ティム・バートン監督らしい毒の効いたファンタジーです。
バートン監督といえば、私的にはストップモーションアニメのイメージですが、こちらは普通に人物が演じています。
基本実写ではありますが、美しくも不気味、もしくは壮大なCGてんこ盛りで、思う存分ファンタジーを楽しめる映画となっております。
というわけで、映画『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』の感想を語ってみたいと思います。
「思いっきり夢を見させてくれるファンタジー映画が好き!」という方も、「そこにダークさがあれば尚良し!」という方も、よろしかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
インブリンの作り出すループは子供たちの桃源郷
インブリンとは、ループとは、なんぞ?
映画を見ていない方は、まず、そう思われますよね?
簡単に言いますと、インブリンとはミス・ペレグリンのことです。
もう少々詳しく言いますと、ミス・ペレグリンはインブリンと呼ばれる種族なのです。
インブリンの人達は鳥に変身することと、時間を操ることができます。
変身する鳥の姿はインブリンそれぞれで、ミス・ペレグリンはハヤブサに変身できます。そもそも“ペレグリン”がハヤブサという意味だそうですよ。
そして、ループとは、インブリンが時間を操作して作った、ループする時空間のことです。
具体的に言いますと、できるだけ平和な日を選び、その平和な日を半永久的にループさせるのです。
ジェイクが初めてミス・ペレグリンと会ったとき、彼女は1943年9月3日を延々とループさせていました。
なぜそんなことをするのかといえば、ミス・ペレグリンには守るべき子供達がいたからです。
ミス・ペレグリンの児童保護施設に暮らす子供達は、1943年9月3日のループの中で、心穏やかに日々を過ごしていました。“日々”とはいえ、すべては同じ1943年9月3日の連続なのですけどね。
さて、ここまできてなんですが、この映画の主人公はミス・ペレグリンではありません。
2016年現在に生きる冴えない高校生・ジェイクが、この映画の真の?主人公です。
彼には友達がおらず、学友達からは、どうも見下されているようです。
その理由に、彼の祖父であるエイブが関係しています。
エイブはジェイクが幼い頃から自分の昔話を聞かせていました。
どんな話かといえば、ミス・ペレグリンが所長をしている児童保護施設にいたことや、そこで知り合った友達の名前や特徴などです。
友達の特徴とは、例えば、エマという女の子は空気より体が軽く、ブロンウィンは怪力の持ち主、ミラードは透明な男の子、といった感じです。
ミス・ペレグリンの施設にいたのは、異能者と呼ばれ、不思議な能力を持つ子供達ばかりでした。
当然、幼かったジェイクは祖父の話を信じていましたし、信じる以上に、祖父の不思議な友人達に、まるで自分の友人であるかのような愛着を感じていました。
でも、数年後、ジェイクは学校で祖父の過去を話してしまいます。これがいけなかった。
誰もジェイクの話を信じませんでしたし、彼を笑い物にさえしました。
たぶんですが、そこからずっと、ジェイクは友達を作れなくなったのではないかと思います。
そんなジェイクが、なぜミス・ペレグリンと関わることになったのかといえば、それはもちろんエイブのせいです。
ところで、なぜミス・ペレグリンはループを作ってまで子供達を守る必要があったのでしょうか?
そもそも、何から子供達を守っていたのか?
