異色のドラァグクイーン映画です。
一人の男性が、どう生きていくかを見つけた映画かな。
そして歌が素晴らしい。
とくにラストの、トミーが歌う「ウィキッド・リトル・タウン」から、ヘドウィグの「ミッドナイト・レディオ」への流れが鳥肌立ちます。
かつてこの映画を見た方と感想など語り合えたら嬉しいです。
まだ見ていないという方も、よかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじを含みます。お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』ネタバレ感想
もう忘れちゃったかもという方&まだ見ていない方のために、簡単なあらすじを。
誰が誰のベター・ハーフ?
ヘドウィグは自分の片割れを探しています。
片割れとは、神様に引き裂かれた、もう一人の自分です。
人はもともと頭が二つ、手と足が2組あって、神様に引き裂かれたのだそうです。
だから、私たちは自分の片割れを探すし、探し出したもう一人の自分は、「運命の人」だったり、「ベター・ハーフ」だったりします。
でもトミーは、ヘドウィグのベター・ハーフじゃない。私の感想ですが。
ヘドウィグがトミーにのめり込んだのは確かですし、好きだったのも本当。
トミーだって、ヘドウィグに出会った頃は、めちゃくちゃ恋する少年の顔をしていました。
ヘドウィグが「ウィキッド・リトル・タウン」を歌っているとき、歌い終わってタオルを投げたときの、ヘドウィグを見るトミーの顔。
あんな顔で見られたら、ヘドウィグでなくても、恋しちゃいますって。
さらに、ヘドウィグは、ロックの知識のないトミーにロック講座を開き、二人で曲を作ります。
つまり、愛とか恋とかだけでなく、別の大切な部分も共有したわけで、特別感ありありですよね。
でもね、結局、トミーはヘドウィグを受け入れらなかった。
トミーってキリスト・フリークなんですよね。ヘドウィグを好きになったのは、頭で考えるより先だったのでしょうが、いざとなると、刷り込まれた常識が発動されるというか。
それは仕方ないとしても、もっと穏便に別れることはできなかったのかな?
なぜ、二人で作った曲を自分のものとしちゃったのか、それだけは分からない。
若さゆえ? 若さゆえの残酷さ?
おかげでヘドウィグは復讐の鬼と化しました。
トミーのツアーに付きまとい、彼のツアー会場のすぐ側で、ヘドウィグたちもライブをして回ります。
でも売れまくっているトミーに勝てるわけもなく、ヘドウィグは一文なしとなって街角で客を引くことに……。
なのに、リムジンに乗ったトミーが接触してくるのですよ。
なんなのでしょうね。ほんと、若さって……どうしようもない。
でも、ヘドウィグには、それが幸いして、彼女は一躍「時の人」となる。
そして、完全なるトミーとの別れ。
これはヘドウィグの想像のシーンだと思うのですが、トミーが「ウィキッド・リトル・タウン」を歌います。
でもね、「僕の声を追いかけてみないか」というところで、歌うのをやめてしまう。そして口元が、小さく「Bye」と動くのです。
振られたのはヘドウィグです。でも、この、「さよなら」を呟いたトミーの痛みが、私にまで伝わってくるのです。
トミーは本当に残酷なことを、ヘドウィグにしました。
ちょっとくらい仕返しされたって、文句なんか言えません。
でもね、トミーもまた、深く傷つきました。
ベター・ハーフを失ったのは、ヘドウィグではなく、トミーだったのかもしれないなぁ、なんて思うのです。
ベター・ハーフなんて必要ない
しかし結局のところ、自分の片割れなんて存在しないのです。
恋をしようが結婚しようが、それは一人の人間が、もう一人の人間に向き合っているということ。
当然といえば当然ですけどね。
ヘドウィグもそれを受け入れるしかなかった。
彼女の腰の入れ墨が、ラストでは半分に割れた人間じゃなくなっています。
でも、ヘドウィグは、本当にそれでやっていけるのかな?
夢を見ているほうが幸せってことはあります。
最後の「ミッドナイト・レディオ」は、本当に素晴らしかった。
一人で戦ってきた女性たちを褒めたたえ、自分の目の前にいるみんなも、ヘドウィグ自身も輝く星なのだと歌います。
ヘドウィグはきっと大丈夫、だと信じたい。
イツハクの存在とは?
ここまで、ヘドウィグとトミーの話をしてきましたが、ヘドウィグの現在の夫、イツハクの存在って不思議じゃないですか?
私は不思議でした。
ヘドウィグがトミーのストーカーとなり、トミーに執着の炎を燃やしている間、同じバンドのメンバーとして、いつも一緒にいたイツハク。
ヘドウィグとイツハクは恋人(後に夫婦と判明)のようだし、よく我慢しているなと思っていました。
でも、イツハクからヘドウィグに対する愛情はあまり感じられなくて、彼がヘドウィグのウイッグをかぶろうとするところを見ると、女になりたいのに、そんな自分が認められず、ヘドウィグを通して自己実現しようとしてる人なのかな~、とも。
でも、これ、本来はちゃんと説明があったのです。
カットされた部分に、イツハクもドラァグクイーンだったこと、歌を歌っていたこと、イツハクの才能に嫉妬したヘドウィグが、女装封印を条件に結婚したこと。なぜ結婚かというと、アメリカでの永住権が目的だったとか。
なるほど~。そんな事情があったとは~。
カット版では、そんな具体的なことは分かりませんが、イツハクの苛立ちや、ヘドウィグへの複雑な思いは伝わってきたので、まあいいのかな。
「ミッドナイド・レディオ」でイツハクは、美しい女性になっていましたね。
彼が解放されてよかった。
ヘドウィグも、もしかすると、ハンセルに戻るのかなと思ったのですが、どうなのでしょうね。
ヘドウィグ?ハンセル?も、パーッと解放されたらいいのですが。そうなることを願っています。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ジョン・キャメロン・ミッチェル
出 演/ジョン・キャメロン・ミッチェル/マイケル・ピット
日本での初公開年は2002年です。
またまたイツハクのお話で恐縮ですが、彼はミリアム・ショアという女優さんが演じています。
見ている最中、ぜんっぜん、女性だと気づきませんでした(汗)
たまに声変わりしない男性がいるし、そんな感じの人かと。
イツハクが黒いカツラをかぶっているシーンなんて、男性が女装しているようにしか見えなかったし。
ミリアム・ショア、恐るべし……!
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