カンニング竹山さん扮する2丁目のママ・なっちゃんが突然亡くなり、なっちゃんをめぐってドラァグクイーン達が右往左往するお話です。
完全なるコメディですので気楽に見られる映画ですが、しんみりするシーンもあり、私はぼんやりと我が行く末を考えてしまいましたよ。
というわけで、映画『ひみつのなっちゃん。』の感想を語ってみたいと思います。
「ドラァグクイーンのお話、好きなんだ~」という方も、「ドラァグクイーンが盆踊り?」と思われた方も、よろしかったらお付き合いください。
ただしネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m
『ひみつのなっちゃん。』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
“どう逝くか問題”を盆踊りなど眺めつつ考える映画
映画の主役である、なっちゃん・モリリン・バージン・ズブ子は、最年長でもアラフォーといったところです。
正直、私から見たら大変若い。
なので見ていて、「ああ、若いわ~」と悪い意味で身悶えしてしまったのですが、もうね~、ジタバタしすぎなのですよ、モリリンとバージンとズブ子が。
なっちゃんは映画の冒頭から亡くなっていますので、彼女から身悶えさせられることはありません。
で、なぜバージン達がジタバタするのかというと、なっちゃんが秘密主義者だったからなのですね。
長い付き合いらしいバージンや、店で一緒に働いていたモリリンでさえ、なっちゃんの住所を知りませんでした。
まあ、これはちょっと分かる気もします。なにもクイーンや2丁目の住人でなくても、お一人様の私なども、個人的なことはあまり人に話しません。
それでも年とともに、長い付き合いになる友人や親しい同僚には、必要に迫られ、パーソナルな部分を開示したりします。
なっちゃんは亡くなってしまいましたが、もし、これが入院で済んでいたら、一人暮らしのなっちゃんは嫌でも誰かを頼らざるを得ませんよね。
一人って、元気なうちは気ままに過ごせますが、健康でいられなくなると秘密主義でもいられなくなるのです。ほんと健康って大事です。
その点、なっちゃんはぽっくり逝くまで、人に頼らなければならない事態に陥ることがなくて幸いでした。
が、しかし、残された方は大変なのです。
なっちゃんの逝き方は、正直羨ましくもあるのですが、もし自分がモリリンの立場だったら、かなりしんどいです。
葬儀社の人になっちゃんの住所など訊ねられても何一つ答えられず、「え? 職場の方ですよね? 上司のことですよね?」的なことを言われて、身の置き所をなくすモリリンです。
東京のど真ん中で仕事している葬儀社の人なら、もっと免疫ありそうですけど、違うのかしら?
しかも、なっちゃんは田舎の家族にもカミングアウトをしていないので、モリリンはなっちゃんが隠し通そうとした事実を、最後まで隠したままでいさせてあげようとします。
いやいや、お若いの……。
そこまで、あんたが気にしなくていいのよ~。きっと、なっちゃんも逝った後のことなんて気にしてないわよ~、と思ったのですが、モリリンの気が済まなかったのですね。
で、モリリンに巻き込まれたのが、バージンとズブ子です。
お店にある、なっちゃんがドラァグクイーンであった証拠を隠すのは簡単ですが、田舎から出てくるであろう家族は、もちろん住居にも行くわけで、モリリンたちは、なっちゃんのアパートにも向かおうとします。
ですが、そのアパートを見つけるのに時間がかかり、結局、アパートの部屋に入り込めたところで、なっちゃんのお母さんと鉢合わせしてしまいます。
盛大なネタバレをかましますが、なっちゃんのお母さん、知っていたのですよね。なっちゃんの秘密。
そうでなくても、バージン達のごまかし方がひどくて、単身用のアパートで、せいぜい夫婦ならなんとかという部屋で、モリリンとバージンとズブ子が「ルームシェアしてました~」って、そんな話が通るわけもないです。
お母さんはもちろん何も気づかないふりで、3人をお葬式にご招待します。
ご招待と言うのもおかしいですが、バージンは誘われて嬉しそうだったので、そういう言い方でもいいかなと。
