老いても楽しめる、ギャグ漫画ならぬギャグ映画です。
もし、パッと見で、この映画を敬遠されている初老諸姉がいらっしゃったら、もったいない話です。
というわけで、映画『地獄の花園』の感想を語ってみたいと思います。
この映画、脚本は芸人のバカリズムさん。
「バカリズム、大好きなの!」という方も「ヤンキー映画、実は好き……」という方も、よろしかったらお付き合いください。
ただしネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m
映画『地獄の花園』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
爆笑!からの~…感動!からの~(笑)
もうね、徹底してギャグ映画です。
ギャグですが、大人が飽きることのないように、ストーリーが何層にもなって展開していきます。
この映画の語り部の直子は、三富士(みつふじ)という一般企業に勤めています。
三富士の裏OL界を牛耳っているのは、「狂犬紫織」、「大怪獣悦子」、「悪魔の朱里」というOLたちです。
ネーミングからしてワクワクしますね(笑)
そして、3人のうち、悪魔の朱里が他の2人を制圧するのですが、そこにやってきたのが中途採用の蘭です。
蘭は群れるのが嫌いで正義感が強く、喧嘩上等ではありますが、自分から喧嘩を売ったことはありません。
喧嘩を売ってきた相手でも、潔く負けを認めれば、その後は仲良くもなります。
ヤンキーOLとも、普通のOLの直子とも、分け隔てなく仲間として付き合います。
天真爛漫ないい子で、漫画の主人公そのものです(笑)
そんな蘭の存在を、他社のヤンキーOLの方々が放ってはおきません。次々と、腕に覚えありのヤンキーOLたちが挑んできます。
正々堂々と挑んでくるOLもいれば、直子を人質にとって、蘭を呼び出すOLたちもいました。
人質を取るという卑怯な手を使ってきたのは、一部上場企業・トムスンのヤンキーOLたちでした。
ヤンキーとはいえ一部上場企業なのに、やることが汚い。
いや、一部上場だからというべきでしょうか? 目的のためなら手段を選ばず?
自分たちは人質をとった上に、大勢で待ち構えているのに、蘭には一人で来るように言います。
汚~い、と思いますが、確実に勝ちにいっていますよね。さすがです。
話はちょっと逸れるのですが、このトムスン、お局率が高いです。
やはり一部上場なだけあって、簡単には辞めないよね~と、変なところで感心してしまいました。
話は戻りまして、蘭は友達である直子ちゃんを助けるために、一人でトムスンのヤンキーOLたちの中に飛び込んでいきます。
そして、漫画の主人公なら、ここで絶対勝ちますよね。主人公なら当然です。
当然と思ったのですが、しかし蘭ちゃん、トムスンの頭(あたま)である赤城とやり合うどころか、赤城の手下の1人にやられてしまいます。
直子も「え~~~~~!」って、心の中で叫びますよ。
「なに!? その中途半端な負け方!!」と、直子は案外、容赦ないです。
そして蘭がやられてしまい、「どうなるの!?どうなるの!?」と思っていると、三富士の真のラスボスは、実は直子だったのだと分かります。
どヤンキーの家系に生まれた直子は、悲しいほどに(笑)喧嘩が強かったのです。
直子はすごかった。
あっと言う間に、赤城を含め、全員を倒してしまいました。
でも、直子は普通のOLでいたかったので、蘭が気絶しているのを幸いに、黙ってその場を後にします。
朱里に電話をし、蘭のことを頼みます。
朱里たちはもちろん、トムスンのOLたちを叩きのめしたのは蘭だと思っています。
しかし、その日の夜から、蘭は仲間の前から姿を消すのです。
蘭はいなくなりましたが、赤城たちは、今度は直接、三富士に殴り込んできます。
一度はやられてしまいましたが、実はトムスンには、赤城を超える伝説のラスボスがいたのでした。
その名も、「地上最強のOL・鬼丸麗奈」!!
