映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』ネタバレ感想 ミステリー? 彼女は本当に気付いていなかったのか?

歌う猫 シネマ手帖・洋画
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アクション・シーンもないのにハラハラ・ドキドキできて、思わず笑って、さらには「もしかするとミステリー?」なんて思ってしまう映画です。

さすがメリル・ストリープ! さすがヒュー・グラント!

というわけで、私の感想を語ってみたいと思います。

「ヒュー様、素敵!」という方も、「ヒュー? 知らんなぁ」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方は、ここまででお願いいたしますm(_._)m

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『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。

ニューヨーク社交界の華にして、音楽界の庇護者であるマダム・フローレンス。資産家のマダムは音楽家に出資したり、ヴェルディ・クラブなるものを創設したりしていたが、マダム自身は大変な音痴であった。自分が音痴であると知らないマダムはソプラノ歌手を目指しており、夫のシンクレアは妻に自分の音痴を悟らせないよう苦心していた。しかし夫の苦労など知らないマダムはカーネギーホールで不特定多数の客を入れ、リサイタルを開いてしまう。

最大のミステリー? 彼女は本当に気付いていなかったのか?

よく聞く話ですが、音痴の方の中には、自分が音痴であるという自覚のない方がいるらしいです。

マダム・フローレンスも自分が音痴という自覚がありませんでした。

しかし財力のある彼女ですから、有名な指揮者から太鼓持ちよろしくおだてられて、自分はまあまあ才能のある歌手だと思っていたようです。

でも、ここで一つの疑問がわきます。

マダム・フローレンスは幼少の頃からピアノを習っていて、音感がなかったわけではないのです。

最初の夫からうつされた梅毒の後遺症で手が自由に動かなくなり、ピアニストの夢は諦めたのですが、そんな彼女が自分の音痴に気付かないものでしょうか?

マダムは、とても気持ちよさそうに歌っています。

彼女は音楽を愛していて、音楽が彼女の生きる理由でした。

でも、ただ誰かの音楽活動を支援しているだけでは物足りなかった。

彼女は自分も音楽を作り出す側にいたかった。

歌いたかった。

そして、本当に歌ってみると、『歌う』という魅力にハマってしまった。

歌う魅力に魅入られたマダムには、自分の歌声が素晴らしいものに聞こえていたのでしょうか?

それとも、音痴と分かっていながら、歌う気持ち良さに身をゆだねていたのでしょうか?

私には分かりせん。

しかし、このマダムは不思議な音痴で、周りの人まで夢の中へ引きずり込むことができる、不思議な力を持った音痴だったのです。

音痴、音痴と連呼するのもなんですけどね……

お金持ちの文化祭? 大勢で見る夢は楽しい

眠る猫

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不思議ですね。

素晴らしい歌声って、人を酔わせる力があります。

しかし、その逆もあって、並外れた音痴な歌声が人を引きつけるということもあるのです。

マダム・フローレンスはそんな人でした。

彼女の歌も、彼女の人となりも、なぜか人を引きつける力があった。

私は最初、夫のシンクレアはマダムのお金目当てかなと思っておりましたが、どうやら彼は本当に妻を愛していました。

アグネスという女性は、初めてマダムの歌を聴いたとき、床に這いつくばって笑っておりました。

このアグネスさん、いかにも玉の輿狙いで結婚しましたという感じですし、社交界を下に見ていて、マダムに対しても不躾でした。

しかし、そんなアグネスも、カーネギーホールでは、マダムに野次を飛ばす兵士たちに恥を知れと怒鳴り、マダムにブラボーと叫ぶのです。

マダム・フローレンスの周りにはお金目当ての人もいますけど、社交界に身を置くご婦人方もマダムの歌を聞きに来ます。

彼女たちはお金には困っていませんよね?

マダム・フローレンスが主催するヴェルディ・クラブで、本当に感動している様子のご婦人方もいます。

ヴェディ・クラブでの歌劇(?)は、はっきり言って文化祭レベルです。

でも、だからこそ楽しいのかもしれないですね。

友達と作り上げる文化祭って楽しくなかったですか?

友達がやっているバンドを見て、盛大に声援を送ったりしませんでしたか?

そんなノリだったのかなと思います。

お金を持った大人たちが、時代とか気持ちとか、いろんなものを共有しつつ楽しむ文化祭は、そりゃあ楽しかっただろうなと思います。

この映画の題名には『夢見るふたり』とありますが、マダムと一緒に夢を見たのは夫のシンクレアだけではなかったはずです。

音痴な歌姫はたくさんの人に夢を見せました。

でも、夢は終わります。あっけなく。

新聞記者がマダムの公演を酷評し、マダムはその記事を目にして倒れてしまうのです。

記者は自分の仕事をしただけかもしれませんが、金持ちの道楽として、そっとしておいてくれてもよかったのにな~と、マダム側から見ていると思ってしまいますね。

マダムの夢の終わりは、たくさんの人の夢の終わりでもありました。

現実に戻った人々は、マダムを恋しく思ったのではないでしょうか。

正論だけの人生なんて味気なさすぎる。

だからこそ人生にはスターが必要で、スターの条件としては、上手に夢を見させてくれるということが必須です。

その点でマダム・フローレンスは素晴らしいスター性があったわけです。

私もマダムと同じ時代にニューヨークで金持ちとして存在したかった。

そして、マダム・フローレンスの夢を一緒に楽しんでみたかったな~、と思うのです。

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映画情報

製作年/2016年
製作国/イギリス・フランス
監 督/スティーヴン・フリアーズ
出 演/メリル・ストリープ/ヒュー・グラント/サイモン・ヘルバーク

日本での公開年も2016年です。

マダム・フローレンスは実在する人物で、映画の宣伝文句によると、今もカーネギーホールのアーカイブで一番人気となっているのがマダムだそうです。

わからなくもないです。メリル・ストリープ演じるマダム・フローレンスの「夜の女王のアリア」は爆笑しました。

あれは何度でも聞きたいと思えます(笑)

そしてヒュー・グラント。年を取っても、やっぱり素敵です。

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