別のゾンビ映画を見ようとして、つい見てしまった『アイアムアヒーロー』。
漫画が原作なのは知っていますが、読んだことはありません。
原作も知らず、動きの早いゾンビがあまり好きでもないのに、この映画は楽しめました！
ホラー映画なので、楽しめた＝十分に怖かった、ですね。
ゾンビももちろん怖かったのですが、一番怖かったのは、生きた人間たちのコミュニティでした。
ゾンビも幽霊も怖いですが、本当に恐ろしいのは生きた人間だと、いつも思います。
ゾンビ映画を久しく見ていないという初老諸姉、邦画のゾンビは、洋画のゾンビとは一味違います。
ぜひ、ご一緒に、国産ゾンビ映画を堪能いたしましょう。
ただし、ネタバレを含みます。お嫌な方はここまででお願いします。
『アイアムアヒーロー』あらすじ
鈴木英雄（すずきひでお）、35歳。漫画家。
漫画家とはいえ、現在はアシスタントをしながら、出版社へ原稿の持ち込みを続けている。
編集者からは軽く扱われ、恋人からは我慢の限界と追い出される。
何もかもうまくいかない日々の中、謎の感染症が蔓延し始め、人々はゾンビ化していく。
ゾンビとなった人々はZQN（ゾキュン）と呼ばれ、生きている人間を襲い、食らう。
ネットの情報で、標高の高い場所では感染しない、富士山だとウィルスは死ぬなどとあり、英雄と、逃げる途中で知り合った比呂美という女子高生は富士山を目指す。
しかし、比呂美はすでにZQNに噛まれ、感染していた。
ZQNとなったが人を襲わない比呂美を連れ、英雄は御殿場のアウトレットに到着。
アウトレットでは生き残った人々がコミュニティを作り、協力して生活していた。
しかし、平和に見えたコミュニティも、ゆっくりと内部崩壊が進んでいたのだった。
『アイアムアヒーロー』ネタバレ感想
本当に恐ろしいのはゾンビ？ それとも人間？
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謎の感染症に侵された人たちは生きる屍（しかばね）となり、ZQN（ゾキュン）と呼ばれるようになります。
ZQNは死んでいるというのにアクティブです。
アクティブな上にアクロバティック。
逃げている人間に、真正面から飛び掛かっていきます。迫力あります。プロレス技みたいです。
ゆっくりしゃべり始めるところから、ZQNに変貌していく様も怖いです。
さっきまで普通の人間だったのが、心身ともに化け物になっていく様子を見るのは本当に恐怖ですよね。ゾンビ映画の醍醐味（だいごみ）でもあります。
でも、夜、布団に入って映画の内容を思い出した時、背筋が寒くなったのは、ZQNではなく、生きた人間たちに対してでした。
御殿場のコミュニティはアウトレットの屋上にあり、ZQNたちは手が出せません。
英雄と比呂美はそのコミュニティに受け入れられるのですが、目的は英雄の持っているクレー射撃用の散弾銃でした。
コミュニティの男たちが、じわりじわりと、言葉と視線で英雄を追い詰めていくところ、比呂美を「人質」と言うところ。
男たちの言葉の影に、女を見下していることがちらちらしているところ。
コミュニティのリーダーを撃てず、銃を取り上げられた英雄を、テントの中で男たちがリンチするところ。
背筋がちりちりするような感覚でした。
コミュニティの中に藪と呼ばれる女性がいるのですが、彼女が英雄に、ZQNのほうが幸せかもしれないと言います。
ZQNは過去の思い出の中に生きていて、もう苦しむこともない。
そういう意味だったと思います。
その時、英雄はまだコミュニティの内情を知りませんでしたが、藪は当然知っていたわけです。
後になればなるほど、この言葉は重く心に沈んでいくような気がします。
そういえば、この「藪」さん。藪という名前は彼女のあだ名です。
英雄も、映画を見ている私も、普通に彼女の名字だと思っていました。
でも、そのあだ名には悪意があり、それがあだ名だと分かると、明るくあだ名を口にする人たちが、ZQNより不気味に思えてくるのです。
英雄はヒーローになったのか？
はい。なりました。究極のネタバレ？（汗）
まあ、私的には、そう思えました。英雄、最後は本当にかっこ良かったですよ。
今回、邦画のゾンビ映画を見たおかげで、今まで見ていたゾンビ映画は、すべて洋画だったのだなと気付かされました。
洋画のゾンビ物を見ていて、ゾンビが銃で撃たれることに疑問を感じたこと、あります？
ないですよね。ゾンビですもんね。
でも、英雄は、散弾銃を持っているのに、ゾンビが町に溢れているというのに、撃てなかったのです。
その葛藤が理解できないわけじゃないですが、「この非常時に！ ヘタレ！」と思う気持ちのほうが強かったです。
コミュニティのリーダー伊浦が、比呂美にクロスボウを向けたときも撃てませんでした。
そんな英雄が、最後の最後に、撃って撃って撃ちまくります。
アウトレット内の通路で、ZQNに前後から挟まれ、最後には英雄一人で、比呂美と藪を守るのです。
比呂美は戦力にならないし、藪も疲弊しきって、ZQNはどんどんやってきて、
「ええ？ この映画、どうやって終わりにするの？」
と思って、予想としては、くら～い結末しか浮かんできませんでした。
でも、覚悟を決めた顔の英雄が、とにかく撃つ。こつこつ撃つ。もうね、泣きそうになりました。
ゾンビ映画で温かい気持ちになるとは予想外でした。
最後、生き残ることができた英雄と比呂美と藪は、伊浦の車でアウトレットを脱出します。
原作はさらに続くのでしょうが、映画はここで終ります。
私的には、いい映画だったと思います。
ゾンビ映画も、邦画には邦画の良さがあるのだなぁと分かったことが、大きな収穫でした。
映画情報
製作国／日本
監 督／佐藤信介
出 演／大泉洋・有村架純・長澤まさみ
原作は花沢健吾さん。漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』で2009年から2017年まで連載されました。
すいぶん長い連載期間だったんですね。映画の続編は出ないのかな？
次回は、私の好きな、スローモーなゾンビを紹介します。そちらもよろしくお願いします。
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