ジェイクがミス・ペレグリンと初めて会ったとき、彼女は「迫害から」と説明しましたが、それだけではなく、差し迫った敵はホローという怪物でした。
実のところ、祖父・エイブの命と目玉を奪っていったのも、このホローです。
エイブは亡くなる直前、ジェイクにループへ行くよう言い残しました。
ただエイブは、「島へ行け」「ループへ行け」「1943年9月3日」などという切れぎれの言葉しか残せませんでした。
このときのジェイクの理解度は、私と同じ程度です。
なぜなら、ジェイクはミス・ペレグリンや子供達の話は聞いていましたが、彼女の正体や、ループする時間のことなどはまったく聞かされていなかったからです。
もちろん、これには訳があって、エイブは孫が18歳になってから真実を話すつもりでいました。
しかし、その前にホローにやられてしまったわけです。
そして、このときジェイクは気づいていませんでしたが、ホローの親玉であるバロンは、エイブの次に、すでにジェイクを狙っていました。
そんなことに気づけるわけもなく、ジェイクはミス・ペレグリンに会うため、まずは、かつて祖父のいた施設があるケルン島へ行ってみました。
ですが当然、2016年のケルン島にミス・ペレグリンはいません。
しかも2016年に見る彼女の施設は廃墟となっていて、聞けば、1943年9月3日にドイツ軍の爆撃を受けたというのです。
いや~、ループなんて知る由もないジェイクですからね~。
しかし紆余曲折あり、結局はミス・ペレグリンのループにたどり着くことができました。
ループの中は、まだ爆撃を受ける直前の1943年9月3日で、施設は廃墟どころか建物も庭も美しく、空は晴れて気持ちのよい日でした。
ミス・ペレグリンは笑顔でジェイクを迎え入れ、子供達を紹介してくれます。
施設の子供達とジェイクは初めて会ったわけですが、雰囲気としては、“初対面”より“再会”に近い気がしました。
そして私は、その“再会”の雰囲気に胸がきゅっとしたのです。
友達のいないジェイクが、まだ紹介もされていないミラードという男の子に、「ミラード、きみか!?」と声をかけるシーンとか、他の子供達に歓迎されているシーンとか、ちょっと、うるってきたのですよ。
子供達がジェイクを歓迎してくれる裏側には、家族と離れ、大人になる未来も諦めた悲しみがあると感じてしまい、それでも明るい子供達に涙腺が……。
そんな子供達を全力で守るミス・ペレグリン。彼女の作るループの中は、まるで子供達の桃源郷だなあと思うのでした。
奇妙だけれどスカッとする冒険活劇
さて、祖父の話が事実だったと分かったジェイク。
よかった、よかった。
しかし、本当の話はここからです。
祖父エイブの命を奪ったホローは、ただエイブを狙っただけではありません。
彼らの狙いは異能者すべてであり、中でも特に子供が目的なのです。そして邪魔になるなら、普通の人間だろうと動物だろうと、すべては攻撃対象です。
なんと邪悪な存在でしょう。
見た目も本当に気持ち悪いやつらなのですよ。
でも、こっそり打ち明けるなら、この邪悪な存在であるホローのビジュアルが妖怪好きな私のハートにヒットしまして、ホローが見たいがために、この映画を見始めたというね。
特に1943年9月3日ループのさなかに、海から1体のホローがやってくるシーン、このシーンが大好きなのです。
ミス・ペレグリンの施設は島にあるため、やってきたホローの背後には輝く海が広がっています。
頭上には澄み渡った青空があり、足元には海風に揺れる青々とした緑。
この世のものとは思えない醜悪なホローと、美しい島の風景。なんと胸ときめく景色であることか。
ですが、映画を見ていない方には、またしても「ホローとはなんぞ?」ですよね。
ホローとは、ホローガストと呼ばれる怪物です。どんな怪物かといえば、凶暴で残虐で、見た目も大変恐ろしいのですが、人の目で見ることはできません。
ホローを見ることができるのは、エイブとジェイクだけです。そう、実は2人とも異能者だったのです。
そして、ホロー達もまた異能者でした。
彼らはループで暮らすことに飽き、しかしループの外でも永遠に生きたいと考えました。
そんな彼らの親玉であるバロンという男が、インブリンの能力を利用することで、不死身の体を作る実験をします。結果、失敗。ホローと化してしまったわけです。
数年後、バロンは元の姿に戻る方法を発見します。その方法とは、異能者の目玉、中でも異能者の子供の目玉を食べることです。
この方法、目玉を一つ食べればいいというものではなく、ある程度の量を食べなくてはなりません。
