肉屋の夫婦が、ヴィガーンたちをお肉にして売る映画です。
グロいシーンは明るいBGMのおかげで救われます。
そう、この映画はコメディなのです。
登場人物の誰にも共感できませんが、肉屋の妻が最高に面白いのです。
というわけで、映画『ヴィーガンズ・ハム』の感想を語ってみたいと思います。
「ホラー・コメディ好きなんだ~」という方も「ヴィーガンとお肉屋さんの闘い? 興味ある~」という方も、よろしかったらお付き合いください。
ただし、ネタバレ・あらすじ・グロを含みます。
お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m
『ヴィーガンズ・ハム』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
ヴィーガンVSサイコパス 本物の狂気はどっちだ!?
最初にも書きましたが、登場人物の誰にも共感できないです。
私はヴィーガンの方々を否定するつもりはありませんが、映画に出てくるヴィーガンたちは押しつけがましく、批判がましく、好感は持てません。
重ねて言いますが、ヴィーガンを否定するつもりはありません。が、しかし、“過ぎたるは及ばざるがごとし”じゃないのかな~、とか、植物なら○してもいいとか、傲慢だよな~と感じます。
ですが、口には出しません。主義主張なんて人それぞれだし。
他人に迷惑を掛けないなら、勝手にしたらいいと思うのです。
でも、如何せん、この映画に出てくるヴィーガンたちは迷惑かけまくりなのです。
彼らはヴァンサンとソフィーの店に、動物の覆面を被って襲撃をかけます。
ペンキは撒くわ、物は壊すわ、ヴァンサンに暴力を振るうわで、完全なる犯罪行為です。
主義主張のためなら犯罪も良しとするなんて考え方、どうやったら共感やら好感を持つやらできるでしょう?
もちろんヴァンサンたちだって怒り心頭です。
しかし、なんだか、この夫婦にも違和感を覚えます。襲撃された後に、労りの言葉を掛けあうなどの行為もなく、お互いに対する思いやりのカラケも感じないのですよ。
実は、こうなる前から、ヴァンサンとソフィーの仲は冷えきっていました。
商売では仕入れの支払が滞っていて、そうなると夫婦仲も当然ギクシャクしますよね。会話から察するに長い間レスのようです。
友達夫婦の家で、それらを愚痴ったソフィーは、情けなさに涙してしまいます。
この友達夫婦もですね、本当に友達なの!? と疑問に思うほど、ソフィーたちにマウントを取ってきます。
思わずソフィーの肩を抱いて「大丈夫?」と言いたくなります。
ですが、彼女を気の毒に思うのもここまでです。
友達夫婦宅からの帰り道、偶然にも店を襲撃したヴィーガンの1人を見つけるのです。
ヴァンサンが車を運転しているときで、相手は自転車でした。
ヴァンサンは、痛い目をみせてやるくらいにしか思っていなかったのですが、勢い余って、ヴィーガンを轢き○してしまいました。
そりゃね、車で思い切りぶつかれば、そういう結果にもなるでしょう。
ヴァンサンは途方に暮れ、ソフィーに「どうしたらいい?」と訊ねます。
ソフィーにも分かるはずがありません。でも、ここで、彼女の趣味がちらりと顔を出すのです。
ソフィーはシリアルキラーの番組を見るのが好きでした。そして、ヴァンサンに、あるシリアルキラーの真似をしろといいます。
そのシリアルキラーは、○した人をバラバラにして捨てたのですね。
で、他に方法もなく、ヴァンサンはソフィーの言うとおりにします。いや、しようとしたのです。
肉屋ですから、遺体を解体するまでは、道具も場所もあります。ただ、それらを捨てるとなると勝手が違います。
だいたい、その手のドラマを見ていても、捨てたところから足が付くことが多いですよね。少なくとも60kgとか70kgの肉です。それを誰にも見られないようにあちこちに捨てるとか、至難の業ですよ~。
そう思うのは私だけでなくヴァンサンも一緒でした。で、ヴァンサンはヴィーガンの肉をハムにしてしまったのですね。
ある意味、いいアイディアだったと思います。そのハムを店頭に出さなければの話ですが。
肉の処理に疲れたヴァンサンは朝寝坊をしてしまって、そんな事情を知らないソフィーがヴィーガン・ハムを売ってしまったから、さあ大変。
いや、ここでやめておけば、まだよかった。ここまでなら、まだ引き返せました。
ヴィーガン・ハムを食べた客が絶賛したこと、ソフィーも試食をして大変に美味だったことから、ソフィーはこれからもヴィーガン・ハムは売ろうと考えました。
しかし、売るには、肉を仕入れなければなりません。
はい、ソフィーはヴァンサンを盛大に焚きつけます。
友達にマウントを取られて涙を流していた、あの弱々しい女性はどこにいったのでしょう?
