でも異能者の子供の目玉を食べることです。

この方法、目玉を一つ食べればいいというものではなく、ある程度の量を食べなくてはなりません。

ジェイクがこれらの話を知ったとき、バロンを含め、ホローとなった異能者の半分が元の姿に戻っているということでした。

ということは、いまだにホロー化した異能者が複数いて、正常な異能者の、特に子供の目玉を狙っているのです。

しかも、バロンは実験のやり直しをしようと、何人ものインブリンを誘拐していました。

そのため、ミス・ペレグリンはバロンに連れ去られてしまい、1体のホローがジェイクや子供達を急襲します。

子供達は家の2階へと追い詰められ、下からはホロー、上からはドイツ軍の爆撃機が迫ってきました。

爆撃機が飛んでくるということは、ループの時間も迫っているということです。

ホローから逃げ出すことができても、時間を巻き戻せるミス・ペレグリンがいなければ、ループは閉じてしまいます。

ループが閉じるということは、ジェイクにとって、彼の生きる2016年に戻る道が閉ざされてしまうということです。

結果、1943年に放り出されたジェイク。ループから放り出された子供達。最大の危機です。

バロンとミス・ペレグリンを追いかけようにも、島から出るには定期船の時間を待たなければいけません。しかし、それでは間に合わない。

というわけで、ここで活躍するのが、かつて島の近くで沈没した豪華客船です。とはいえ乗客も乗組員もすでに白骨化していて、見た目は完全な幽霊船となっています。

幽霊船を復活させるのは、空気を操れるエマに、触れるだけで火を起こせるオリーヴです。

かつての豪華客船が月光を浴びながら海上に姿を現す瞬間や、後々、白骨化した乗組員が活躍する様は、まさにファンタジーの醍醐味。

この辺の醍醐味が知りたい方は映画を見ていただくとして、冒険活劇となる後半の中で気になるのは、エマとジェイクの恋の行方です。

ミス・ペレグリンの下で暮らすエマは、ジェイクにもループに残ってほしいと思っていました。そう口にしたこともあります。

ジェイクが好き!ということもありますが、いまやホローを見ることができるのはジェイクだけですから、同じ異能者の仲間として、一緒に小さな子供達を守り、戦いに参加してほしいという気持ちも大いにありました。

ですが、エマに教えられるまで、自分が異能者だと知らず、普通に暮らしてきたジェイク。

急に、これまでの人生を捨てる選択を迫られても、反射的に拒絶してしまいますよね。

その後、残ると言い出したジェイクに、あなたはあなたの時代を生きてというエマ。

う~ん、お互いを思う葛藤が見えますね~。

そしてね、結局、すべてが終わった後、ジェイクは2016年に戻りました。

しかも、ちょっとしたパラドックスで、ジェイクが戻った2016年には、祖父エイブが生きていました。

万々歳です~。大団円です~。だったのですが。

最後の最後で、エイブの後押しにより、ジェイクはエマを選ぶのでした。

この結末、私は大好きなのです。うん、本当に。

でも、頭の隅で考えていたことは、この監督は、やはり、リアルより夢の世界を選ぶ人なんだな~ってことでした。

いや、褒めてます。そういう人、大好きですから。

原作の結末をなぞっただけと言われればそれまですが、バートン監督にはこれからも、ぜひ彼の世界観を見せ続けてほしいなと思います。マジで。

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映画情報

製作年/2016年
製作国/アメリカ
監 督/ティム・バートン
出 演/エヴァ・グリーン/エイサ・バターフィールド

日本での公開は2017年です。

原作は ランサム・リグズ氏の小説『ハヤブサが守る家』。

英語では、小説も映画も同名の『Miss Peregrine’s Home for Peculiar Children』 です。

感想では触れませんでしたが、ジェイクの父親役だったクリス・オダウド氏。

この人、こんな役が似合いすぎです~。

ジェイクの家で家計を支えているのは母親で、父親は周囲から無職と思われている人です。

でも学者らしくて、鳥に関する本を5年も執筆中です。

うん。無職の認識で合っている人ですね。

オダウド氏は『15年後のラブソング』でも、長年付き合った彼女と入籍せず、挙句に浮気をして追い出され、しかし天然なので、いつまでも元カノに“上から目線”というトホホぶりを、素晴らしくお上手に演じておられます。

いや、褒めてます。

よろしかったら『15年後のラブソング』でご確認ください。

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