ネタバレ・あらすじを含む感想です。
これがヴィンセント・ギャロだ! という映画です(笑)
「この映画見たわ!」「懐かしい!」という方も、「見たことないわ」という方も、ご一緒に、ヴィンセント・ギャロの世界を堪能いたしましょう。
ネタバレを含みますので、お嫌な方はここまででお願い致しますm(._.)m
『バッファロー’66』ネタバレ感想
みんな変で、それでも生きてる!
出てくる人が、みんな変です。
刑務所から出てきたばかりのビリーは、刑務所から両親の家へ向かいます。
それはいいのですが、ビリーは両親に嘘ばかりついています。
刑務所に入る前は、「結婚して政府の仕事で遠くに行く」。
帰ってきてからは「高級ホテルに泊まっている」「妻は病気で行けない」。
そんなことを言われたら、親としては、「じゃあ、私たちがホテルに顔を出すわ」とか「奥さんも連れていらっしゃい」ってなりますよね。
もれなくビリーもそんなことを言われて、断りきれず、妻を連れて行くと言ってしまいます。
しかし、妻どころか、彼女さえいないビリーはどうしたかというと、たまたま、その場に居合わせたレイラという女性を拉致。
ほんと、最低男ですよ、ビリー。
レイラをほとんど横抱えにして、耳元で、顔をずたずたにするぞと脅しつけます。
そしてレイラの車に乗り込み、自分で運転しようとしますが、マニュアル車なので運転できません。
どうやらビリー、オートマ限定らしいです(笑)
なので、ただレイラに、「おまえが運転しろ!」でいいと思うのですが、「俺がマニュアル車を運転できないのは、普段高級車に乗っているからだ!」ですって。
こだわるところ、そこ!? しかも、その言い訳、意味不明です。
拉致されてしまうレイラは本当に災難ですが、彼女も変です。
恐怖から犯人に従ってしまうのは分かるのですが、どこか能天気です。
ビリーから、妻の振りをして、両親の家で一緒に食事をするよう強要され、解放してもらうために、レイラはその役割を引き受けます。
でも、道中のレイラのセリフが、「ご両親は菜食主義? 私、お肉苦手なの」ですよ。
ストックホルム症候群とは違う気がします。
なんというか、”能天気”という言葉がしっくりきます。
そして、ビリーの両親もまた、変です。
この両親、残念ながら、息子に対する興味はあまりないようです。
事前に、行くことを伝えていたのに、呼び鈴を鳴らしても、母親はテレビに夢中で気づきません。
ドアを開けた父親は、息子に入れとも言わず、妻に、「息子だ」と声をかけるだけ。
それは、ビリーがムショ帰りだからではなく、両親は、息子が子供の頃から、愛情をかけてはいませんでした。
機能不全家族というのでしょうかね?
子供のビリーがアレルギー反応を見せても、心配しない母親。ビリーのかわいがっていた犬を、癇癪の果てに(たぶん)殺してしまう父親です。
レイラや親友に向かって、偏執的にしゃべり続けるビリーを見ていると、まともな両親に育てられていたらと、別世界のビリーを想像して止まりませんでした。
私としては、生まれ落ちた瞬間からの悪人というのも、この世には存在すると思っています。
でも、ビリーは、もともとは素直で、優しい子だったんじゃないでしょうか。
親が普通の親だったら、きっと別の人生があったはずです。
でも、親もまた、その親の犠牲者かもしれず、簡単に親を責めるわけにもいかないのが、つらいところですねぇ…。
それと、忘れてはならない、ビリーの初恋相手のウェンディ。
この人は変というより、ゲスです。なんでこんな女性にビリーは一筋だったのか分かりません(泣)
レイラはビリーのことを「いい人すぎる」と言いました。
それなのに、ビリーは不幸せで、ウェンディはビリーよりまともな生活を送っている。本当に理不尽。
でも、これが現実。それでも生きています。
ビリーは「生きていけない」なんて呟きますが、そんなことはありません。
だって、生きてるじゃない。それでも、あなたは生きてるじゃない。
しかも、目の前には、「あなたはいい人」と言ってくれる、かわいい女の子がいるよ。
自分は変われる。生きていけると、自分が信じさえすれば、生きていくことは、そんなに難しくない…と思うのですが、どうでしょうね?
コントロール・フリークでもいいじゃない ヴィンセント・ギャロの世界
そんなどうしようもない、でも、どこにでもいそうな人たちを描いた『バッファロー’66』ですが、昔に見た印象は、「お洒落~」って感じでした。
主役のビリーを演じているヴィンセント・ギャロですが、監督、脚本、そして音楽まで自分で担当したそうです。
すごい才能と言うか、偏執狂と言うか、迷うところだなぁ。
昔々、見たか聞いたかした話では、ギャロさんはめちゃくちゃコントロール・フリークだとか。
もちろん私に真偽の程は分かりませんが、この映画を見るかぎり、あり得るな~とは思います。
ビリーの実家でのカラメ割り?というのかな? 撮影の仕方とか、時々登場人物にスポットライトを当てるとか、どんな意味が込められているのか分からないけど、スポットライトのシーンはけっこう好きです。
エンドロールさえ、個性を出さなければ負けだ!という感じ。
この演出が鼻につくという方もおられるかもしれませんが、これはこれで楽しめばいいと思います。
めちゃくちゃなビリーを描くには、このくらいの演出があったほうがいい。
じゃないと、ハッピーエンドで終わる『タクシー・ドライバー』みたいな感じになりそう。(タクシー・ドライバーもいい映画ですよ!)
思いっきりネタバレさせていますが、最後は、ビリーとレイラは、ハッピーエンドで終わります。
「エンド」のその後、なんとな~く、レイラに愛想を尽かされて、捨てられるビリーを想像してしまいましたけどね。
でも、たった一度でも成功体験があれば、人って変われるんじゃないでしょうか?
その後のビリーを見てみたいなあ。
どんな形であれ、幸せになってくれていたらいいな。
みんなみんな、幸せになっているといいな。ウェンディを除いてですけど。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ヴィンセント・ギャロ
出 演/ヴィンセント・ギャロ クリスティーナ・リッチ
日本での初公開年は1999年です。
ビリーに、友達の罪をかぶれと言ったノミ屋のヤクザは、ミッキー・ロークでした。気付かなかった…。
ボーリング場の受付の男性、ハスキーボイスでカッコいい~と思っていたら、2019年にお亡くなりになっていました。
ジャン=マイケル・ヴィンセントという役者さんです。
ご冥福をお祈りいたします。
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