33年前の映画ですが、今見ても、心が温かくなる映画です。
婚活映画で?
そう思われた方、シェール演じるロレッタの清々しさを見ていただきたい。
ロレッタ家族の、笑える家族愛を見ていただきたい。
そして、若き日の、ニコラス・ケイジのかわいらしさを見て!(笑)
というわけで、この映画の感想を語っていきたいと思います。
見た方も、見ていない方も、よかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m
『月の輝く夜に』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。
ロレッタの清々しき婚活よ
ロレッタって、元祖・サバサバ系女子かも。
彼女は結婚したいのですよ。花嫁になりたいのですよ。
なので、ジョニーにプロポーズされたとき、ジョニーのことは愛してはいませんでしたが、なんのためらいもなくOK。
ためらいはなかったけれど、縁起というか、やってしかるべき手順は守らせた。
ジョニーという男、42歳でお金はありそうなのですが、あまり気の利くタイプじゃありません。
プロポーズをするのに、指輪を用意していませんでした。
日本人の私としては、指輪は後でいいんじゃない?と思いますが、ロレッタ始め、登場人物のほとんどはイタリア系です。プロポーズに指輪は必須なのかもしれません。
「指輪なしのプロポーズなんて」と、ロレッタは言います。
レストランでのプロポーズでしたが、ジョニーは隣の席の男にまで、マヌケ呼ばわりされます。
さらに、ロレッタはジョニーに、ひざまずいてプロポーズすることを要求します。
なぜロレッタは、そうまで形式にこだわるのか?
一回目の結婚は運がなかったから。ロレッタはそう思っています。
なぜ一回目の結婚は運がなかったのか?
教会で、父に手を引かれて…という、形式通りの式をしなかったから。
ケーキもなし披露宴もなし、たぶん指輪もなしだったと思われます。
だから悪運に見舞われた! とにかく最初が肝心だから、ちゃんと形式にのっとってやって!
というのがロレッタの意見です。
結婚という目的のためには、多少のことは許せるロレッタです。たとえば、結婚相手を愛していないこととか。
でも、やるべき手順をはしょるのは許せません。なぜなら、悪運がついてきて不幸になるから。
これに笑ってしまうのは、私が罰当たりな無信心者だからでしょうか。
ロレッタはカトリック教徒で、教会へ懺悔に行ったりします。
そのくせ、ジョニーの母が危篤だと聞いても、まったく同情することなく、取り繕って、優しさを見せるフリさえしません。
普通、これから危篤の母のところへ行く婚約者に、式の日取りはいつにする? なんて聞きます?
いやいや、もっと他に言うことがあるでしょ!(笑)
せめて、「式とか細かいことは帰ってきてからにしましょうね」とか、ないんか~い!
とにかく、ロレッタって、実にはっきりしているのですよ。必要でないものや、興味のないものに気を遣うことは一切ありません。
会ったこともないジョニーの母に使う思いやりはないけど、目の前のジョニーの健康については気遣います。
実に分かりやすい。
他人への気遣いでヘトヘトになることもある日本人の1人としては、ロレッタの性格が実に羨ましかったのです。
母・ローズの求める答えは
この映画の主人公はロレッタですが、ロレッタの母・ローズもまた素敵な女性です。
この人の視線の動き、すごく好きです。
視線一つで、この人の憂いがよく分かります。
夫は浮気をしていて、ローズは勘で気付いています。
愛想を尽かすことができれば楽ですが、ローズは夫を愛しているので、心が疲弊していきます。
なぜ夫は、男は、浮気をするのだろう?
ローズには、その疑問に対する一つの答えがあったのですが、レストランで知り合った大学教授には受け入れられませんでした。
でも、ロレッタの婚約者・ジョニーは、ローズの望む答えをくれました。
男が浮気をする理由は、「死への恐怖」です。
それがローズの答えで、ジョニーが肯定してくれたことで確信に変わります。
うん、分かるような気がします。でも、私がその答えを実感するには、もう少し、年を取る必要があるな~と感じます。
そしてローズは、夫に、浮気をやめてと言うのです。
…朝の食卓で。ひぃって感じです(笑)
夫は分かったと言うのですが、そのあと、「ある日、自分の人生が空しく思える。とてもつらい」と続けるのです。
初老の身としては、こちらの言葉に、非常に共感してしまいました。
この、「ある日」が、本当に、ある日、突然来るのですよ。
自分の人生はからっぽだったかもと感じたときの空しさ、つらさ。これは堪えます。
でも、ローズは「あなたの人生は空しくない。愛している」と。
すごくシンプルな言葉ですけど、こんなこと言われたら、私なら泣ける。
かくして夫の心は、ローズに戻ってきました。
シンプルな言葉を静かに、でも力強く口にしたローズ。
こんなこと言ったら叩かれそうですけど、専業主婦の強みを見たって感じがしました。
おじいちゃんはパパのパパ
夫婦の愛も素敵ですが、家族愛も素敵です。
ロレッタの父・コズモは、ロレッタの1回目の結婚式の費用も出さなければ、出席もしていません。
お金が惜しいからなのか、可愛い娘を嫁に出したくないからなのか。
たぶん両方だと思いますけど。
そんなパパなので、2回目の結婚式もお金を出さないと言い張ります。
しかし、ロレッタの家は3世代同居で、家にはロレッタのおじいさんがいます。
パパのパパです。
どこの国も一緒だな~と思ったのですが、年寄りは、年寄りだからという理由で、邪険に扱われたりします。
ロレッタのおじいさんも、例外ではありませんでした。
なので、おじいさんがコズモに説教するとき、「年寄りのたわごとと言われるが」と前置きしています。ちょっと切ない。
おじいさんは家族の前で、「娘の結婚式の費用を出すのは父親の義務だ」と宣言します。
パパはおじいさんの前で、子供のように頭(こうべ)を垂れ、素直におじいさんの言葉を聞くのです。
コズモはロレッタのパパですが、おじいさんの息子でもあるのですよね。
一大決心してパパに説教したおじいさんも、おじいさんの言葉を息子として受け入れたパパも、見ていて胸がほんわかします。
このおじいさん、随所で、いい味を出しています。
ロレッタは結局、ジョニーの弟と結婚することを決めるのですが、すべての話が一気に進んだため、おじいちゃんは泣いてしまいます。
嬉しいのかと思いきや、混乱しているだけでした(笑)
そして、大団円で、みんながシャンパンで乾杯。
最後は、なぜかジョニーまで、嬉しそうに「家族に乾杯!」と言っています。
まあ、夫婦にはなれなかったけど、親戚にはなるわけですし、幸せならいいか(笑)と思える結末なのでした。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ノーマン・ジュイソン
出 演/シェール/ニコラス・ケイジ
日本での初公開年は1988年です。
アカデミー賞では3部門受賞しています。それだけ愛された作品なのですね。
昔、作家の森瑤子さんが、この映画の続編を2ページくらいのベリー・ショートで書かれていました。
著作権的にどうなの? と今は思いますが、でも、いいお話だったのですよ。
ロレッタとロニーが結婚。でも時間が経つとロニーが浮気をしてしまい、ロレッタはそれに気付く。
ローズがロレッタに助言して……というお話でした。
これをベースにした続編を見てみたいな~。と、思う今日この頃です。
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