映画『パレードへようこそ』ネタバレ感想 敵の敵は味方!と考えたマークは正しかったのか?

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サッチャー政権下であった実話を元にした映画です。

ゲイの活動家であるマークが「敵の敵は味方!」と考え、手を差し伸べた相手は炭鉱夫だったのですが、これって正しい考え方ですか?

結論から言うと正しい考え方でした。敵の敵は味方となりました。しかし強烈な紆余曲折があったのです。

というわけで、映画『パレードへようこそ』の感想を語ってみたいと思います。

「実話だけに切ない話よね~」という方も、「この映画、音楽が話題になったよね~」という方も、よろしかったらお付き合いください。

ただし、ネタバレ・あらすじを含みます

お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m

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『パレードへようこそ』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。

20歳の誕生日を迎えたジョーはゲイ・パレードを見に行き、そこで知り合った活動家のマークたちと、ストライキ中の炭鉱夫を支援する募金活動に参加することとなった。しかしゲイ団体からの支援と分かると、炭鉱の労働組合は寄付を拒否した。唯一、勘違いからウェールズのオンルウィン村が受け入れてくれたが、ジョーたちが喜び勇んで村へ向かってみると、そこには歓迎ムードとはほど遠い空気が漂っていた。

敵の敵は味方!と考えたマークは正しかったのか?

この映画の原題は『Pride』(プライド)といって、もしかすると、最近はこの題名を見ただけで、LGBTの映画かなと分かる人もいるかもしれません。

ですが邦題の『パレードへようこそ』だと分かりにくいですよね。

この映画の主人公は、ゲイであることをひた隠しにしているジョーだったり、ゲイの活動家のマークだったりしますが、蔭(?)の主役は炭鉱で働く炭鉱夫やその家族です。

「なんでゲイと炭鉱夫が主役なの?」と思いました?思いましたよね?

これがマークの「敵の敵は味方」から始まったことなのです。

ゲイであるマークからしたら、ゲイの敵は「サッチャーと警官」で、1984年現在、国家権力を相手にストライキをしている炭鉱夫たちの敵も「サッチャーと警官」です。

ということは……敵(サッチャーと警官)の敵(炭鉱夫)だから、炭鉱夫は俺たちの味方じゃん!となったわけです。

マークのこの思いつきから、彼はゲイ仲間に呼びかけて、ストで困窮している炭鉱夫たちへの寄付を募ります。

ただね、私はイギリスの世情も炭鉱ストライキのこともよく知りませんが、ゲイと炭鉱夫=労働者って、水と油ってイメージです。

事実、マークたちが寄付をしようと炭鉱労働組合に電話をしますが、僕たちゲイの団体で~と名乗ったとたん、電話はガチャ切りされてしまいます。

いや、ガチャ切りはないですよね。でも、それだけ嫌われているのです。

しかも、嫌われているのは逆もまた然りで、ゲイたちもマークの呼び掛けにそっぽを向きます。

サッチャー時代の炭鉱ストライキは、1984年から1985年にかけてです。今よりずっとゲイに対する風当たりも強かったのです。

そりゃ、自分たちを石もて追ってきた相手に手を貸したいとは思いませんよ。

なので、マークの立ち上げた支援団体LGSM(レズビアンズ・アンド・ゲイズ・サポート・ザ・マイナーズ)は、10人にも満たない人数でスタートしました。

名前にレズビアンと入っていますけど、女性はたった1人で、しかも、その1人のステフからは団体名を「ダサッ」って言われてましたけどね。

やっぱり、敵の敵は味方なんて、そんな単純にはいかないのです。

ただ、言い出しっぺのマークは超絶ポジティブ。めげない、泣かない。とにかく寄付を募り、それを組合が受けてくれないなら直接炭鉱の町なり村なりに届ければいいと、電話を掛けまくります。

そして、おばあちゃんが電話に出た炭鉱の村・オンルウィンで、ようやく受け入れてもらえたのです。

電話を受けたおばあちゃんはグウェンと言いますが、グウェンは耳が遠かったのかもしれません。村を代表してロンドンへやってきたダイは、LGSMのLをロンドンの略だと思っていました。伝言ゲームの失敗例みたいですね。

でも、おかげで取っ掛かりができました。そして、顔を突き合わせて話してみれば、ただの人間と人間でした。良い人もいれば嫌な人もいる、気の合う人もいれば合わない人もいる。ただそれだけです。

オンルウィンの中にもマークたちに好意を持ってくれる人が増えて、逆にマークもまた、炭鉱町に暮らす人たちへの理解を深めていきます。

炭鉱夫たちのストライキを見て、マークはきっとシンパシーを感じたのだろうなと思うのですが、ロンドンで暮らすマークが、炭鉱夫たちの生活や気持ちをリアルに想像したことはないはずです。想像する必要もありませんしね。

例えば、ここ日本で農家のストライキが起こり、東京の人が田舎のストライキに賛同してくれたとしても、農家の気持ちまでは分かりませんよね。当然です。

ですが、もし農家の人たちが自分たちの土地をどれだけ大切に思い、先祖代々から育てた土にどれだけ誇りを持っているかを知ったとき、東京生まれ東京育ちの心境に、また一段変化があるのではないかと思います。

マークたちが再びオンルウィンを訪れたとき、村の組合の書記をしているクリフという男性が、ウェールズの石炭は完璧なのだという話をします。彼は、自分たちの掘る石炭にも、自分たちの生き方にも誇りを持っていました。

このクリフの話を聞いて、マークの中でも更なる変化が生まれたのだと思います。住む場所も環境も生き方も違う炭鉱夫を遠い存在に感じていたでしょうが、そうじゃないと気づいたのです。炭鉱に生きることを誇りに思い、炭鉱を守ろうとするクリフも、ゲイであることに誇りを持って生きようとしているマークも、同じなんですよ。

