人生の残り時間を知ったとき、人はその時間をどう過ごすのか。
面白いテーマですよね。
この映画の主人公たちは、「死ぬまでにやりたいことリスト」を作り、2人で旅に出ることにしました。
楽しそうです。
でも、ふと、余命宣告を受けた人の家族の立場なら…と考えてしまいました。
「楽しんできて」とは、簡単には言えませんよね。
残される側は、はるかに覚悟を強いられる気がします。
この映画は、主人公たちと一緒に人生最後の旅を楽しみながらも、もし、置いてけぼりにされた側になったらと、考えてみることもできますね。
では、ご一緒に、両方からの視点を味わってみましょう。
ここから先はネタバレを含みます。お嫌な方は、ここまででお願いします。
映画『最高の人生の見つけ方』あらすじ
ある病院の、ある病室に、重症の患者が二人。
一人はエドワード・コール。超のつくお金持ち。
もう一人はカーター・チェンバーズ。愛する家族のために日々働く、自動車整備工。
まったく別の人生を歩んできた二人が、どういうわけか同室となり、二人揃って余命宣告を受ける。
余命宣告を受けた2人は「棺おけリトス」なるものを作る。それは言うなれば、「死ぬまでにやりたいことリスト」だった。
エドワードとカーターは、リストに書いたことを実現させるため、病院を飛び出し、人生最後の旅に出る。
映画『最高の人生の見つけ方』ネタバレ感想
余命宣告を受けた家族の願い、受け入れられる?
若かりし日のカーターさん、大学に入ってすぐ、彼女を妊娠させてしまい、大学を辞めました。
以来、妻のため子供のため、自動車整備工として45年間働き続けます。
子供たちも巣立ち、これからゆっくりできるという頃になって病気が発覚。
カーターは穏やかな男性で、知的で、自分の運命を(不本意でも)受け入れているように見えます。
でも、なぜか同室になった、超お金持ちで病院のオーナーでもあるエドワードと、やりたいことをやる旅に出ることにします。
強引に誘ったのはエドワードです。でも、行くことを決めたのはカーター自身です。
で、独身のエドワードと違って、カーターは、当然、奥様とケンカになります。
これ、旅に出る側でなく、出て行かれる側になったとしたら、どうですか?
私なら、かなりキツいです。
精神的にも、世間体的にも。
世間体なんて(怒)と言われそうですが、思いはいろいろな場所をめぐります。そうすると、もちろん、世間の目なんてものも意識するわけです。
でも、やっぱり一番は、悲しみや怒りや困惑や、とにかく感情的なものですね。
何十年も連れ添った夫に、「あと少しで人生が終わることが分かった。知り合ったばかりだけどエドワードと旅に出るよ(意訳)」なんて言われたら、私は、ぽいっと捨てられたような気がします。
残り時間はわずかなのに、赤の他人と旅に出たいなんて、私はなんなの? 必要ないの? 私たちの絆ってなんだったの?
と、いったところでしょうか?
実際、カーターの奥様であるバージニアも、「子供たちに、おまえたちを見捨てると言いなさい」と、夫に詰め寄っています。
あと、もう一つ。希望はほぼないとしても、延命治療をしてほしい。少しでも私たちと一緒にいてほしい。そう思う気持ちもあります。
でも、それが患者本人の幸せでないなら、私たちはどうしたらいいのでしょうね?
引き止めるにしろ、送り出すにしろ、家族はそれなりの覚悟を持つしかないのでしょう。
バージニアは断固引き止めようとしますが、カーターの決意は変わりません。
夫は旅に出てしまいますが、バージニアは旅先のエドワードに電話をし、夫を返せと直談判します。
自分の考えがはっきりあるバージニアが羨ましいです。
私なら、どんな選択をしたところで、後で、本当にあれでよかったのかと、自問を続けるのだろうなぁと思うのです。
余命を知りたくない人の割合96%
カーターさんが言っていたのですが、1000人を対象にして「自分が死ぬ日を知りたいか」という質問をしたら、知りたくないと答えた人が96%いたそうです。
え!? 多いな!! と私は思いました。
私は残り4%のほうです。
カーターさんも4%派です。残された日数を知ることで、解放された気になると思っていたのです。
でも、現実に余命宣告を受けると、どうやら、思惑とは違ったようです。
カーターがエドワードの誘いに乗った理由は、そこでしょうね。
裕福ではないけれど、カーターの人生を聞くかぎり、誰もが、いい人生だと言うでしょう。
大学へは行けませんでしたが、妻と添い遂げ、3人の子供をちゃんと社会に送り出した。
でも、末っ子が独立して、カーターは胸に穴があいてしまったのです。
これって、空の巣症候群ってやつですかね?
そんなときに病気が分かって、人生の終わりを知ったら、人は何を思うのでしょうか。
幸いなのは、カーターの隣にエドワードがいたことです。
「死ぬまでにやりたいことリスト」に、スカイダイビングとか入れ墨とか入れてしまう人ですよ。
空の巣症候群を吹き飛ばすのには、うってつけの人物ですね。
そして、旅のおかげで、カーターは家族のもとに、わだかまりなく戻れたんじゃないのかなと思います。
ありきたりですけど、ここが帰る場所だと認識できたというか。
そう仕向けたのはエドワードです。
バージニアから夫を返してと言われたエドワードが、若い女性を使って、カーターに、自ら家に帰ると言わせました。
エドワードさん、一代で財を成しただけあって、人を操るのがうまい(笑)
人生の最後をどんなふうに迎えるかは、自分の力の及ぶところではないのかもしれません。
でも、努力はできるかもしれない。
私はエドワードのような超金持ちでもなければ、超金持ちの友達もいません。
でも、やっぱり4%派はやめられません。
そして、もし、余命宣告があれば、そのときの心模様にしたがってみようと思うのです。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ロブ・ライナー
出 演/ジャック・ニコルソン モーガン・フリーマン
日本での初公開年は2008年です。
原題は「The Bucket List」。
これが、「死ぬまでにやりたいことリスト」という意味になります。
なんでバケツ? と思って調べてみたら、ちょっとブラックでした。
国によって、いろんな言い回しがある、ということですね。
コメント