キラキラ・スイートを詰め込んだ、松花堂弁当のような映画です。
初老が見たって楽しめます。
というわけで、この映画の感想を語ってみたいと思います。
すでに見た方はもちろん、興味はあるけど、なんとなく見ていなかったという方も、よろしかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m
『下妻物語』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。
初老だってロリータを着てみたい?
あらすじ、超・超・簡単に書いてみましたが、こう書くと、青春映画の王道って感じがします。
王道といえば王道かも。
でも初見では、なかなか、そう思えないかも(笑)
現実と妄想の入り交じった映像や、カワイイで縁取られた映像に、最初は目が眩(くら)みます。
そしてロリータ・ファッションを愛する桃子は性根が腐っており、青春映画の主人公とは、ちょっと言いがたい。
でも、よくよく思い出してみますと。
運動部で爽やかな汗を流していたスポーツ少女・少年がいる一方で、中二病に冒されたままの高校生も数多くおりました。
桃子は、スポーツを全力で楽しんでいる女子や、イチゴの熱いヤンキー論なんて、かっこ悪いと言います。
そんなことを言う同級生、いませんでした?
友達なんていらない、人間はしょせん一人なの。こんなことを言う同級生、いましたよね?
そして言葉通り、桃子さんはお昼休みも一人で、お菓子ばかりのお弁当を食べていたりで、かなり筋の通った中二病ですが、これも青春時代の一つの形かな~と思うのです。
友達のいない桃子は想像します。
(私はずっと1人で、80歳のある日、ベイビー(ロリータ服のショップ名)のお洋服を着たまま天に召され、アパートの管理人ロボットに発見される)
ですって。
いやはや。桃子は、まだ、本当の孤独を知らないんですよね。
もしかすると、その孤独が、天に召されるよりつらいかもしれないなんて、想像もできない。
でも、それこそが、若さの特権ですよ。
思ったことを、な~んにも考えず口にできる、怖いもの知らず。
「好き」が一生続くと思っていられるのも、若さですよね。
80歳でもベイビーのお洋服を着ていると想像する桃子ですが、でも、これ、本当に貫いてくれたら嬉しいな。
安アパートにフリフリのロリータ・ファッションの老婆、傍らには管理人ロボット。
そんなラストの映画があったら、ぜひ見てみたいです。
あ、私はロリータ好きですけど、着たいとは思わないです。
空を飛ぶ感覚をもう一度
桃子は、子供の頃から、空に吸い込まれそうになると感じることがありました。
映画の中でも、桃子が空に浮かんで行くシーンがあります。
私も十代の頃、似たような感覚に陥(おちい)ることがありました。
桃子はどこまでも飛んでいく感覚ですけど、私は宙づりになっている感じでしたね。
それは十代の後半のことで、漠然とした不安感から来ていたのかなと、今になってみれば思います。
では、桃子の飛ぶ感覚はどこから来ていたのでしょうね?
現実逃避?
もちろん、ある。
将来への希望?
それだ!
なんの根拠もない、なんだか知らないけど、未来には明るい何かが待っている的な、そんな感覚に覚えがある!
そうですよ。私も、宙づりになっている感覚、嫌いじゃなかったです。
自分が何者でもないという不安もあったけど、たぶん、未来に対する期待もあったのでしょう。
それが、なんとなく、宙に浮いているような気分にさせたのでしょうね。
盲目的な期待を持てていたあの頃、懐かしいなあ。
ちょっと戻ってみたい、なんて思いますね。
誰がなんて言おうと青春映画
さて、そんな我が道を行く桃子ちゃんですが、高校生らしく、人生で初の壁にぶち当たります。
桃子が愛してやまないロリータ・ファッションのブランド、BABY, THE STARS SHINE BRIGHT(ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト)の社長様から、新作のワンピースに刺繍をしてほしいと、直々に依頼があります。
なんだかんだで、その依頼を引き受けるのですが、ベイビーの服は大好きだし、ベイビーのデザイナーでもある社長・磯部様を神と崇める桃子です。
わかりやすくプレッシャーに押しつぶされそうになります。
なんだ~、普通の女の子じゃ~ん。と、桃子がかわいくなります。
桃子が小学一年生のとき、彼女のお母さんに向かって、
「人間は大きな幸せを前にすると急に臆病になる。幸せを勝ち取ることは、不幸に耐えることより勇気がいる」
そう言います。
離婚して、玉の輿に乗った母が弱気になったときに言った言葉なんですが、これを17歳の自分自身が突き付けられたわけです。
怖いよね。
大好きなベイビーのお洋服です。もし失敗したら?
神である磯部様に、「ぜんっぜんダメ!あんたのセンスってこんなもの!?」なんて罵倒されたら?
たぶん、立ち直れないんじゃないかな?
そんな、恐怖の前で身が竦(すく)んだとき、人はどうするのかというと、友達に慰めを求めるのです。
なんと、あれだけ友達なんていらないと言っていた桃子ちゃんが、イチゴに助けを求めます。
はい、イチゴちゃん、ちゃんと駆けつけてくれて、桃子を励ましてくれます。
いいなあ。友情だなあ。
イチゴちゃんのピンチにも、桃子は磯部さんとの約束を破ってまで、助けに行きます。
どうですか。青春でしょ?
この先の未来、桃子にもイチゴにも、もっと怖い思いをしたり、孤独に叩きのめされたりする日が来るのだと思います。
そのときは、友達を裏切るようなこともあるかもしれない。
でもそれは、まだずっと先の話で、17歳の二人は、心のままに行動できて、心のままに友達を助けます。
この映画は普通に青春映画だし、青春映画は、やっぱりこうでなくっちゃと思える映画なのです。
映画情報
製作国/日本
監 督/中島哲也
出 演/深田恭子/土屋アンナ
原作は、乙女のカリスマと言われた嶽本野ばらさん。
映画に出てくる、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTは、実在するブランドです。
全然知りませんでした(汗)
ブランドだけでなく、社長・磯部様も実在する方です。
映画の中の磯部様、私は大好きなのですが、本物の磯部様はどう思っていらっしゃるのか、ぜひお聞きしたいところです。
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