美味しい! 楽しい! 嬉しい! という感情を、ラテン風味で味わえる映画です。
才能のある料理人が挫折して、しかし、家族や友人の手助けもあって返り咲くというストーリー。
ありがちと言えばありがちですが、湿っぽさというものがまったくない!
なぜ? どうして?
というわけで、この映画の感想を語ってみたいと思います。
ただしネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
エンピンガーオなキューバサンドが人生を救うのだ!
映画は、レストランの厨房でカールが仕込みをしているところから始まります。
この映画では、料理をしている場面を丁寧に撮っています。カールがいかに料理を愛しているかという表現でしょうか。
その意味はともかく、料理シーンは思惑どおり?食欲をそそります。
レストランの豊かな食材を使った料理もですが、家で子供に作る簡単な食事や、元カノの家で作ったペペロンチーノなんて涎が出そうでした。
深夜に見たのが敗因ですな(汗)
まあ、そんなわけで、カールは料理をこよなく愛する立派なシェフなのですが、それ以外は、なんとな~く、ダメダメな予感です。
まず父として微妙。
元妻イネズとの間に、10歳の息子パーシーがいて、時々彼と会っています。
あちこちに連れていってやるのですが、パーシーは父と向き合って話がしたいのですよ。
でも、一緒の時間を過ごすだけではダメなのだと、カールには分かっていない。
そして夫として、男としても、微妙?
イネズとは別れていますし、同じレストランで働くモリーとも、恋人関係は解消して友人に戻っています。
カールは芸術家肌で、料理のこと以外は深く考えない人のようです。子供みたいです。
普通なら社会に出て、社会の荒波に揉まれる間に色々と悟るものですが、彼は才能溢れる料理人で、早々に出世してしまった。
だから、子供のように素直なままで、かたくなで、それがよい方に出ればいいのですが、たいがいは悪い方に出てしまうものです。
料理評論家のラムジーと喧嘩するのはいいとしても、やり方ってもんがあるでしょ!? と彼の母なら怒りたいところです。
ツイッター上でラムジーに暴言を吐いて、当然ラムジーも売られた喧嘩を買うわけです。
ツイッター上ですから衆人環視の中ですよ。逃げるわけにもいきませんよね。
ラムジーは後々になってカールから、ツイッターのことを知らなくて、ラムジーだけにダイレクトメールを送った気でいたと言われます。
ラムジーは「知らんがな!!」と言いますが、ラムジーの言い分はもっともです。人前で喧嘩を売っておいて、そんなつもりじゃなかったなんて、大人の言い分じゃありません。
でも、そんな人なのです、カールって。
お店のオーナーとも言い合いになり、カールはクビ。その後、レストランに来たラムジーにチョコレートケーキを撒き散らしながら罵詈雑言。その姿をネットで拡散され、ちょっとした有名人にもなります。
嫌な有名のなり方ですよね。おかげで、次の就職先も決まりません。
息子と約束していたお出掛けもキャンセルです。それくらい行ってもいいじゃないかと思いますが、息子にダメな父と思われるのが辛いのです。
違うんだなぁ。パーシーは父の助けになりたいのに。
でも、カールの性格を元妻はよく分かっていて、彼の再起を手助けします。
彼女はカールが雇われシェフに納まるわけがないと、前々からキッチンカーをやるよう勧めていたのですよ。
でも、カールは立派な店、立派な肩書にこだわりがあった。パーシーに対する見栄もあったと思います。立派な父親と思ってもらいたいというね。
違うんだなぁ……2回目ですが。
カールと違って、大人で賢いイネズは、彼と息子を連れ、故郷であるマイアミに向かいます。
カールはそこでキューバサンドと出会い、キッチンカーを購入。
仕事仲間だったマーティンもやってきて、カールの作ったエンピンガーオなキューバサンドが完成します。
「エンピンガーオ」とはスペイン語で、この場合「絶品!」という意味です。
マーティンとカールが「エンピンガーオ!」と言い合った後すぐに、キッチンカー作りを手伝ってくれた男たちに、キューバサンドとビールを振る舞うのですが、これがいい。
屋外で、砂煙の上がるような作業場で、ビール片手にキューバサンドを頬張る男たち。時間はもう夕方?夕方近く?で、ビールとキューバサンドは、さぞ染みたことでしょう。
客と心がつながるような料理を出したいと言っていたカール。それがまさに実現したのだと思います。
信念のある人は強いな~とラテンのリズムで教えてくれる
キッチンカーを手に入れ、先の展望も見えてきたカール。
ここまで、なかなかに大変でした。モリーの助言やイネズのサポート、マーティンの協力があってできたことです。
でも、回りの助けも大きかったけれど、やはりカールの中で、料理が好きなことになんの揺らぎもなかったことが勝因だな~と思います。
前述の、キッチンカーが完成して、手伝ってくれた男たちにキューバサンドを振る舞っていたとき、息子のパーシーがふざけたことを言いました。
焦げたサンドイッチを、どうせタダだからいいじゃんとぬかしたのです。
そのとき、カールは声を荒らげることなく、同じ料理人としてパーシーと向き合いました。
自分は料理が好きで、料理をすることが喜びであること。自分の料理を食べてくれる人への感謝をもっていること。それを真摯に伝えたのです。
どんな状況にあっても、この揺るぎなさ。優柔不断で迷ってばかりの私には羨ましい限りです。
そんな人だから、元妻や元カノもカールを見放さないし、屋台をやると聞いたらマーティンが飛んできたりする。
マーティン、ノリが軽くて、実はこっそり大好きです。
この映画には全編にラテン調の音楽が流れまくっていて、マーティンはいつもノリノリ。
でも、マーティンにも、しっかりとした信念があるように見えます。
それはカールについていくということ。
だから彼も全然ブレない。カールがキッチンカーを買ったといえば、さっさと仕事を辞めてマイアミまで飛んでいきます。
揺るぎない信念…なんて言うと堅苦しいですが、それはラテン音楽に隠して軽いノリで進んでいきます。
マイアミから出発したキッチンカーは、最後には素敵なレストランへとたどり着きました。
なんというハッピーエンド。
こちらのハッピーエンドは最後までラテン風味で、爽やかなハッピーエンドを味わえるのでした。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ジョン・ファヴロー
出 演/ジョン・ファヴロー/エムジェイ・アンソニー/ジョン・レグイザモ/ソフィア・ベルガラ
日本での公開は2015年です。
監督・主演のジョン・ファヴローって、『アイアンマン』の監督さんなのですね。
なるほど、脇役陣が豪華なわけです。
イネズの元夫役が『アイアンマン』のロバート・ダウニー・Jr。
カールの元カノ役がスカーレット・ヨハンソン。この映画のスカーレットは妖艶で、『ロスト・イン・トランスレーション』の印象しかない私には衝撃でした。
しかし、なんといっても、オーナー役のダスティン・ホフマンが最高にかっこ良き!でした。
あと、知らなかったのですが、イネズの父親役の方は有名なラテンシンガーだそうです。ライブシーン素敵でした。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブを思い出しましたが、こちらのほうが湿度0って感じです。
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