今は亡きリヴァー・フェニックスと、若き日のキアヌ・リーブス出演の青春映画です。
かつて、この映画を見たという方と、感想を語り合えたら嬉しいです。
まだ見ていないけど興味があるという方も、よかったらお付き合いください。
この先の感想には、ネタバレ・あらすじが含まれます。お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m
『マイ・プライベート・アイダホ』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。
リヴァーとキアヌ、若き日の輝きよ
リヴァー・フェニックス21歳、キアヌ・リーブス27歳頃に公開された青春映画です。
青春というには、あまりに過酷な内容ですが。
私は、公開されてすぐに、映画館でこの映画を見ました。
覚えていることといえば、キアヌ・リーブスの美しさと、リヴァー・フェニックスがここまでの汚れ役をやるのかという驚きだけ。
30年経って見てみると、「え? こんなお洒落な作りの映画だった?」と思っちゃいました。
当時は、映画の作りより、俳優のインパクトが強かったということですね。
しかし今見ても、キアヌは相変わらず美しく、リヴァー・フェニックスは前に見た以上にインパクトがありました。
リヴァー演じるマイクは、父を知らず、母に捨てられ、兄はいますが疎遠で、一人街角に立って生きています。
当然、貧しいわけですが、子供の頃から、貧しくつらい生活だったのかなと思わせるシーンがあります。
仕事仲間から、シニード・オコナーのコンサートについて尋ねられたマイクは、「コンサートなんか」と答えます。
その答え方から、ミュージシャンの誰それが好きとか嫌いとかではなく、コンサートそのものが、マイクの人生には存在しなかったように感じられました。
まともな家族もなかった貧しいマイクには、コンサートなんて別世界の贅沢品だったのじゃないかな?
後で分かるのですが、マイクは、一歳で施設に預けられました。
それを教えてくれたのはマイクの兄です。
なんで一歳の子を施設に? と尋ねたマイクに、兄は、母とおまえを一緒にしておくと、おまえが危なかったんだと言います。
ひどいという言葉が優しく感じられるほど、ひどい母親です。
もっとひどい話をすると、マイクの父親は、この兄でした。マイクはその事実を知っていました。
マイクの過去を知れば知るほど、切なくなります。
マイクは“ナルコレプシー”という、突然、眠りに落ちてしまう病気を持っているのですが、これはストレスからくるものらしいです。
さもありなん。そんな病気があっても仕方ないほど、過酷な人生でした。
私でよかったら抱き締めてあげたい。いや、抱き締めさせてほしい。
でも、マイクの人生は、もっと過酷になっていくのです……。
汚れた現実、美しい心象風景
マイクや、マイクの属する世界をリアルに描くと、それはそれはドロドロしそうです。
いや、けっこうドロドロしてますけど、真っすぐに続く道や、雲や、マイクの心象風景を挟むことで、目を背けるまでには至りません。
マイクの心の風景は美しいです。川をさかのぼる魚だったり、草原の中の一軒家だったり。
想像の中の母も、笑顔で優しく、息子の髪を撫でたりします。
マイクの母親が本当に優しかったらよかった。貧しくても、最後にはマイクを捨てたとしても、せめて本当に優しかったらなぁと思わずにはいられません。
でも、母からではないですけど、マイクが優しくされる場面がありました。
優しくされるけど、とてつもなく切ないシーンです。
マイクのお兄さんの家に行く途中で、バイクが故障。マイクとスコットはたき火を焚いて、野宿をします。
そのとき、マイクは、キアヌ演じるスコットに、愛の告白をします。
スコットはマイクに友達以上の感情はありません。そのことをマイクにも伝えます。
マイクも分かったとは言いますが、おまえを愛しているとスコットに言い続けます。
不器用な愛の伝え方が、これまでのマイクの人生を物語っていると思います。人との繋がり方が分からないのですよ、マイクは。もう泣けてきます。
スコットは、根負けしたのか、マイクを抱き締めてくれます。何も考えずに一緒に寝ようと言います。
二人を照らすのは、たき火の明かりだけです。
美しいといえば美しいです。でも、二人の心情を思うと切ない。結局のところ、この二人が本当に交わることはないと分かっているから、ひたすらに切ない。
マイクの心象風景と違って、現実は、美しいだけでは終わらないものなのです。
「have a nice day」誰のセリフ?
たき火の夜から、兄の家へ、さらには海を越え、二人はローマへと向かいます。
マイクの母を探すための旅でしたが、母はみつからず、マイクにとって最悪なことに、スコットはローマで知り合った女性と恋に落ちてしまいました。
スコットは女性を連れてアメリカへ戻り、さらには、市長の息子という、彼の元の生活へと戻っていきます。
この辺りから、マイクの居眠り(ナルコレプシー)が頻発し、わけもなく笑いだすマイクを見ていると、破綻に向かっている気がしました。
スコットと完全に決別したマイクは、アイダホに向かいます。
そしてまた、道の途中で倒れてしまいました。寝ているだけなのですが、道の上なので轢かれそうで怖い。
とりあえず轢かれはしなかったのですが、通り掛かった車の男たちに、鞄も靴も盗まれてしまいました。
それでもマイクは起きません。
次に通り掛かった車は、マイクを抱き起こして、車に乗せてくれました。しかし、遠目すぎて、マイクを助けてくれた人が誰なのか……。
マイクを乗せた車は、真っすぐに続く道を、走り去っていきます。
そして「have a nice day」の文字が表れます。
マイクを助けてくれた人が、スコットだったらいいと思います。
「よい一日を」と言ってくれたのがスコットだったらなと思います。
絶望的にあり得ないですけど。
スコットがマイクの元に戻ってくることはないでしょう。
居眠り中のマイクを車に乗せて、笑顔で「よい一日を」なんて言ってくれることは、悲しいかな絶対にない。
よい一日を……誰が誰に言っているのでしょうね?
道かな?
道がそう言っているようだと、マイクが言っていたことがありました。
でも、それだと寂しすぎます。
せめてマイクが、たとえ皮肉を込めてでも、そう言ってくれていたならいいのですけどね。
映画情報
製作国/アメリカ
監 督/ガス・ヴァン・サント
出 演/リヴァー・フェニックス/キアヌ・リーブス
日本での初公開年も1991年です。
最後、マイクを拾ってくれたのは、マイクのお兄さんですよね?
マイクとスコットがお兄さんの家に行ったとき、トレーラーハウスの前に、赤っぽいクルマの一部がちょっとだけ映っていました。
同じ車だと思うのですが、どうなのでしょうね?
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