ただ、お葬式は東京ではなく、なっちゃんの故郷である郡上八幡(ぐじょうはちまん)で行われます。
というわけで、男のふりをしたドラァグクイーン3人の珍道中が始まるのです。
このドタバタ珍道中が、映画のメインなわけですね。
でも、映画を見終わって思ったことは、私があの世へ旅立つとき、できれば残された人たちを混乱させないようにしたいな~ということでした。
なっちゃんの人生の終わり方はとても羨ましく、でも、同じ終わり方を望むなら、いつお迎えが来てもいいように、準備と根回しをしっかりやっておかねばなと、片付けられない部屋を眺めつつ思ったのでした。
秘密を抱えて最後のショウへ
さて、なっちゃんの秘密を抱えて、彼女の秘密を守りつつ葬式に出向くことを決めた3人衆。
なっちゃんの秘密を保持するには、3人もクイーンであることは隠さなければなりません。
そう思うと、なっちゃんの秘密は3人の秘密でもあるわけですね。
でもですね~、この3人、ほんと危なっかしくて、「それで本当にバレないの!?」という能天気さ。
東京から郡上八幡までは車で行くので、なっちゃんちの近くまではオネエのままでもいいっちゃいいのですが、もうちょっと危機感持ちなさいよ~って感じです。
ズブ子なんて、テレビでオネエタレントをやっていて、途中のパーキングでさっそく身バレしていましたし。
ところで、このプチ旅行、本当に行くかどうかで、最初は意見が分かれたのです。
ズブ子は行く派、モリリンは行かない派で、最後はバージンの決定に従うという感じでした。
で、バージンは行くことに決めたのですが、決め手は、なっちゃんの最後のショウ(お葬式)を見届けることで何か変わるかもしれないという助言でした。
バージンはかつてステージで踊っていたのですが、なっちゃんが亡くなった頃には、ただのOLをやっていました。
もう一年ほどステージには立っていなかったようです。なにがあってそうなったのかは分かりませんが、自分のアパートで一人ダンスの練習をしているくらいですから、嫌いになってやめたわけではないのでしょう。
でもステージに戻るきっかけもないみたいで、ショーパブのママが、これがきっかけになればと、郡上八幡行きをすすめたのです。
結果として、いい旅になったようです。お葬式はバージンのせいでグダグダに終わりましたが、お母さんは喜んでくれました、たぶん。
お葬式が終わり、盆踊りの会場で、バージンはなにかを見つけたような顔をしていましたし、盆踊りの風景は夜だというのに清々しく、秘密は秘密のままにしておけませんでしたが終わりよければすべてよしかな~と。
私は郡上八幡に行ったことがないのですが、風景は懐かしくも清々しく目に映り、その清らかさにクイーン達のドタバタも浄化されたような気がします。
ところで、“クイーン達のドタバタ”に、若い人はなにも感じないかもしれませんが、初老以上は「ああ、若さって……」と頭を抱えるシーンがいくつかあるかもしれません。
小さなことなのですが、車の中でズブ子が打ち明け話をしたくてしたくて、「なんで溜息ついてのか、訊きなさいよ~」という感じで溜息をつきまくるシーンがあり、「その“察してちゃん”懐かしい~」とイヤ~な気持ちで思ったり。
そんなね、悪い意味で、胸がきゅ~っとつねり上げられるような心持ちになるシーンがいくつかあるのです。
若い頃のあれこれを思い出させてくれるクイーン達の旅模様に、ドブに捨ててしまいたい黒歴史をお持ちの方は覚悟がいるかもしれません。
映画情報
製作国/日本
監 督/田中和次朗
出 演/滝藤賢一/前野朋哉/渡部秀/カンニング竹山
カンニング竹山さんは写真とお棺の中だけの出演でしたが、竹山さんのオネエが十分想像できる不思議。
そしてテレビでもお馴染み、本物のクイーンであるアンジェリカさんも出演されていました。
ほんの少しの出演でしたが、本物をもってきちゃったら、役者さんがかすんでしまいますもんね。
次回はアンジェリカさん主演で、すべて本物のオネエで固めた映画などどうでしょう、監督さん?
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