素直なヴァンサンを叱ったり励ましたり、引いたり押したり、獲物を上手に誘導したり。徐々に彼女の中のサイコパスが開花していくのです。
そして、ヴィーガンを狩り続けるうち、ソフィーは絶対に捕まらないと思い込むようになっていきました。
シリアルキラーには、往々にして、こんな精神状態になる人がいるみたいです。
しかしヴァンサンは違いました。
あるイラン豚を解体しているとき、包丁が使い物にならないほど欠けてしまったのです。
根っからの職人であるヴァンサンは不安になったのでしょうね。職人さんって、縁起を担ぐことが多いですから。
そして不安は的中し、そこからヴァンサンとソフィーは転落していきます。
結果2人は捕まり、ヴァンサンとソフィーは終身刑となりました。
で、あの弱々しかったソフィーが、完全に変容してしまったと思うのはここです。
ソフィーは法廷で、「取り戻したいものは?」と尋ねられ、ただ一言「ウィニー」とだけ答えたのです。
ウィニーとは、ぽちゃぽちゃとした若い白人男性で、ヴァンサンたちの犠牲となったヴィーガンの1人でした。
ヴァンサンは職人として、ソフィーは肉好きとして、ウィニーを大変気に入っていました。
取り戻したいものが“かつての平穏な日々”とか“娘からの信頼”ではなく、あの美味しかった“ウィニー”なんだとしたら、いやもう、理解不能な世界にソフィーは行ってしまったんだな~、と思うしかなかったのでした。
はい、というわけで、ソフィーが優勝です。
ウィニーを食べた人々は
ウィニーを食べたのは肉屋の夫婦だけでなく、イラン豚を求めて店に来た人々もでした。
ウィニーは最高級だったのでしょうが、とにかくイラン豚は好評で、それだけを目当てに、店には毎日人々が列を作るほどでした。
中でも常連の警察官は熱狂的なファンでした。
ヴァンサンがイラン豚を解体中にも彼がやってきて、作業場に押し入りそうになったこともありました。
これが例の包丁が欠けたときのことで、幸い(?)にも、このときはバレずに済んだのですが、これをキッカケにして、ヴァンサンは犯罪から手を引こうとしたのです。
時すでに遅しで、結局はすべてが明るみに出てしまうのですが。
とまあ、肉屋夫妻は捕まり、シリアルキラーの番組にネタを一つ提供したわけですが、話はこれで終わりでしょうか?
イラン豚を食べた人達は、いったいどうなったのでしょう?
「どうもこうも、豚肉も牛肉も、もう食べられなくなったんじゃない?」ですとか、「肉どころか、しばらくは食事のたびに吐いていたりして」なんて思いますよね。
でも、ですよ。
ソフィーが取り戻したいものを「ウィニー」と答えるほど、美味しいイラン豚です。
時が経ち、傷が癒え、普通に食事ができるようになった人々は、あの味をもう一度味わいたいと思うことはないのでしょうか?
あの熱狂的にイラン豚のファンとなった警官は、その味を懐かしむことはないのでしょうか?
ヴァンサンとソフィーは、最後に再びヴィーガン達に襲われたのですが、その時は店ではなく、2人の命を狙って襲われました。
最初にソフィーが捕まり、ヴァンサンと、飼い犬のペペールが助けに駆けつけたのですが、ペペールはヴィーガンの股間に食らいつき、そのまま、そこを食べ始めてしまったのです。
ペペールも日頃からイラン豚のお裾分けにあずかっていたので、イラン豚のファンだったのでしょう。
私は映画の最初で、この犬がヴァンサンたちを食べてしまうのかな~と想像していましたが、それは大ハズレでした。
なかなかに忠誠心のある犬だった。飼い主に似ずええ子や。
で、こんなにも熱狂的なファンを作ってしまったイラン豚。
もしやもしや、ヴァンサンたちの出所を、心より願う人達が出てきても不思議ではないし、ヴァンサンたちができないのなら、自分でどうにかしてしまおうというファンも、いつか出てくるのかもしれないな~と、なんとなく不気味な想像もさせる映画なのでした。
映画情報
製作国/フランス
監 督/ファブリス・エブエ
出 演/ファブリス・エブエ/マリナ・フォイス
日本での公開は2022年です。
初めてこの映画のあらすじを見たとき、とんでもなく既視感がありました。
簡単なあらすじだけ読むと、映画『地獄のモーテル』を彷彿とさせるのです。
でも、本編はまったくの別物ですから、似たような話を見てもな~と思われた方も、安心してご覧くださいませ。
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