マークは、これまで以上に支援することを、クリフだけでなく町のみんなの前で声高に叫びます。

そしたらですね、村の女性たちが『パンと薔薇』という歌を歌い始めるのです。

1人が歌い始めると、だんだんと、しまいには男性も一緒になって歌うのです。歌の意味は、人はパンのみに生きるにあらず。腹を満たすパンだけでなく、心を満たす薔薇も必要だ、という内容です。

薔薇の意味は、聞く人によって変わってくると思うのですが、私は聞きながら、誇りなくしては生きられないってことだな~と思いました。

誇りったって、そんな大きく構えたものじゃなくて、清掃員には清掃員の、販売員には販売員の、百姓には百姓の、それぞれの仕事や人生に対する、矜持というか、誇りというか、プライドというか、そんなものです。

この瞬間、マークの「敵の敵は味方」という単なる思いつきが、もっと深い相互理解への扉を開いたのだと思います。ていうか、マジ正解。

ちょっと話が逸れますが、この映画は1980年代にヒットした曲を多数使っていて、公開当時は音楽も話題になりました。私にも懐かしく感じられる曲が使われていましたけど、一番印象に残ったのは、この『パンと薔薇』だったのですね~。

で、話は戻って、オンルウィンのみんなに宣言した通り、マークはロンドンで大きなチャリティーコンサートを開きます。コンサートは大成功しました。

ただ、このコンサートの収益を届ける前に、オンルウィンではLGSMの支援を受け取らないことが決まってしまったのです。

長年続いた偏見を短期間で払拭するのは無理だった、ということです。

実は、LGSMからの支援が新聞にすっぱ抜かれたせいで、よその炭鉱関係者から横やりを入れられたのです。新聞にLGSMのことをリークしたのはオンルウィンの住人ですが、話はオンルウィンの住人とLGSMメンバーだけの話ではなくなっていたのです。ほんと、よけいなお世話です。

そして、炭鉱ストライキは敗北で終わります。これは史実です。脚本家が悪いわけじゃありません。

ストライキが終わり、また大きなゲイ・パレードが開催される季節がやってきました。ジョーがマークたちと出会って、ちょうど1年です。

1年前はゲイであることを隠していたジョーも、今では生き生きとパレードに参加しています。

ですが、パレードの主催者は政治色を持ち込んでほしくない、LGSMは列の最後尾に行けと言います。政治にはうんざりだそうです。

いやまあ、同感ですけど、そんな1年くらいで…って思ってましたら、主催者が飛んできて、「きみたちが先頭を行け!多すぎるんだよ!」と叫びます。

何事かと思えば、なんとオンルウィンの人たちだけでなく、あちこちの炭鉱町から大勢がパレードに駆けつけてくれたのです。彼らを乗せたバスの垂れ幕には「同性愛者支援・炭鉱夫の会」と書いてありました。

この垂れ幕を見たとき、ちょっと涙が出ちゃいましたよ。

ストライキは失敗に終わり、炭鉱の人々は厳しい現実に直面していたはずなのに、支援への感謝を示してくれたのですね。

この話に限っては、「敵の敵は味方」は正しい言葉でした。しかも、小さな思いつきが現実を大きく動かすという、ほろ苦いながら素晴らしい結末になったのです。

パレードの後に

大学へ行こう

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素晴らしい結末というのは、パレードの後にも続いていきます。

映画の最後にも触れられているのですが、その後、全国炭鉱労働組合が政治の場で、ゲイやレズビアンの権利を認めるよう働きかけをしたそうです。

これ、すごいですよね。都会の政治家からの「ゲイの人権を認めよ!」という上から発信ではなく、地方の、市井の人々の相互理解からの逆発信なのですよ。これが実話というのがすごい。

さらに良い話だな~と思うのは、オンルウィンの住人のシャンという女性が、LGSMと関わることで覚醒していく話です。シャンは実在の人物です。

シャンは夫から「おどおどするな」とアドバイスされるくらい自分に自信のない人でしたが、LGSMメンバーの助言を受けて、2人の子持ちながら大学へ行き直し、最終的には地方議会議員になったそうです。

細かいエピソードは映画用なのかもしれませんが、LGSMのメンバーであるジョナサンから、「きみは賢い」と言われたことが本当だったらいいなと思います。

ジョナサンの何気ない言葉がシャンという1人の女性を覚醒させたなんて、素敵な話ですよ。

ちなみに、映画の冒頭から出てくるジョーという青年は架空の人物です。でも彼がゲイである自分を受け入れていく過程は微笑ましくて、つらい現実を含む映画の中では、清涼感を感じさせてくれる人物となっております。

つらいといえば、終始ストーリーの中心にいたマークですが、最後のパレードから2年後にこの世を去ってしまったそうです。エイズでした。まだ26歳でした。

正直ラストは感動的でしたが、ストライキの結果やマークのことを思うとハッピーエンドとは言えません。

それでも、パレードで行進しているみんなの表情は晴れやかで、失ったものは大きいけれど、手にしたものも確かにあったと思えるのでした。

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映画情報

製作年/2014年
製作国/イギリス
監 督/マシュー・ウォーチャス
出 演/ベン・シュネッツァー/ジョージ・マッケイ

日本での公開は2015年です。

この映画は映画館で見まして、帰りに同い年の友人と待ち合わせてお茶をしたのですが、友人はパンフレットに載っていたバンド名に夢中になっておりました。

私が分かったのはワムとカルチャー・クラブとペット・ショップ・ボーイズくらいです。バナナラマも使われていたらしいですが、残念ながら気づかず。

かつてイギリスのバンドにハマったという方にはサントラだけでも楽しめる映画です。


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