ジェイクがこれらの話を知ったとき、バロンを含め、ホローとなった異能者の半分が元の姿に戻っているということでした。
ということは、いまだにホロー化した異能者が複数いて、正常な異能者の、特に子供の目玉を狙っているのです。
しかも、バロンは実験のやり直しをしようと、何人ものインブリンを誘拐していました。
そのため、ミス・ペレグリンはバロンに連れ去られてしまい、1体のホローがジェイクや子供達を急襲します。
子供達は家の2階へと追い詰められ、下からはホロー、上からはドイツ軍の爆撃機が迫ってきました。
爆撃機が飛んでくるということは、ループの時間も迫っているということです。
ホローから逃げ出すことができても、時間を巻き戻せるミス・ペレグリンがいなければ、ループは閉じてしまいます。
ループが閉じるということは、ジェイクにとって、彼の生きる2016年に戻る道が閉ざされてしまうということです。
結果、1943年に放り出されたジェイク。ループから放り出された子供達。最大の危機です。
バロンとミス・ペレグリンを追いかけようにも、島から出るには定期船の時間を待たなければいけません。しかし、それでは間に合わない。
というわけで、ここで活躍するのが、かつて島の近くで沈没した豪華客船です。とはいえ乗客も乗組員もすでに白骨化していて、見た目は完全な幽霊船となっています。
幽霊船を復活させるのは、空気を操れるエマに、触れるだけで火を起こせるオリーヴです。
かつての豪華客船が月光を浴びながら海上に姿を現す瞬間や、後々、白骨化した乗組員が活躍する様は、まさにファンタジーの醍醐味。
この辺の醍醐味が知りたい方は映画を見ていただくとして、冒険活劇となる後半の中で気になるのは、エマとジェイクの恋の行方です。
ミス・ペレグリンの下で暮らすエマは、ジェイクにもループに残ってほしいと思っていました。そう口にしたこともあります。
ジェイクが好き!ということもありますが、いまやホローを見ることができるのはジェイクだけですから、同じ異能者の仲間として、一緒に小さな子供達を守り、戦いに参加してほしいという気持ちも大いにありました。
ですが、エマに教えられるまで、自分が異能者だと知らず、普通に暮らしてきたジェイク。
急に、これまでの人生を捨てる選択を迫られても、反射的に拒絶してしまいますよね。
その後、残ると言い出したジェイクに、あなたはあなたの時代を生きてというエマ。
う~ん、お互いを思う葛藤が見えますね~。
そしてね、結局、すべてが終わった後、ジェイクは2016年に戻りました。
しかも、ちょっとしたパラドックスで、ジェイクが戻った2016年には、祖父エイブが生きていました。
万々歳です~。大団円です~。だったのですが。
最後の最後で、エイブの後押しにより、ジェイクはエマを選ぶのでした。
この結末、私は大好きなのです。うん、本当に。
でも、頭の隅で考えていたことは、この監督は、やはり、リアルより夢の世界を選ぶ人なんだな~ってことでした。
いや、褒めてます。そういう人、大好きですから。
原作の結末をなぞっただけと言われればそれまですが、バートン監督にはこれからも、ぜひ彼の世界観を見せ続けてほしいなと思います。マジで。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ティム・バートン
出 演/エヴァ・グリーン/エイサ・バターフィールド
日本での公開は2017年です。
原作は ランサム・リグズ氏の小説『ハヤブサが守る家』。
英語では、小説も映画も同名の『Miss Peregrine’s Home for Peculiar Children』 です。
感想では触れませんでしたが、ジェイクの父親役だったクリス・オダウド氏。
この人、こんな役が似合いすぎです~。
ジェイクの家で家計を支えているのは母親で、父親は周囲から無職と思われている人です。
でも学者らしくて、鳥に関する本を5年も執筆中です。
うん。無職の認識で合っている人ですね。
オダウド氏は『15年後のラブソング』でも、長年付き合った彼女と入籍せず、挙句に浮気をして追い出され、しかし天然なので、いつまでも元カノに“上から目線”というトホホぶりを、素晴らしくお上手に演じておられます。
いや、褒めてます。
よろしかったら『15年後のラブソング』でご確認ください。
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