映画『マイ・プライベート・アイダホ』ネタバレ感想 リヴァーとキアヌ、若き日の輝きよ

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今は亡きリヴァー・フェニックスと、若き日のキアヌ・リーブス出演の青春映画です。

かつて、この映画を見たという方と、感想を語り合えたら嬉しいです。

まだ見ていないけど興味があるという方も、よかったらお付き合いください。

この先の感想には、ネタバレ・あらすじが含まれます。お嫌な方は、ここまででお願い致しますm(._.)m

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『マイ・プライベート・アイダホ』ネタバレ感想

記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために、簡単なあらすじを。

マイクとスコットはポートランドの街角に立つ男娼である。二人は親友である。しかし生い立ちは真逆で、マイクは親に捨てられた子供、スコットはポートランド市長の息子だった。マイクはスコットに友達以上の感情を持つが、本来ゲイではないスコットは、マイクの母を探す旅の途中で、出会った女性と恋に落ちてしまう。そしてスコットは上流階級の生活へと戻っていき、マイクは一人アイダホに向かう。

リヴァーとキアヌ、若き日の輝きよ

リヴァー・フェニックス21歳、キアヌ・リーブス27歳頃に公開された青春映画です。

青春というには、あまりに過酷な内容ですが。

私は、公開されてすぐに、映画館でこの映画を見ました。

覚えていることといえば、キアヌ・リーブスの美しさと、リヴァー・フェニックスがここまでの汚れ役をやるのかという驚きだけ。

30年経って見てみると、「え? こんなお洒落な作りの映画だった?」と思っちゃいました。

当時は、映画の作りより、俳優のインパクトが強かったということですね。

しかし今見ても、キアヌは相変わらず美しく、リヴァー・フェニックスは前に見た以上にインパクトがありました。

リヴァー演じるマイクは、父を知らず、母に捨てられ、兄はいますが疎遠で、一人街角に立って生きています。

当然、貧しいわけですが、子供の頃から、貧しくつらい生活だったのかなと思わせるシーンがあります。

仕事仲間から、シニード・オコナーのコンサートについて尋ねられたマイクは、「コンサートなんか」と答えます。

その答え方から、ミュージシャンの誰それが好きとか嫌いとかではなく、コンサートそのものが、マイクの人生には存在しなかったように感じられました。

まともな家族もなかった貧しいマイクには、コンサートなんて別世界の贅沢品だったのじゃないかな?

後で分かるのですが、マイクは、一歳で施設に預けられました。

それを教えてくれたのはマイクの兄です。

なんで一歳の子を施設に? と尋ねたマイクに、兄は、母とおまえを一緒にしておくと、おまえが危なかったんだと言います。

ひどいという言葉が優しく感じられるほど、ひどい母親です。

もっとひどい話をすると、マイクの父親は、この兄でした。マイクはその事実を知っていました。

マイクの過去を知れば知るほど、切なくなります。

マイクは“ナルコレプシー”という、突然、眠りに落ちてしまう病気を持っているのですが、これはストレスからくるものらしいです。

さもありなん。そんな病気があっても仕方ないほど、過酷な人生でした。

私でよかったら抱き締めてあげたい。いや、抱き締めさせてほしい。

でも、マイクの人生は、もっと過酷になっていくのです……。

汚れた現実、美しい心象風景

私の耳は貝の殻

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マイクや、マイクの属する世界をリアルに描くと、それはそれはドロドロしそうです。

いや、けっこうドロドロしてますけど、真っすぐに続く道や、雲や、マイクの心象風景を挟むことで、目を背けるまでには至りません。

マイクの心の風景は美しいです。川をさかのぼる魚だったり、草原の中の一軒家だったり。

想像の中の母も、笑顔で優しく、息子の髪を撫でたりします。

マイクの母親が本当に優しかったらよかった。貧しくても、最後にはマイクを捨てたとしても、せめて本当に優しかったらなぁと思わずにはいられません。

でも、母からではないですけど、マイクが優しくされる場面がありました。

優しくされるけど、とてつもなく切ないシーンです。

マイクのお兄さんの家に行く途中で、バイクが故障。マイクとスコットはたき火を焚いて、野宿をします。

そのとき、マイクは、キアヌ演じるスコットに、愛の告白をします。

スコットはマイクに友達以上の感情はありません。そのことをマイクにも伝えます。

マイクも分かったとは言いますが、おまえを愛しているとスコットに言い続けます。

不器用な愛の伝え方が、これまでのマイクの人生を物語っていると思います。人との繋がり方が分からないのですよ、マイクは。もう泣けてきます。

スコットは、根負けしたのか、マイクを抱き締めてくれます。何も考えずに一緒に寝ようと言います。

二人を照らすのは、たき火の明かりだけです。

美しいといえば美しいです。でも、二人の心情を思うと切ない。結局のところ、この二人が本当に交わることはないと分かっているから、ひたすらに切ない。

マイクの心象風景と違って、現実は、美しいだけでは終わらないものなのです。

「have a nice day」誰のセリフ?

たき火の夜から、兄の家へ、さらには海を越え、二人はローマへと向かいます。

マイクの母を探すための旅でしたが、母はみつからず、マイクにとって最悪なことに、スコットはローマで知り合った女性と恋に落ちてしまいました。

スコットは女性を連れてアメリカへ戻り、さらには、市長の息子という、彼の元の生活へと戻っていきます。

この辺りから、マイクの居眠り(ナルコレプシー)が頻発し、わけもなく笑いだすマイクを見ていると、破綻に向かっている気がしました。

スコットと完全に決別したマイクは、アイダホに向かいます。

そしてまた、道の途中で倒れてしまいました。寝ているだけなのですが、道の上なので轢かれそうで怖い。

とりあえず轢かれはしなかったのですが、通り掛かった車の男たちに、鞄も靴も盗まれてしまいました。

それでもマイクは起きません。

次に通り掛かった車は、マイクを抱き起こして、車に乗せてくれました。しかし、遠目すぎて、マイクを助けてくれた人が誰なのか……。

マイクを乗せた車は、真っすぐに続く道を、走り去っていきます。

そして「have a nice day」の文字が表れます。

マイクを助けてくれた人が、スコットだったらいいと思います。

「よい一日を」と言ってくれたのがスコットだったらなと思います。

絶望的にあり得ないですけど。

スコットがマイクの元に戻ってくることはないでしょう。

居眠り中のマイクを車に乗せて、笑顔で「よい一日を」なんて言ってくれることは、悲しいかな絶対にない。

よい一日を……誰が誰に言っているのでしょうね?

道かな?

道がそう言っているようだと、マイクが言っていたことがありました。

でも、それだと寂しすぎます。

せめてマイクが、たとえ皮肉を込めてでも、そう言ってくれていたならいいのですけどね。

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映画情報

製作年/1991年
製作国/アメリカ
監 督/ガス・ヴァン・サント
出 演/リヴァー・フェニックス/キアヌ・リーブス

日本での初公開年も1991年です。

最後、マイクを拾ってくれたのは、マイクのお兄さんですよね?

マイクとスコットがお兄さんの家に行ったとき、トレーラーハウスの前に、赤っぽいクルマの一部がちょっとだけ映っていました。

同じ車だと思うのですが、どうなのでしょうね?

 

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