映画『パターソン』ネタバレ感想 思わず笑える、なくて七癖的日常

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監督がジム・ジャームッシュというだけで、なんの前知識もなく見てみました。

大変おもしろかったです。

そして、いい意味で裏切られました。

「なくて七癖」という言葉がありますが、どんなに癖のなさそうな人だって、よくよく見れば7つくらい癖があるのです。

これはそんな映画です。

映画紹介に、なにげない、ありふれた日々を描く的なことが書かれていて、確かに山場という山場はありませんが、思わず笑ったり、はらはらしたりする映画です。

さらに、この映画にはいろんな謎(?)が詰め込まれています。

ジム・ジャームッシュってこんなに面白かったの?と、今頃になって思っている初老女子です。

私も興味ある~という方で、ネタバレOKの方のみ、ぜひご一緒に、ジム・ジャームッシュの魅力を探求いたしましょう。

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『パターソン』あらすじ

ニュージャージー州のパターソン市に住むパターソン氏は、バスの運転手であり、詩人である。

彼が詩人であることは彼の妻しかしらない…たぶん。

目覚まし時計を使うことなく起床。仕事に行き、詩を作り、妻と語らい、犬と散歩するふりをしてバーで一杯。

それがパターソン氏の一日であり、そんなパターソン氏の一週間を切り取ったお話。

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『パターソン』感想

詩のノート

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ほぼ内容を知らずに見ました。

パターソン氏の一週間ということで、私小説的な映画も好きなので見始めたのですが。

まず目についたのが、パターソン氏の家の中。なんともおしゃれです。

お金持ちという感じではないです。シリアルを入れた器やマグカップ、スタンドライトの傘なんてものが、さりげなく可愛い。

これは、たぶん女性の趣味。ということは奥様の趣味で、奥様はおしゃれな人なのだと分かります。

子供はいない。夫は詩人。奥様は可愛らしく趣味のいい人。

なるほど。お互いに理解ある夫婦の、ハートウォーミングな日常が続くわけね~、と思っていました。

しかしです。見ているうちに、「あれ?」ってなってくるのです。

奥様、なんだか、ゆる~く暴走していません?

ご主人、もしや、奥様の暴走に引いちゃっていません?

というのが見えてくるのです。

パターソン氏は奥様を愛しています。

それは分かるのですが、もう少しくらい、自分の意思を主張してもいいのでは? と思ってしまいます。

とくに夕食に、チーズと芽キャベツのパイのみを出されたときとか。

その前の晩の夕食はキヌアだったのですが、キヌアのみでなかったことを祈りたい(汗)

さりげなく、夕食は普通のものがいいとは言えないものですかね? まあ、言えないのでしょうね。

パターソン氏は実にいい人です。

同僚の愚痴も、ただ聞いてあげます。

同僚のドニー、大変おもしろいです。ドニーはパターソン氏に愚痴を言うのが趣味のようです。

よくもまあ次から次へと、そんなに愚痴が出るなと思います。飼い猫の愚痴まで言っていて、笑ってしまいました。

あまりに愚痴だらけでパターソン氏が「気の毒に」というと、「俺が負うべき業なんだよ」とカッコよく返します。

だったらグチらなきゃいいのに。そのほうがずっとカッコいいのに(笑)

でも、金曜日、ドニーが本当にグチらなかったのですが、私は思わず「え? ドニー? どうしたの!?」と言ってしまいました。

愚痴ばかりの人が何も言わないなんて、本当に最悪なことが起こっているのではと怖くなります。

ドニー、すごい技を持っていますね(笑)

また、バスに乗り合わせる乗客の話にも、パターソン氏は耳を傾けます。

私が面白かったのは、男性2人の恋バナですね。

いや、恋バナ未満の話です。

せっかく女性のほうから声をかけてくれても、二人とも自分からアクションがまったく起こせなかったという話を、男らしく語っていました。

笑える出来事だけでなく、暖かな気持ちになる出来事もあります。

夜、バーに行く途中で、仕事帰りの道端で、パターソン氏は詩人に出会ったりします。

仕事帰りにあった詩人は小学生くらいの少女なのですが、彼女の詩はなかなか良かった。

ときには怖い出来事も起こります。

パターソン氏が毎晩行くバーで、失恋男が元カノを拳銃で脅し、自殺しようとしました。

拳銃はおもちゃだったんですけどね。

おもちゃでどうやって自殺する気だったのか、エヴェレットというこの男、ちょっと抜けています。

そして、週末には最大の事件が起こります。

パターソン氏が詩を書きためていたノートを、飼い犬が粉々に引きちぎってしまいました。

パターソン夫妻に構ってもらえなかった報復とみられます。

なんたる極悪非道!

正直、ここでパターソン氏が爆発するのかなと思いましたが、しないんですよね~。

じゃあ詩をやめちゃうのかなとも思ったのですが、散歩に出た先で不思議な日本人と出会い、再びパターソン氏の内から詩がわいてきます。

そして、また、新たな一週間が始まるのです。

片田舎の、普通の男性の、普通の一週間。

ですが、その一週間の出来事に、私は一喜一憂してしまいました。

でも、現実ってそんなものじゃないですか?

職場の愚痴っぽい同僚にうんざりすることは小さな問題ですか?

もしかすると、本人にとっては、出社拒否になるほどの問題かもしれません。

奥様の暴走は?

やめろと言ったら喧嘩になるかもしれないと、悶々と悩むことは小さな問題ですか?

言えないでいることも、言って喧嘩になることも、けっこうなストレスですよね。

他人から見るとたいしたことのない問題でも、本人にとっては大きな問題です。

その人に成り変わってみれば、一週間はこんなにもドラマティックです。

そして、この映画には、たくさんの謎があります。

繰り返し双子が出てくるのですが、監督からの、なにか強いメッセージなのかもしれません。

パターソンという名前と地名も繰り返されますが、この意味は?

最後に出てくる日本人には謎しかありません。

何をしている人? 何をしにパターソン市に? なぜパターソン氏に近づいたの? その指の絆創膏はなんだ!? とかね(笑)

せめて、この日本人の謎だけでも解いてほしかった。

でも、私たちは普段、日々の生活の中で不思議なことがあっても、たいていは謎のままでやり過ごしてしまいますよね。

知らない相手でも、危険そうでなければ、深く追求したりしない。

それが現実であり、この映画でも大切なのは、日本人と話したことで、パターソン氏がまた詩作を始めたということです。

謎ときが大切なのではないのです。

あれ? もしかすると、それが監督からのメッセージなのかな?

謎に捕らわれるな。人は前進するのみ。とか?

いや、分かりません(笑)

気分が落ち込んだ日や、今日は嫌なことがあったな~という日に、『パターソン』いかがでしょう。

普通っぽいけど癖のある、そして最初に思った通り、ハートウォーミングな映画です。

映画情報

製作年/2016年
製作国/アメリカ・ドイツ・フランス
監 督/ジム・ジャームッシュ

日本での初公開年は2017年です。

謎の日本人、動画でお分かりかと思いますが、永瀬正敏さんです。

かつて同監督の『ミステリー・トレイン』に出演しています。
1989年公開だそうです。

見ましたよ~。
若かったですよ~。
工藤夕貴さん可愛かったですよ~。
でも、何年前かは数えたくありません(汗)

 

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