ウィキペディアによると、この映画はファンタジー・コメディというカテゴリーらしいです。
そうなの? SFじゃなくて? これ、いわゆるパラレルワールドでは?
まあ、カテゴリーはともかく、面白い映画です。ビートルズの曲にあふれ、ジョン・レノンが生きている世界が描かれています。
というわけで、映画『イエスタデイ』の感想を語ってみたいと思います。
「見たよ!」という方も、「見てない!」という方も、よろしかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方は、ここまででお願いいたしますm(._.)m
『イエスタデイ』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。
パラレルワールド? ジョン・レノンが生きている!
楽しい映画です。といったら、主人公ジャックに悪いけど。
この映画の主人公ジャックは、終始、困惑した表情をしています。
この主人公、主人公らしくないかも。でも好き(笑)
冒頭では、自分の人気のなさを実感して、歌をやめる決心をします。明るいわけがないですね。
そんな決心をした帰り道、世界規模の大停電が12秒間起こります。
この、たった12秒間に、ジャックは事故に遭ってしまいます。命は無事でしたが、前歯が折れて、それはそれはマヌケな顔に。お気の毒……
ですが、歯を失うより衝撃だったのは、ビートルズの存在が消えていたことです。
さて、ミュージシャンがですよ。ビートルズがいなくなったことを知ったらどうするか。
そりゃもちろん、自分でビートルズの曲を歌いますよね(笑)
ジャックは必死で曲を思い出し、イベントやらパブやらで歌います。
ですが、相変わらず、お客さんは見向きもしません。これは落ち込みますね~。
ですが、その後、地元のレコーディング・エンジニアが声をかけてくれたり、エド・シーランに前座を頼まれたりして、どんどん有名になっていきます。
嬉しい反面、急激に変わっていく生活に、とまどいも隠しきれません。
そして、これは当然ですけど、ビートルズを知らない人たちは、ジャックの提案、例えばアルバム名に、変更を求めてきます。
求めるというか、ジャックの提案-本家ビートルズのアルバル名-を完全無視して、まったく別の題名をつけてしまいます。
だって、あの偉大なビートルズを知らないわけですから、仕方ないですよね。
さらに、エド・シーランから、「ヘイ・ジュード」の曲名を「ヘイ・デュード(相棒)」にしたほうがいいと言われたときの、ジャックの顔!
このときの彼の顔は、何度見ても笑えます。
そして次第に、ジャックは罪悪感に苛まれていきます。人の曲を歌っていること、懺悔しようにも懺悔できないこと。これは苦しいです。
そんなところに、ジャックと同じ、ビートルズの記憶を持った人たちが現れるのです。
もう恐怖も突き抜けたというジャックの表情。この俳優さん、表情だけで演技ができる。すごい。
観念したジャックですが、同じ記憶を持つ2人に、逆に救われます。
また、この2人から、ジョン・レノンの住んでいる場所を知らされ、ジャックはジョンに会いに行くのです。
ジョンはミージュシャンではありませんでした。おかげで彼は生きていました。
私はコアなファンではありませんでしたが、ジョンが亡くなったと聞いたときの衝撃は、今でもかすかに覚えています。
だから、ジョンが、海辺の小さな家の戸口に姿を現したとき、泣きそうになりました。
ジョンが生きて、78歳になって、「幸せな人生だった」と語ってくれるのです。
ジャックには、自分がジョンの功績を奪ったという気持ちがあるので、「有名でなくても?」と尋ねます。
ジョンは、幸せであるのに有名である必要はないと答えます。
ああ、なんてジョンらしい答えでしょう!
このシーン、実はとてもよく考えて、作られているのかもしれません。
でも、そんなことを気にする必要もなく、見ている私は、ただ、78歳のジョンに会えて嬉しい。78歳のジョンが「幸せな人生だった」と語るのを喜べばいいのです。
ジャックも、もちろん感動していましたし、この後のジャックの行動も、ジョンのアドハイスから決まっていきます。
これは映画ですけど、それでも、年を取ったジョンを見ることができて、私はとても幸せでした。
もしも私がジャックだったら?
この世で、自分だけが知っている宝物がある。
その宝物に、自分だけが、手を触れることができる。
ジャックの置かれた状況って、こういうことですよね?
大雨の降る夜、本当に誰もビートルズを知らないと悟ったとき、ジャックは「自分は非常に微妙な立場にいる」と言います。
そして雨の中を歩きながら、本当にやれるのか、自問自答します。
自分が、自分の好きなスターに成り代わるという想像、誰もがやったことがあると思います。
私もやりました(笑)
好きなアイドルだったり、バンドの一員だったり、その人物に成り代わって脚光を浴びる想像、楽しいですよね。
でも、ジャックは楽しそうじゃなかったです。切羽つまった感じ。
歌詞を思い出せるのか、うまく演奏できるのか、歌えるのか、常に追い立てられている。
でも、本当にジャックと同じ立場になったら、そうなるのでしょうね。
ただ有名になりたいという気持ちだけじゃなく、この名曲たちを、ちゃんと世に伝えたいという責任感みたいなものもあったりして。
実は、このジャックが紛れ込んだ世界には、ビートルズに影響を受けたバンド、オアシスも存在しませんでした。
そして、なぜか、タバコとコカコーラもなかった。なぜ?
さらにさらに、ハリー・ポッターも存在していない!
これ、私もいけるかも! ハリー・ポッターの映画は全部見ているはず!
と思ったのですが、台本を書けるほど思い出せない……
そもそも小説の方は読んでないしな……
ネットがあっても、本家が存在していないから、検索のしようもない。
うん、私には無理です。ジャックはよくやりました。
もともと、シンガーとしての才能があったからこそ、盗作だとしても成功できたのでしょうね。
結局、ジャックは、大勢の前で、盗作だったことを正直に話します。
ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ジョージ・ハリスン、4人の男たちが作った曲を、歌ったと。
そして、ジャックは引退。もとは教師だったので、教職へと戻るのです。
とまあ、映画は平和に終わるのですが、世界はジャックのことをどう思ったのでしょうか?
盗作であることを、ジャックの住む世界で、証明できる人はいないわけです。
だって、ジャックが会いに行ったジョンだって、ミュージシャンですらなかった。
他の3人も、きっと、そんな事実は知らん、と言うでしょうね。
となると、世間はどう判断します?
愛するエリーのために、作り話をしてまで、スターの座を蹴った男。
そんな感じじゃないでしょうか?
だとすると、レコード会社が彼を訴えた様子がないのも、分かる気がします。
会社もファンも、変わり者の天才が、また気を変えて、表舞台に出てくるのを待っているのです。
ジョンが隠居してしまっても、ずっと待っていたファンがいたように。
この映画、見ているときは、一緒に歌ったり笑ったりして楽しいのですが、見終わったあと、なんとも、しみじみした気持ちになる…かもしれません。
映画情報
製作国/イギリス・アメリカ
監 督/ダニー・ボイル
出 演/ヒメーシュ・パテル/リリー・ジェームズ/エド・シーラン
日本での初公開年も2019年です。
初老アルアルすぎますが、ジャックがホテルの屋上で歌うシーン、これももちろん、元はビートルズがやったことです。
ビートルズの場合は、すでに解散前という時期で、レコード会社の屋上ででしたけどね。
いや、しかし、エド・シーランの『ヘイ・デュード』のシーンは笑いました。
知らなくても楽しめる。しかし、知っているともっと楽しめる。そんな映画です。
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