ゾンビとは早く動けるものなのでしょうか?
「実在しないものに定義を求めないでよ」なんて言わず、ここはひとつ想像してみてください。
他のゾンビ映画では、戦士のように強いゾンビ軍団が出てきたりしますよね。
それはそれで面白いのですが、ゾンビは死体ですから、体は腐っていくばかり。そうそう早くは動けないと思うのです。
私はやっぱり、ままならない体を引きずりながら歩くゾンビが愛しい。
この『ロンドンゾンビ紀行』には、そんな低速歩行のゾンビが山盛り出てきます。
コメディであり、ドラマもあり、怖がって楽しめる映画です。
最近、笑えるホラー映画を見ていない初老の皆様、この超低速ゾンビ映画を、ご一緒に楽しみましょう。
ただしネタバレを含みます。お嫌な方はここまででお願いしますね。
『ロンドンゾンビ紀行』あらすじ
ロンドン郊外に高級マンションが建設される。
そのため、建設予定地にある老人ホームも取り壊れることとなった。
老人ホームには、テリーとアンディ兄弟の祖父も入所していた。
老人ホームが取り壊されると、祖父は遠くのホームに行くしかない。
この街で育った祖父を救うため、兄弟は銀行強盗を決行。
仲間には従姉妹のケイティ、少々マヌケな強盗犯デイヴィ、イカレているけれど銃を持っているミッキー。
銀行では現金を手に入れることに成功するが、銀行を出たところで、さっそく警察に包囲されてしまう。
しかし、そのタイミングで街にはゾンビが溢れ、警察官もゾンビに襲われる。
実は、マンション建設予定地に封印された墓があり、墓をあばいたことで、ゾンビが増殖することとなったのだ。
兄弟と従姉妹のケイティ、そして銀行で人質にされたエマも、兄弟たちの祖父を助けるため、老人ホームへと向かう。
『ロンドンゾンビ紀行』ネタバレ感想
ゾンビはすでに実在している? エマの言葉に納得する私たち
ゾンビとは、なぜこんなにも愛されているのでしょう?
私もゾンビ映画が好きで、若い頃は、たまに映画館で見たりもしました。わざわざ深夜帯に行ったりして。
そして、今や私は初老となり、この年月の間も、ゾンビ映画は作られ続けてきました。
おかげで、映画の中の登場人物たちは、すぐに、街を徘徊(はいかい)する化け物がゾンビだと分かったわけです。
銀行から、強盗団が人質を盾(たて)に、意を決して出てみると、パトカーはあれど警官の姿はなく、砲撃された後のような街の様子です。
よく見ると、あちらにもこちらにも、化け物の姿がある。
呆然とする強盗団ですが、従姉妹のケイティが「ゾンビーズ」とつぶきます。
さすが、理解が早い。
その後、強盗団と人質2人は、テリー・アンディ兄弟の家(なのかな?)に到着。
閉鎖された工場のように見えます。広くて、無駄にスペースがあり、門を占める前に、すでに何体かのゾンビが入り込んでいました。
ミッキーが銃で撃つのですが、腕や足を狙うため、ゾンビはいつまでも向かってきます。
そこで人質のエマが、「頭を狙うのよ」と言うのです。
ミッキーは腹立たしそうに、なぜ分かるのかと問い返します。
エマの答えは、「常識よ」。
そうよねぇ…常識よねぇ…と、映画を見ている多くの人が納得したと思います。
私も納得したうちの一人です。
もう私たちは、ゾンビの弱点がどこか知っているのです。常識として(笑)
若い人たちだけじゃないですよ。
老人ホームにいるおじいちゃんだって、すぐにゾンビが分かります。
ハミッシュという耳の遠い老人が、ホームの庭で昼寝をしていました。
回りはゾンビだらけなのですが、ハミッシュは呑気に寝続けています。
アンディたちの祖父レイが、窓からハミッシュに呼びかけますが、耳が遠いハミッシュはレイの言っていることが分かりません。
レイに「後ろにゾンビが! 走れ!」と言われ、ようやく聞き取れたハミッシュは笑いながら振り返るのですが、一目で「あ、本当にゾンビだ」と気付いて、逃げ出すのです。
このシーン、公開当時も話題になりました。
ハミッシュは足も悪くて、歩行器を使っています。そのハミッシュと超低速デッドヒートを繰り広げるゾンビたち。
歩行器のおじいちゃんといい勝負なんて、『ロンドンゾンビ紀行』のゾンビたちがどれだけ低速なのか、お分かりいただけると思います。
でも、そこがいい。ゾンビらしい。
というわけで、ことほど左様に、ゾンビの存在は私たちに浸透しているわけです。
不思議ですね。なぜ私たちは、こんなにもゾンビが好きなのでしょう?
自分でも分かりませんが、これから先も、時々無性にゾンビ映画を見たくなることは間違いないと思います。
ゾンビよりも厄介な人々 それでも人っていいものです
この映画の登場人物は、みんな癖が強いです。
銀行強盗を考えるテリー・アンディ兄弟もたいがいですが、二人の祖父レイも口が悪く、口を開くと文句や説教。
同じホームに入所している老人も、訳の分からない駄洒落ばかり言っているエリックや、近隣の女性を覗き見しているハミッシュはかわいいほうです。
老人ホームに暮らしていながら、組織とつながりがあるんだ、おまえもおまえも始末してやるぞなんて言うダリルは、もうね……。
私の祖父なら大喧嘩しているところです。
根底には貧困という問題があるのだと思いますが、コメディですから、「そんなこと言っても始まんねぇだろ」的な勢いがあります。
テリーとアンディは、じいちゃんの老人ホームが危機だ。金はない。よし銀行を襲おう!となる。
老人たちはゾンビに囲まれキッチンに籠城。
誰かが助けに来てくれると言うおばあちゃんに、年金暮らしは自分でどうにかするしかなんだ! 戦おう!というレイじいちゃん。
レイじいちゃんの言葉は、初老の私には響きました。
貧乏な年寄りは自分で自分を守るしかないんだな~。泣ける。
でも、レイじいちゃんにはいい孫たちがいます。そりゃ銀行強盗はいけませんが、すべてはじいちゃんを助けるためでした。
そして、老人たちも、テリーたちと一緒に戦います。お互いを助けながら、最後には船で街を脱出します。
みんな無事です。よかった。コメディですからね、最後は笑って終わりたいです。
最後の最後、レイじいちゃんの地元愛が炸裂(さくれつ)する演説もあり、なかなか感動的でした。
ただ、最後に、船からゾンビを撃ちまくるレイじいちゃんですが、その人たちも、元は同じ街の人たちじゃないの?(汗)と思ったことは、心にしまっておくつもりです。
映画情報
製作国/イギリス
監 督/マティアス・ハーネー
日本での初公開年は2013年です。
原題は『Cockneys vs Zombies』です。
「Cockneys」の意味は、ウィキペディアによりますと、「イーストエンド地区でロンドンなまりの英語を使う労働者階級」という意味だそうです。
日本に置き換えてみると、『江戸っ子対ゾンビ』みたいな感じですかね~?
コメント