ポップでかわいい、不思議な感覚の恋愛映画です。
隣り合わせた見ず知らずの男女が、ただすれ違ったり、恋に落ちたりするよね、というお話。
そんな男女の中にトニー・レオンという役者さんがいるのですが、香港を代表する俳優の一人です。
この人、かっこいいです。色気があります。
そんな素敵な人がだめんず役で、しかも、だめんず役がうまい。
というわけで、映画『恋する惑星』の感想を語ってみたいと思います。
「あの頃の香港映画は良かったよね!」という方も、「トニー・レオンがだめんず~?」という方も、よろしかったらお付き合いください。
ただしネタバレ・あらすじを含みます。
お嫌な方はここまででお願いいたしますm(_._)m
映画『恋する惑星』ネタバレ感想
記憶がおぼろになっている方&見ていない方のために簡単なあらすじを。
トニー・レオンのだめんずっぷりが堪らない一品です
トニー・レオン演じる警官663号は、恋人のため、ミッドナイト・エクスプレスで夜食を買っていきます。
ミッドナイト・エクスプレスとは、惣菜やら飲み物やらを売っているお店です。
フェイは店主のいとこで、お金を貯めるため、ミッドナイト・エクスプレスで働き出したようです。
で、夜な夜なやってくる、663号に恋をしたと。
663号、唇の端を少しつりあげた表情とか、何気ない表情に雰囲気があります。
フェイが一目惚れするのも分かります。
ただ、一目惚れしたそのときには、663号にはすでに恋人がいたという切なさ。
しかも663号のほうが惚れて、口説き落とした恋人です。勝てる気がしません。
だがしかし! 速攻で663号はふられてしまいます!
やった! チャンス! と思うも、彼は去っていった恋人に未練たらたらでした。
その様子が、だめんずにも程があるのですよ。
663号の元カノが、ミッドナイト・エクスプレスの店主に、663号へ渡してくれと手紙をことづけます。
その手紙をフェイが663号に渡そうとするのですが、彼はそれを受け取ろうとしません。
怖くて読めないのですね。
さらに家では一人、しずくの垂れるタオルに「泣くなよ」と話しかけ、薄っぺらくなった固形石鹸に「痩せたな、自分に自信を持てよ」と語りかけます。
彼女の残していった制服やぬいぐるみとも、もちろん、会話します。
いやまあ、一人のときなんて何をしていてもいいのですけどね。とても人には見せられない姿です。
腑抜けと化した663号は、すぐそばにいて、自分を好きでいてくれるフェイにまったく気付きません。
それどころか、ひょんなことから663号のアパートの鍵を手に入れたフェイが、彼のいない間に部屋に入り込んで、模様替えをしていることにさえ気付かない腑抜けっぷりです。
ある日、フェイと自分の部屋で鉢合わせしてしまい、そこでようやく、フェイの気持ちに気付くのですよ。
どうです。ダメダメでしょ?
でも、憎めない。というか、きゅんです(笑)
なぜ、こんなにだめだめな663号がいいのだろうかと思うのですが、たぶん彼の無防備ぶりが、だめんず好きのハートを鷲掴みにしてくるのではないかと思われます。
だめだめを見せつけるわけでなく、隠すわけでもなく、自然な663号の表情やたたずまいが良きなのです。
フェイの気持ちに気付いて、彼女を誘い出すときもよかった。がつがつしてなくて、すごくセクシーなのです。
しかし、フェイは663号をふってしまう。
ふったというより、彼が好きだけど、フェイには時間が必要だったということでしょう。
でも当然、663号はふられたと思いますよね。そう思った663号の背中には哀愁が漂っていました。
これまた、無防備・無造作な後ろ姿で、きゅんなのです。
結局、一年後にフェイは帰って来て663号と再会します。2人がどうなるのか分からない形で終わるのですが、このときばかりは663号の表情に気持ちが見えます。
なんというか、「もう逃がさないぞ」って感じです。
これまでがダメダメだっただけに、この表情にはきゅんどころではありません。
だめんずによる切なさだけではなく、実は肉食系男子のフェロモンも存分に感じさせてくれるトニー・レオン。
この映画は彼のための映画と言っても過言ではない、と勝手に思ったのでした。
不思議ちゃんたちのポップな恋
ポップな恋ってなんだ? という感じですが。
軽いと言っては身も蓋もないですが、でも、簡単に恋に落ちて、その感情へ簡単に身をゆだねることができる、若さの特権を見せてくれるのですね。
若さの特権とは、不思議ちゃんでいても、そんなにおかしくないという特典も含まれます。
いや、嫌みじゃないです。僻んでないです(汗)
この映画を、愛情を持って見ていた時代が私にもありました。
例えば、663号に恋するフェイはかなりの不思議ちゃんです。
だいだい、好きな人ができて、その人の部屋の鍵を手に入れたからって、勝手に部屋に入ったりします?
入るだけなら、ありでしょうか? 部屋の中をちょっと見るくらいならギリセーフ?
しかし、勝手に模様替えはない。それは怖すぎです。
そんな大胆なことができるなら、さっさとコクれや、と、思った初老です。
普段のフェイときたら、友達って感じで663号に接するのですよ。いやいや、あなた、なにがしたいの?
若い頃は、こんなフェイが可愛く見えたのになぁ。
でもまあ、フェイの気持ちに気付いたときの663号が、「あ、こんなところに女の子がいた」という感じで誘ってきたのがツボだったので、よしとします。
フェイ以上の不思議ちゃんは、フェイが663号に恋する6時間前に出会った刑事のモウです。
こちらも彼女にふられたのですが、モウの場合は5年も付き合った彼女だったので、傷が深いのも頷けます。
ふられた後も、モウは何度も伝言サービスに連絡して、元カノからのメッセージがないか確認するのですが、伝言サービスのパスワードが「一万年愛す」です。
若いですね~。
そして、なぜかパインの缶詰を買い続けます。
パインは元カノが好きだったものです。
モウの誕生日が5月1日。ふられた4月1日から毎日、誕生日が期限のパイン缶を買い続け、その間に彼女が戻ってこなければ諦めるそうです。
意味不明ですが、なにかのゲン担ぎでしょうか?
しかし予想通りといいますか、彼女は戻ってこず、誕生日の夜、ヤケになって、得体のしれない女に声をかけてしまいます。
刑事として、もっとも行っちゃだめなタイプの女性にです。
そして一晩を一つの部屋で過ごすわけですが、結果として、ハッピーエンドにもバッドエンドにもならなかった。
ただ、最後の最後に、彼女からモウにメッセージが届き、モウはそれに救われた、のかな?
若さっていいなあ……。
結局、初老の私からすると、それにつきる映画でした。
映像も音楽も美しく、見事に軽いままで見終わらせてくれた監督の手腕に拍手です。
映画情報
製作国/香港
監 督/ウォン・カーウァイ
出 演/トニー・レオン/フェイ・ウォン/金城武
日本での公開は1995年です。
この映画でトニー・レオンをお気に召した方、他の映画に出ている彼はいかがでしたか?
私は『恋する惑星』のあと、彼の出ている映画を何本か見たのですが、まったくときめきませんでした……。
さらに言うなら、『恋する惑星』の前にも、彼の出ている映画を見ていたはずなのに、印象がまったく残っていません。
……『恋する惑星』が特別にすごいのだ! と思うことにします(汗)
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