やだ、楽しみ(笑)
しかし、三富士の頭である蘭はいないし、鬼丸さんが出てくるまでもなく、直子のいない三富士OLたちではトムスンOLたちに太刀打ちできません。
実は、ここからの、三富士OLたちの行動に、ちょっとグッときます。
赤城は直子を出せというのですが、朱里は、自分たちの頭は蘭だ! 蘭がいない以上、おまえらの相手は私らの仕事だ! 的なことを叫んで向かっていくのです。
トムスンのほうが人数も実力も上なのですが、負けても負けても、朱里たちは向かっていくのです。
そして、ついに、朱里たちを助けるため、堅気の直子が出てきます。
直子ちゃん、逃げませんでした。
堅気とヤンキーという違いはあれど、同じ会社の仲間のため、直子ちゃんは戦います。
最初は鬼丸さんに押され気味でしたが、戦いの中で、鬼丸さんの攻撃パターンを見抜き、倒しにいく直子。
鬼丸を倒した直子に、素直に称賛の声を上げる朱里たち。
ここらで、不覚にも私は感動してしまうのでした。
OLの生きざま! 逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ! 逃げちゃダメだ!(笑)
さて、思わず感動しちゃったり、だけど笑いだけは忘れないこの映画において、蘭の不在だけは笑えませんでした。
まさか逃げたまま?
な~んてことはなく、蘭は蘭で悩み、落ち込んでいたのですね。
「人には誰もが、一つくらい秀でたものがある」と蘭は言います。
蘭にとって、その「一つ」が喧嘩だったのです。
喧嘩が強いということが蘭のアイデンティティで、心の拠り所だったわけです。
ついでに、正義感も元々強かったのかもしれませんが、弱気を守って、それを鼻にもかけない、天真爛漫で憎めない主人公役を、一生懸命に演じていたのです。
だから、トムスンのOLに負けたことも、そのOLを、よりにもよって普通の子と思っていた直子が倒したという事実にも、打ちのめされたのです。
いや~、そもそも、「誰にでも秀でたところがある」説がもうね、この前提が違っていると思うのですよ。
一つも秀でたところがない人もいます。というか、当たり前に大勢います。
でも、それでもいいのではないでしょうか?
真面目に頑張って生きていたら、それだけで人間はOKなのです。
仕事が終わって、ビールを飲んで、「ああ、美味しいなあ~」と思えたら十分、と考えたらいいのですよ。
それを、「誰かより上!」という考えが必要だと思っているのなら、そりゃ、生きていくのがしんどいです。
案の定、蘭ちゃんも、負けたあと、仕事にいけなくなってしまいました。
しかし、ガッツのある蘭ちゃん、なんと「日本最初のOL・七瀬小夜」に弟子入りします。
日本最初のOLって(笑)
そのネーミングには、なんの迫力もない(笑)
しかし、まあ、蘭は強くなりまして、さっそくトムスンに乗り込み、トムスンのお局たちを倒したあと、一気呵成に三富士へと向かいます。
ずいぶん間違った方向に頑張っちゃってますが、でも逃げなかった蘭ちゃんは正解だと思います。
だって、バックレで辞めるとか、次の就職が難しいですしね……。
というのはさておき、せっかく待っていてくれる仲間や友達がいるのに、逃げるのはもったいない。
だから、戻ってきてくれて良かった。
結局、蘭は負けてしまうのですが、それはいいのですよ。
だって、喧嘩に勝つことだけが人生じゃないですから。
蘭にはそう言ってくれる、素敵な彼もいるのですから。
そうです、蘭ちゃん、社内恋愛していました。
な~んだ、けっこう普通のOLなんですね、蘭ちゃん。
喧嘩には負けたけど、待っていてくれた仲間と、OLは喧嘩なんか強くなくていいんだよと言ってくれる彼がいて、蘭ちゃんの未来は明るいですよ。
かわいそうなのは直子です。
なりたくもない地上最強のOLという肩書を背負わされ、実は「この人いいかも」と思っていた男性が、蘭の彼だったという衝撃の事実。
これ、直子の一人負けというべきか、殴られ損というべきか……。
最後の最後まで笑わせてくれる、見事なギャク映画なのでした。
映画情報
製作国/日本
監 督/関和亮
出 演/永野芽郁/広瀬アリス/菜々緒
最初に書きましたが、脚本は芸人のバカリズムさん。
また、出演は他にも、トムスンの赤城涼子役に遠藤憲一さん、日本最初のOL役に室井滋さん等々、実に豪華。
個人的には、地上最強のOL・鬼丸麗奈役の小池栄子さんがよかった。原作はないのに、まるで、「原作通り!」と言いたくなるほどの素晴らしさでしたよ(笑)
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