笑えるSF&オタク映画です。
宇宙人のポールは完全にオッサンなのですが、可愛いです。
この可愛さ、なんか見覚えがあるぞと思ったら、アナ雪のアナでした。
つぶらな瞳が似ているのか、あざと可愛い顔を作るのが上手いのか……。
というわけで、映画『宇宙人ポール』の感想を語ってみたいと思います。
ただしネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願い致しますm(_._)m
『宇宙人ポール』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
ポールとはアナ雪のアナより可愛いオッサン宇宙人である
ベッタベタな設定の映画です。
宇宙人のポールは「宇宙人ってどんな姿?」と質問されたら、質問された人すべてが一度は思い浮かべる姿をしています。
いわゆる「グレイ」という、灰色で小学生くらいの大きさで、体の割に大きな頭とでっかい目をした宇宙人です。
ポールの出身地はアンドロメダ銀河、北のM型小惑星。聞いたことあるような、ないような。知らんけど。
そして彼は60年間、たぶん“エリア51”に幽閉されていたのです。
なんというベタ。なんというお約束。
でも、それがこの映画の面白さを引き立てているのですよ。ベタな背景に引き立てられるのは、オッサン宇宙人のポールです。
アメリカにいて60年、すっかり地球のオッサンと化したポール。
なんというか、ポールはいい人なのです。ほんと、見た目以外は、その辺にいる気のいいオッチャンです。
嫌味を言ったり、口が悪かったりもしますが、深刻になりすぎず、楽しいことが好きで楽天的で、親近感しかわきません。
個人的には、クライヴに「ゲイか?」と訊ねるところが大好きです。
作家のクライヴとイラストレーターのグレアムは仲が良すぎて、よくゲイカップルに間違われるのですが、ポールも2人がそういう関係だと勘違いします。
でも、最初から直球で「ゲイか?」とは訊けなくて、仕種で訊ねるのですよ。
その仕種に大爆笑だった私です。
なぜ仕種で訊ねるのかって、「ゲイ」という言葉を出すのが気まずいからですが、“気まずい”という感覚がもう、地球人化していますよね。
表情も実に豊かです。ちょっと斜め下からの上目遣いとか、あざと可愛いったらありゃしない。
この表情が、なんか見覚えあるな~と感じた表情で、アナ雪のアナだと思ったのですが、ディズニーのプリンセス的表情ってことなのかもしれませんね。
で、このプリンセス的可愛さを持ったポールは、根っから気がいい奴なんです。
幽閉されていた基地から逃げ出してきて、グレアムたちに遭遇し、2人と一緒に逃避行となったのですが、逃げ出してきた理由は、体を切り刻まれそうになったからでした。
彼が地球人に与えられる情報はすべて与えたとみると、彼を閉じ込めていた人間たちは、最後に彼の体の秘密をあばくべく、解剖しようとしたのですね。
ひどい話ですし、こんなの怒って当然なのですが、この仕打ちに対して、ポールは怒るというより悲しそうに見えました。
仲良くやっていたのに、そりゃないぜ……って感じですかね。
でもポールは仕返しなんて考えず、ただ自分の星に帰ろうとしただけなのです。
もちろん正攻法でいくと帰してくれるわけがありませんから、脱走という手段に出たわけですが。
そんなポールに幸運だったことは、クライヴとグレアムという、心優しきSFオタクたちに助けられたことです。
おかげでポールは逃避行の間ものびのび過ごしていましたよ。
のびのびできた上、ポールを迎えにきたUFOとも、無事合流できました。
でもですね、もしうまくいかなかったとしても、ポールという人は「仕方ないさ」と言いながら、あざと可愛い顔で、残念そうに笑うような気がします。
勝手な想像ですけどね。それだけ、いい奴じゃんと思える宇宙人なのです。
ラストは実にポールらしく、冗談を連発しながら帰っていくのですが、彼がいなくなることが本当に寂しかったなあ。
宇宙人に人柄というのもおかしいかもしれませんが、この映画はポールの人柄に支えられた映画なのです。
オタクの夢を描いた映画だな~
この映画を作った人達も絶対にオタクだと思います。
SFとかコミックとか好きなのでしょうね。
私は、オタクの方々から見たらまったくの門外漢ですけど、中学生の頃に、ほんの一時期ですが、雑誌『ムー』を買っていたときがございます。
後年、仕事仲間に、ぽろっと「ムーを読んでてさ~」と言ったら、「ヒイッ!」って感じで怖がられましたので、これって黒歴史らしいです。
で、詳しいことは分からないながら、主人公の2人が巡る“UFOスポット”の地名は、ちょっと聞いたことがあったりします。
きっとSFやUFO好きな人からしたら、わくわくする旅順なのだろうなと分かるわけです。
さらに、SFやUFO好きなら理解できるギャグが散りばめられているのです。私にはその雰囲気くらいしか分からず、ちょっと残念。
でも、特にマニアじゃなくても、スピルバーグ監督の『E.T.』ネタは分かるし、クスッときます。
ポールがスピルバーグ氏に通話で映画のネタを提供するのですが、この通話相手、本物のスピルバーグ氏だそうです。すごっ。
地味に『エイリアン』ネタもあって、この辺もSF詳しくなくても楽しめます。
また、映画内で使われている曲がけっこう凝っている気がします。なんだか、初老にも響く感じなのですよ。
私は音楽も詳しくないですけど、夜空をバックに進むキャンピングカーと、それにかぶさるトッド・ラングレンの『Hello It’s Me』は思わず聞きほれてしまいました。
いいですね~、真夜中(でもなかったけど)の『Hello It’s Me』。
もちろんオタクのネタばかりでなく、純粋に若者の成長物語にもなっていて、オタク映画ではありますが爽やかな終わり方です。
クライブは売れない作家で、クライヴの本のイラストを描いているグレアムも、ご同様のイラストレーター。
ですがグレアムはあまり気にしていないようで、クライヴは、グレアムのそんな性格まで羨んでいるように見えます。
なんでか、クライヴはいろいろと、グレアムに劣等感を持っているようです。友達のことが好きすぎるのかな?
そんなクライヴに、ポールはお気楽な感じで助言してくれるのですよ。
いいですね~、イケオジでもありますね~、ポールは。
そして、万難を排してポールをUFOまで送り届けた後、クライヴはポールとの出来事を小説にします。イラストはもちろんグレアムです。
そして2人は人気作家と人気イラストレーターとなるのです。
映画の冒頭、2人に塩対応をしていたSF作家も、ラストでは2人に拍手を送っています。他のスタッフには相変わらずの態度でしたけど。
ポールも、2人のオタクも、最後は抱きしめたくなるほど、可愛い映画なのでした。
映画情報
製作国/イギリス・アメリカ
監 督/グレッグ・モットーラ
出 演/サイモン・ペッグ/ニック・フロスト
日本での公開も2011年です。
この映画の脚本はグレアム役のサイモン・ペッグ氏と、クライヴ役のニック・フロスト氏が書いています。
ゾンビ映画の『ショーン・オブ・ザ・デッド』の脚本にも、ペッグ氏の名前が連なっていて、「うん、わかる!」って感じです。どちらも同じ匂いのする映画です。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』の結末も好きなのですよ。ゾンビ映画なのに、ほのぼのします。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』でもペッグ氏とフロスト氏は親友役です。この2人、リアルでも親友だそうです。
ペッグ氏もフロスト氏も、人生を楽しんでいるようで、最大級に羨ましいです。
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